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大切なもの×11

 世界が俺を認めない?

「いいでしょう?」

 ふざけんな

「いや、やられましたなあ」

 そんなのなら、世界に認めてもらわなくていい

「これ以外待たせないでいただけますか?」

 いつだって

「調子に乗んなよ!ガキが」

 世界が認めてくれるのは外見レッテルだけなのだから。


***


 海賊「ウンターガンク」はただの集まりではない。

 かといって、悲しい過去があったとかうれしい過去があったとかでもない。

 ただそこに「海賊」というレッテルが貼られた集まりだ。

 世界を敵にまわしても自由を求める集団。

 それが『ウンターガンク』という海賊だ。


「どうですか?」


 いかにもほんわかとした空気を纏う二人組がある店の中で交渉をしている。


「いい出来ですな。本当にいい」

「そう、ありがとう」


 その風景はどことなく微笑ましくどことなくおぞましい感じがする。


「ああ、紅茶でもいかがですか?」

「もらいますわ。あら、ありがとう」


 黒いスーツを纏ったガタイのいい男が紅茶を持ってお辞儀をするという何とも違和感のある状況になってもティミドはできるだけ笑顔を崩さず、相手の様子を探る。


___きっと、ここは相当稼いでるわ。めぼしい額がもらえるかも


 にっこりとした笑顔で紅茶を口に運び、出来るだけ音を立てないように飲む。

 音を立てないのは、紅茶を飲んでいる間に相手が話している内容を盗み聞ぎするためだ。

 室内は少ないものながら高そうな調度品が置かれており相当稼いでいるのが目に見て分かる。

 

___なによ。偽物インスタントじゃない。ケチったわね。


 本場の味とは少し違う味に不満を募らせながらティミドは出来るだけ平常心を保つ。

 ティザーは飽きたのか部屋を物色している。

 隣には少し茶色がかったスーツを着た男がおり、勝手には行動できないようになっている。

 が、むしろティザーはその男に話しかけ「これはなにか」と尋ねている。


「この宝石たちはこの金額でどうですかな?」

「どんな額ですか?」


 そっと机に置かれた紙には綺麗に0が並んでおり、普通の人なら満足する金額だ。

 その金額も相手側による計算であり、出来るだけ満足させながら自分たちの利益を大きくしようというのが魂胆だ。


___まだまだね。浅い。もっとこの店は出せるわ。


 ティーカップを持っている手に力が入るも必死の抵抗で抑える。


「もう少し盛れないかしら」

「これが限界ですねえ」


 


 一番偉いと思われる相手が机の紙きれの金額を苦笑いをしながら見る。


___めんどくさいわね。あんまりこんな手段は使いたくないけれど。


 相手側とティミドの間に少しの濁りが出来る。

 その濁りは灰色の何重ものオブラートに包まれているものも、おぞましさはオブラートを溶かしながら空気にねっとりと纏わりついていく。

 と同時にある2つの特異点が生まれる。


「女だからって舐めないでいただけますか?」


 先ほどのティミドからは想像もできないような威厳のある声に、ガシャリとティーカップを置いた音。

 そのティーカップはもはやティーカップといえない状況をしており

 机に置かれた紙は茶色の液体で染まっていく。


「まだ出せるでしょう?」


 先ほどの彼女の手におさまっていたティーカップの柄の部分だけがそのまま残っており彼女がへし折ったということを表していた。

 

「いやあ、まいりましたよ」

「そう?」


 2度目のガシャリという音、彼女の掌でティーカップの柄の部分が無残な姿になった音だ。


「これでいいですか?本当にこれ以上は出せませんよ」


 相手はこれ以上怒らせては、こんなにもいい宝石がなくなってしまうと思い出来る限りの金額を出す。


「…いいわ」

「ありがとうございますねえ」

「こちらこそ。ティーカップが1つなくなってしまいましたわ」

「かまいませんよ」


 「じゃあ」とそそくさと立ち去るティミドの手には大きいアタッシュケースと名残惜しそうなティザーの片手を握らりながらキラキラとした街へ歩ていくる。


 2人の空気は優しいピンク色に戻っている。

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