プロローグ アンダーザレインボウ
どうして少女漫画の主人公はあんなにスムーズに告白とかできるんだろう。
どうしてあんなにキラキラしてて可愛いんだろう。
今の私、端から見れば絶対無様だ。
眉間にしわは寄ってるし、笑おうと頑張っても口元が引きつるばかりだ。
手が汗ばんでて気持ち悪い。
のどはカラカラ。痰が絡むとか、オッサンかよ。
うわーん、ダメだぁー。涙出てきたー。
しかもヤバいぃー。
涙こらえてたら鼻水も出てきた。
でも。
これだけは言わなきゃ。
唯間風香、頑張れ!
ヒロインになれない平凡で無様な私には、待っていたって王子様は現れない。
自分から動かなければ、幸せはやってこない。
幸いにもボロボロな私とは裏腹にシチュエーションは完璧だった。
雨上がりの屋上。
雲間から夕陽が私と彼をオレンジに染める。
水たまりが光を受けて乱反射。
まっすぐ。
例え、涙目になって変な顔になってても。
まっすぐ彼を見て言うんだ。
さわやかな風が一陣、彼の前髪を揺らした。
「…………あ」
むせた。
「え、あの……大丈夫?」
………………ぬぅぁぁぁぁぁぁ――――っ!!!
失敗できないところだというのに!
ごほごほと咳き込んで、前のめりにうつむく私に彼が心配そうに近づこうとする。
み、水が欲しい。だ、誰かぁ……水を……。
しかし、この場にいるのは私と彼だけだ。
頑張れ、私。
0に近い根性を、絞り出して使え、私!
気を取り直してもう一度。
彼を見つめる。
彼は困惑した顔をしていた。
「矢代京一くん! ……あの、私……」
私は今日、告白した。
空には虹がかかっていた。