大切なもの×16
世界では
「えーい!」
人と違うことが異常ではない
「そーれ!」
人と全く同じこと、それこそが
「やめろぉおおお」
真の異常なのである。
***
日本軍隊。
日本を拠点に置く海上軍隊だ。
『ランクには従い、犯罪者を確実にとらえる』をモットーにしている軍隊でアメリカに本部がある『SKH』の子分のような存在だ。
追加として、『SKH』は『世界』『海軍』『本部』の略である。
距離を詰める卯月に恐れを抱き、ねじを巻いた機械人形のようにガタガタと足を震わす犯罪者。
「……………っ」
何も声が出ない恐怖の中で、桃色の服を着た女の手をしっかりとつかみながら犯罪者は卯月を自分の視界に入れないように逃げ出す。犯罪者にとって、卯月も行動一つ一つには恐怖と威厳が混じり合い空気や視界は歪んだように見える。
「逃げないでくださいよ!」
癒月は、スッと足を振り上げ思いっ切り相手に蹴りつける。
そして、蹴られた部分を中心に痛みは犯罪者を支配していく。
「…ちっ、こそこそすんじゃねえ、裏切者が」
その時に倒れこんでしまった犯罪者を仮面を付けたように表情を変えないアンドロイドが見る。
と、アンドロイドは目の色を桃色から赤色に変えて癒月を睨みながら
「『マスター』ノ危機ヲ察知シマシタ。敵ヲ排除シマス」
と、機械音を鳴らしながら、手を鎌状の武器に変える。その姿はまるで、捨て猫を守る子どものような純粋な動機で、親を殺すような理不尽で、自分にとっては理にかなった行動をするような。
「ほお、設定までしたか」
卯月は冷静に分析しながらハイヒールを履いた足をゆっくりと上に上げる。
それは、肉食動物が獲物を狩るときの構えに似たような不思議な威厳をはらい、相手の脳内にねっとりとそして危険を知らせる。
「口ヲ閉ジテクダサイ。敵ヲ排除シマス」
刹那、卯月にとびかかり喉元を狙う。卯月は後ろに一歩下がり、攻撃を射撃に変える。
「うっせぇ、黙って撃たれてろ」
卯月は手早く腰につけている銃を手に取り、引き金を引く。あらかじめマガジン(弾のこと)を入れておいたためマガジンを付ける必要は無かった。
「や、やめめめっめや、やめろお」
パンと乾いた音と『ピー』という機械音が犯罪者の鼓膜に届き、じわじわと脳に伝わっていく。ろくに使いもしない口を無理やり動かしながら犯罪者はその行動を止めようと試みた。
「右手負傷…『マスター』ノ生存確認ヲ要求シマス」
が、卯月の撃った弾丸はアンドロイドの右手に吸い込まれるように当たり機械でできたアンドロイドは赤い血をまき散らすわけでもなく、銀色の歯車や皮膚の役割を果たしていたであろう肌色の塗料が地面に散乱した。