大切なもの×17
追い抜かれた?
「マ、『マスター』?」
なら、追い抜き返すか
「お、おおおおお俺は、しらねえぇえぇぇえ」
その人を、自分から切り離してしまえば
「何が、知らないだって?」
いいんじゃないか?
***
日本軍隊 。
日本を拠点に置く海上軍隊だ。
『ランクには従い、犯罪者を確実にとらえる』をモットーにしている軍隊でアメリカに本部がある『SKH』の子分のような存在だ。
追加として、『SKH』は『世界』『海軍』『本部』の略である。
散らばった破片をみながら犯人は考える。もしここで、俺がナイフを癒月に突き刺せば勝機はあるか…と。
「『マスター』ノ生存確認ヲ要求シマス」
健気と表現していいものか、アンドロイドはマスターである犯罪者の生存確認を確かなものにするため応答を待つ。
その間に、何発癒月が撃てるのかはわからないが、これだけは言えた。
「なんで、あんたは生きてんの?」
癒月は怒っている。一見単純にして、複雑な感情をその体の内にメラメラと煮込みながら、アンドロイドの正常な対応を軽蔑して見る。
「『マスター』応答ヲ要求シマス」
煮込んだ怒りをどこに捨てるかは、わからない。
「お、おおお俺は生きてるぞ!そ、そいつをここ、殺せぇ」
立つこともままならない犯罪者はアンドロイドに命令を出す。それが怒りを煮込んだ鍋をひっくり返す行為だと犯罪者は知らない。その鍋の中がぐつぐつと煮えているのを犯罪者は知らない。
「『マスター』ノ指示ヲ確認シマシタ。今カラ実行二移シマス」
癒月は歯ぎしりをする。なぜ、犯罪者が生きて武器が死ぬのか…
なぜ、自分で戦わないんだ、なぜ?なぜ?
「なぜ、お前が戦わない?」
なぜ?なぜなんだ?疑問は癒月の頭に湧き上がり、消え、また生まれる。
「おおおお俺は知らねえ、そんなこと知らねえよぉおぉおお」
今の癒月に冷静など残っていない。
「そうか」
残っているものは弾丸を込めた銃と、怒りと、冷え切った空気だけだった。