大切なもの×9
笑え
「敵が来た!」
この私の生き様がおかしいなら笑え
「大砲準備!」
白い衣服を赤く染めてでも
「発射!」
助けたい人がいる
「来たぞ!」
裏切りたいものがある
***
海賊「ウンターガンク」はただの集まりではない。
かといって、悲しい過去があったとかうれしい過去があったとかでもない。
ただそこに「海賊」というレッテルが貼られた集まりだ。
世界を敵にまわしても自由を求める集団。
それが『ウンターガンク』という海賊だ。
「リヴちゃんいる?」
ティミドはいつも通りのおっとりとした動きでリヴの部屋のドアをノックする。
「いる。なんだ?」
キィという音がして木材でつくられたドアはゆっくりと開く。
「船長さんが用事ですって。私はたんに会いたくなったからきたの」
「そ、そうか」
歯切れの悪い返事をしたリヴの顔にはティミドに会えてうれしいという感情よりも船長に会わなくてはいけないという試練の方が上回っている。
「私も一緒に行こうか?」
「そうしてくれ」
背中にじんわりと冷や汗をにじませながら幽かに震えているリヴを見かねたのかティミドは、ほんわかとした笑顔で助け舟を出す。
「おや?そろいもそろって、ちょうどよかった」
ティミドがリヴの背中をさすると同時にリヴの震えの元凶となる彼は何食わぬ顔で現れる。
「私たちも行こうと思っていたの。ちょうどよかったわ」
なぜか声が出ないリヴの代わりにティミドが船長に挨拶をする。
「最近資金がなくなってきてな。商売をしに行くんだが誰かいないかと思って」
「ああ、それなら私が行くわ」
「そうか」
「ぼったくっていいかしら?」
「やめておけ」
船長が近づくにつれてリヴは高い身長を平均身のティミドの後ろに頑張って隠れる。
そんなリヴを見かねたのか
「リヴちゃん。お部屋に戻っていていいわよ。こっちで話していくからね?」
「あ、ああ。おねがいする」
優しい声色でリヴに助け舟どころか軍隊を一隊送り込んだような優しい助けを出し、船長との話に戻す。
「台湾についたら、だから」
「わかったわ。あと」
ティミドは右手を頬にあてながら船長に疑問を持ちかける。
「なんでそんなにリヴちゃんに嫌われているの?」
そんな質問に船長は頭を掻きながら
「んー。なんでだろうね。やっぱり脅してこの海賊にいれたのが悪かったかなあ」
「悪いわね。完全にあなたが」
と、苦笑いをしながら手をはらはらと振りもと来た道を戻っていった。
「そんなことをしていたら、いつまでたってもリヴちゃんには好かれないわね」
なんて嫌味を混ぜ込んだ言葉をティミドは吐きながら
ゆったりとした足取りで自分の部屋に戻っていく。
ほのぼのとした空気が少しの間リヴの部屋の前に漂っていた。