大切なもの×3
私にとって大切なものは2つある
「いくよ。灯呂」
一つは仲間
「うん!」
もう一つは私の大切な大切な人
「インド洋には何があるかな」
不器用だけど
「何にもないんじゃない」
優しくて、あったかい
「そっか!」
私の目印
***
海賊「ウンターガンク」はただの集まりではない。
かといって、悲しい過去があったとかうれしい過去があったとかでもない。
ただそこに「海賊」というレッテルが貼られた集まりだ。
世界を敵にまわしても自由を求める集団。
それが「ウンターガンク」という海賊だ。
「あとは、燃料ね」
「そうだね!」
町に2人の正反対の少女たちが舞い降りる。
「重くない?持とうか?大丈夫?」
「心配し過ぎ、もしものときはいったん船に戻るから」
「そうだよね!」
ショートヘアの幼さの残る少女とポニーテールの明るい少女。
___大好きだよ。紗良!本当に大好き。
その二人はどこまでも絡み合い、もつれ合い。
___すき、だぶんすき。灯呂のことが。
一生ほどけあうことがないように
___本当に大好きなんだよ!離したくないし、ずっとそばにいる。
重い荷物を運びながら
___どこにもいかないで。ずっと、ずっと私にそばにいて。
「あと燃料だけ?」
「そう。いったん戻る?」
「ううん!僕は別にいいけど紗良がいうなら戻るよ!」
「じゃあ、そのまま行こうか」
「うん!」
この世界のランクをすべて覆したいと思った。
『何をお探しですか』
鋭い機械音の中で
「薪と灯油だっけ」
「そうだよ!たぶん」
「出来る限り出して、お金は払うよ」
『わかりました』
鋭い機械音が2人を刺し続ける中で
『お届けしましょうか』
「いいわ、大丈夫」
『わかりました』
「やっぱり紗良すごい!」
2人が願う。
『少々お時間がかかります。予約を取りますか?』
「そうしてください!」
『わかりました。カードをお取りください』
ランクなど無くなってしまえと。
「これは何?」
「準備で来たら呼んでくれるみたいな装置じゃない?」
「そっか」
知ったうえで2人はもつれ合う、絡み合う。
「そうだ、ここらへんに教会があるんだよ!」
「いってみたいと?」
「うん!」
「いいよ、いってみよ」
___大好き、友情関係でも、恋愛関係でも、例え紗良が悪者でも。
出来るだけ複雑に、出来るだけ単純に。
___すき。ぜんぶすき。だから、ずっといっしょだよね。
「着いたあ!」
「案外大きいのね」
「中入ろう!すごいよ!」
綺麗なステンドガラスがきらめく中で
「紗良、好きだよ」
優しい光が包み込む中で
「私もだよ、灯呂」
灯呂が紗良の前でひざまずき紗良の片手を取る、そして優しく自然な動きで手の甲に口づけをする。
「ずっといっしょだよね」
灯呂と紗良は笑いあいながら
「うん、ずっと一緒だよ!」
約束をする。
赤い糸だか、黒い糸だかはわからない。
でも、2人にとってはどうでもよかった。
つながっていたいから
「「ずっといっしょ」」
誰もいない教会に小さな笑い声と機械音が鳴り響いた。