大切なもの×18
昨日の友は今日の敵。
「なんで?」
どんなに仲良くても、敵になっちゃうんだって…
「なんでなんでなんで?」
じゃあ、友達なんて…
「なんで、生きてるの?」
亡くなっちゃえ!
***
日本軍隊。
日本を拠点に置く海上軍隊だ。
『ランクには従い、犯罪者を確実にとらえる』をモットーにしている軍隊でアメリカに本部がある『SKH』の子分のような存在だ。
追加として、『SKH』は『世界』『軍隊』『本部』の略である。
空気が、止まる。音が、遠くなっていく。鼓動の音が、五月蠅く、煩く、うるさく鳴り響く。
「実行二移シマス」
音のない世界に、機械の抑揚のない声があてもなく聞こえる。破片を踏みながら、卯月は下唇を噛む、少しだけ下を向いて視界は白い髪に邪魔される。
「……っ」
カチャっと、力を強めた拳に収められていた銃は軋む。少しの鉄の味と、両手から脳から体から溢れ出てくる疑問をその心のうちに隠しながら、健気すぎるアンドロイドの行動を恨む。
「こここ、殺せ、そいつを殺せぇ」
音の消えた世界で、犯罪者は言葉を発する。アンドロイドはその間に卯月に詰め寄り全神経を込めて手を変化させて作った鎌状の物質で首を切ろうとする。
『パン』
乾いた音が再び音のない世界にこだまする。音も時間も空気も止まった世界が動き出す。アンドロイドの穴の空いた腹部を強調しながら。
「「あ、あぁああぁぁぁあぁああ」」」
壊れたような犯罪者の声が、いたって冷静な卯月の呼吸が、混ざる。
「マ『マス…」
腹部に取り付けられた燃料の液が、限界まで開いた眼球からどばどばと溢れる。泣いているようにも、悔やんでいるようにも見えるその姿をどう見ているのかはわからない。
「死んで……っ」
卯月はとどめを刺すべく額に銃口を当てる。ひんやりとした感触が二人の間に共有される。使い慣れている銃がどことなく冷たく感じ、重く固く、引き金を引く手は震えていた。小刻みに、小刻みに。
「・・・・あなた、あいしてた___
アンドロイドの一言は暗い空に消え、アンドロイドから頭部も消えた。
何の液かわからないドロドロな液体が噴水のようにその首から噴射され卯月の服を、髪を濡らした。静かに卯月は目を閉じ、その液体にぬれることを拒ますに受け入れた。せめてもの、つぐいだといわんばかりに、白い制服も白い髪の毛も赤い液体に浸食された。
その赤は、月の光に照らされて卯月を妖艶な空間に放り出した。
ああ、その、時武器と呼ばれた女性は笑っていたなぁ。最後に言えて幸せなように、『愛していました』その一言を言えてよかったように……