大切なもの×22
探してください。
「すいません」
私を、どうか
「なんであやまるんだ?」
どうか、どうか
「すいません」
見つけてください……
***
日本軍隊。
日本を拠点に置く海上軍隊だ。
『ランクには従い、犯罪者を確実にとらえる』をモットーにしている軍隊でアメリカに本部がある『SKH』の子分のような存在だ。
追加として、『SKH』は『世界』『海軍』『本部』の略である。
「漣隊長……」
ゆっくりと空を見上げる卯月を、頭を掻きながらため息をつき、そんな卯月を見守る。
「わかんなかったです」
「そうか」
「どうしてなのかも」
「そうか」
「どうして、愛してるなんて言ったのかも」
「そうか」
「全部全部、わかんなかったです」
もう一回、ほぼ骨だけになった犯罪者のわずかに残った肉をナイフで突き刺す。ナイフは柄の部分まで赤く染まっていて、刃も銀色の部分は血で錆び輝きを放っていない。刃が弾いた血液が綺麗な滴となって地面に落ちる。
「そうか」
同じ言葉を言い聞かせるように、何回も口にする漣。卯月がこうなったら止められないことをよく知っていて、でも、卯月がlikeの方で大好きな漣にとって何もできない自分を恨み、それでも卯月を責めないことに疑問を抱きながら。
「なんで、なんでしょうか?」
「わかんねえな」
「どうして、死んじゃうのかなぁ?」
卯月にしては珍しい、敬語の抜けた言葉が出てくる。ああ、新しい透明な滴が血の池に波紋を作る。
「俺にも、わかんねえことをお前にわかるわけねえよ」
すこし笑みを込めながら、漣は卯月の背中を見ながら言う。少しずつ少しずつ卯月との距離を縮めながら、愛しい我が子を迎えに行く親のように。
「…………はい」
「だからさ、今はいいんじゃねえの?」
「……」
「わかんねえことがあっても」
「…………」
「知らねえことがあっても」
「…うぅ」
「な?」
漣の言葉は卯月の崩壊のスイッチをゆっくりとそして確実に押した。音もなく崩れていく価値観、音を立てて落ちていく握られていたナイフ。音も立てないでただ募っていく疑問。
「うわああぁああああぁ」
目から出てきた、たくさんの滴が卯月の頬をつたって服にシミを作った。その間に、手が触れるぐらいに近づいた漣は自分の片腕の長い袖で卯月の目を覆った。はたから見ればうしろから抱きしめあっているような格好になり、卯月の目からあふれる滴たちは卯月の頬をつたうのをあきらめ漣の袖に移動する。
「泣け、泣け今は思いっ切り泣いとけ」
嗚咽をしながら泣きじゃくる卯月を漣は何もなかったように振る舞う。なぜ泣いているのか?なぜ壊れたのか?疑問は脳を埋め尽くすが、今この瞬間でできることを漣は実行している。
「…さざ、なみさん」
「ん?」
「つきが、綺麗ですね………」
卯月の視界は漣の袖で見えないはずなのに、卯月はそんなことを言った。
彼たちの背後では、優しい光で月が二人を照らしていた。