大切なもの×19
人の本能は
「泣かないで?」
いつだって
「泣いてなんかない」
そう、いつだって
「悲しくないんだ」
理性を裏切る。
***
日本軍隊。
日本を拠点に置く海上軍隊だ。
『ランクには従い、犯罪じゃを確実にとらえる』をモットーにしている軍隊でアメリカに本部がある『SKH』の子分のような存在だ。
追加として、『SKH』は『世界』『海軍』『本部』の略である。
妙に冷たい服を卯月は、歯ぎしりをしながら翻す。
「あ、愛していた?あいつが?あいつなのか?」
いまだ正常に戻ってない脳で犯罪者はブツブツと疑問を繰り返す。
「愛してるかー…」
卯月はつぶやく、疑問を抱えながら、疑問を殺しながら。遠くで見守っている誰かに届かすように。
「くそっっっ」
苛立ちの隠せない犯罪者は服に隠していたナイフを手に取る。少し生暖かい温度が手から脳に送られ、犯罪者の苛立ちをえぐるようにじわじわと伝わる。一か八か…、犯罪者はナイフを卯月にむける。
「…………」
敵に背を向け無防備と言っていい状況の卯月の腹部を狙い、犯罪者は妙に光っているナイフを突き立てる。ナイフの先に少し赤い血がつく、布をつたってさっきの液と混ざる。
「ややや、やったぞ」
カタカタとナイフを震わせながら、犯罪者は狂ったように口角を上げる。口角を下げた卯月と対照的に見えるその行為を卯月は黙ったまま。
「これで、いいですか?」
「は…?」
「あなたを愛していた、人を殺してしまった償いはこれでいいですか?」
カランとナイフが地面に落ちる。重力に従って、犯罪者の怨念に逆らって。
「貴方を、悲しませてしまった償いはこれでいいですか?」
「ひっ……」
瞬間、犯罪者の足が膝から下が無くなることになる。