大切なもの×2
求めろ。
「舵を切れ!」
求めろ、求めろ求めろ求めろ。
「元気だねえ」
自由を。
「早く船長も起きてください」
誇りを。
「あはは、寝癖ついてる」
笑顔を。
ランクはいらないんだ。
きっと
そうすればみんな仲良く
家族になれるから。
***
海賊「ウンターガンク」はただの集まりではない。
かといって、悲しい過去があったとか、うれしい過去があったわけでもない。
ただそこに「海賊」というレッテルが貼られた集まりだ。
世界を敵にまわしても自由を求める集団。
それが「ウンターガンク」という海賊だ。
「今日中に船って動かせる?」
「いや、今日中は無理だな。燃料がねえし、なによりロクな食いもんねえから俺らが餓死するぞ」
「そうか」
「できても明後日。明日燃料とか準備物揃えれたらだがな」
「わかった。準備物は紗良と灯呂にでも用意させる」
___どうしようか。軍が攻めてくることも考えておかなければ。
「一応戦闘準備はしておいてくれ、来るかもしれない」
「なにが」
「血の雨を降らす雲が、来るかもしれないからな」
「わかった」
さっきまでのことを船を動かす仕事をしているスウィンドラーに相談してみたがいい結果ではなかったため、リヴは頭を悩ませる。
スウィンドラーは2メートルもある大男であり顎髭やガタイのいい体格など、少し怖い印象を与えるが特にそんなこともなくクルーからは「スウィ」というあだ名で通っている。
___一刻も早くここを出たい。が、準備物がなければ私たちの命が危ないな。
そう考えながら屋上に行きカンカンと集合の合図を出す。
音は気持ちよくスルリと壁をつたり各クルーの耳へと届く。
集合は____屋上。
「きたよー!」
「きてあげた」
いち早く到着したのは紗良と灯呂だった。
「はやかったな」
「穴掘ったからね」
「変な改造しないでくれ」
リヴは苦笑いをこぼす。
「おや、先客かしら?」
「早く来たと思ったんだけどなあ」
___珍しい。ティミドとティザーが来るなんて、それほど危ないんだろうか。
「皆早いねえ。あ、スウィは来ないってよ」
嫌な奴が来たとリヴはさっきとは違う意味で苦笑いをする。
「リヴちゃん。好き嫌いはよくないわよ」
ゆっくりとした動きでティミドがリヴに近づく。その姿はまるで思春期の子に気づかれないように優しく寄り添う母のようにも見えた。
「ああ、わかっているよ」
「話をしましょうか」
「ああ」
一呼吸置きリヴは少しだけ声を張り上げる
「このところ日本海の警備が強くなっている。だから明後日にでもインド洋に逃げる。そのために準備物や船の整備が必要だ。今日はしっかり体を休めて明日に備えてくれ」
また、しっかりと言葉を噛みしめるように
「私と、ティミド、ティザーは航海の準備、紗良、灯呂は買い物、ちゃんと変装しろ。船長とスウィは船の準備をお願いします」
この一言が本当に彼女たちの運命を変えるんだ。
「では、解散でいいですか?ほかの意見がある人は言ってください」
「ないよー」
「では、船長言ってもらえます?」
「いいよ、じゃあ解散」
明後日、インド洋に逃げる。
その真実だけがみんなの心にこだました。