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約束の講習会編
超短編。
北州騎士団本部の、敷地の隅っこ。何もないはずの場所でわいわいと騒いでいる若い騎士たちを見かけ、通りがかりのウォルンフォラドが足を止めた。
「楽しそうだな、何してるんだ」
呼びかけに振り向いた彼らが一斉に敬礼する。その中央で、なぜか塀に向けて片足を上げていたクウナも振り向く。
「ええとー」
とぼけた笑顔で歯切れ悪い返答。ウォルンフォラドの頭に嫌な予感がよぎる。
「……おい、クー?」
「塀登りの講習会?」
首を傾げて答える少女の、目の前にそびえ立つ頑健な石壁――もちろん登るようにはできていない――を見上げ、
「……やめなさい」
ウォルンフォラドは額を押さえた。




