大切なもの×12
思い出は水で
「かえったよー」
記憶は油。
「おかえり!」
どう頑張っても混ざらないから
「はやかったな」
入ってた脳を投げ割ったの
「楽しかった」
そしたら
「そうかー」
何にも考えられなくなっちゃった。
***
海賊「ウンターガンク」はただの集まりではない。
かといって、悲しい過去があったとかうれしい過去があったとかでもない。
ただそこに「海賊」というレッテルが貼られた集まりだ。
世界を敵にまわしても自由を求める集団。
それが『ウンターガンク』という海賊だ。
「ただいまー」
「かえったわ」
明るい青色の空気にクリーム色が混ざって優しい色になる。
「おかえり!」
「おかえりなさい」
「はやかったな」
色の正体は口々に挨拶をする。
___ティミド…そのアタッシュケースの中には…
「ねえねえティミド、そのバック何?」
「私も気になるわ」
明るい2人は隣り合いながら同じ質問をする。
その心に黒い糸と赤い糸を絡ませながら
「お金よ?そんなにもらえなかったけどね」
クリーム色は何事もなかったようにアタッシュケースを少し高く上げる。
「あのねー、ティミドすごかったんだよ!」
自慢げに話すピンク色。
手を上に上げ出来るだけすごかったのを強調しようとする。
「私はスウィンドラーは船長さんのところに行ってくるわね」
ゆっくりとした動きで船長室へ向かうティミド。
その手には少しの汗をにじませながら。
___絶対怒られるなティミド…
「なんでリヴは黙ってるの?」
「そうよ?何かあった?」
葉巻の煙を吐きながらリヴは困ったような表情をする。
___船長に怒られるのが可哀そうだとか言えないしな。
リヴはごまかすように葉巻を吸った。