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十万人がそろいました

 結局晩御飯はとっても手抜きになってしまいました。

 冷凍食品を一つ解凍して、あとは適当にお味噌汁を作って終わり。

 一緒にゲームしていた兄さんには絶対に文句は言われないし、問題は皆無だったけど。



 そしてご飯を食べ終わってお風呂も済ませて午後9時、再び《PFO》にログイン。


 さっきはあんなにたくさん人がいたというのに始まりの街にはほとんど誰もいなくなっていた。

 兄さんも一緒にログインしてきたのでたずねてみた。


「ああー、もうこんな街に来るほどのプレイヤーが少なくなってきたんだろうなー。もうサービス開始から9時間たったから、そろそろ次の街についてる連中ばっかりってことだ」


「それはつまり、私は出遅れてるってこと?」


「うーん、平たく言えば」


 あっさり肯定しやがったこのダメ兄。



『お知らせ:《パンドラ・フォース・オンライン》に登録したプレイヤーが十万人になりました。それに伴い職業の分布表を各町の広場に掲示します』



 言ってるそばからお知らせがやってきた。

 もう十万人そろったって、やけに早いとか何とか思いながらも気になったのは後半部分。


「職業の分布表……って?」


「さぁ……? とりあえずあれっぽいから見てみるか」


 兄さんが指差した方向には掲示板が立っていて、それなりにプレイヤーが集まっていた。



 分かりやすく言うとそれはどの職業が何人いるかを示しているそのままの意味でした。

 

 読んでみたら《見習い魔法使い》とか、《ウォーリア》とかが中でも多くて、合計で二万人ほどの人数だと書いてあった。

 中には《アナウンサー》とか《占い師》とか戦闘できないでしょうって突っ込みたくなる職業が二、三人いたりしたけど、一人しかいない職業って言うのは一つしかなかった。


「うん、分かってた通りだが、やはり結衣よ、お前の職業は唯一のものだ」


「ということはやっぱりあんな馬鹿な選択をしたのは私だけだったって言うのね……」


 誰もストレートには言ってくれないのでもはや自虐に走ります。

 掲示板の周りの人たちもなにやら「換装師って何? 新職?」とか言ってるし、どうせ愚かな選択でしたよ……。


「いや、まぁ大丈夫だからとりあえず落ち着こうか」


 この兄になだめられるようでは人間失格と思った。




「で、結衣はこれからどうする? 俺は全員そろったみたいだから前作からのギルドメンバー集めてギルドを立ち上げるつもりなんだが」


「兄さん、ギルドって?」


「分かりやすく言うとプレイヤー同士のチームだな。パーティと違って同じ一つの名前のついたグループみたいな感じだ。オドとか楓丸もそのメンバーだけど、お前も入るか?」


 どうやらギルドのトップだったみたい。でもそこに入るって言うのは自殺行為な気しかしていないので断っておかないといけない


「うーん、私もうちょっと自由に遊んでみたいからそれはやめとくね。ちなみに兄さんのギルド名前なんていうの?」 


 心底残念そうな顔をしたがすぐに答えてくれる辺り兄さんさすが。


「《牙狼》って名前のギルドだ。どうだ? かっこよかろう」


 名前からして脳筋な感じがするのは私だけなんでしょうか。


「そうだね。とりあえず私はこれからいろんなところ巡って見るから、兄さんまたね!」



 このままだとまたしてもパーティ勧誘来たりしそうなのでそうなる前に兄さんから一目散に逃げ出した。








 それから数十分後、私は変な渓谷に迷い込んでいました。

 っていうのも街を出たところでどこに進めばいいのかわからずに


「うーん、とりあえずこの道をまっすぐいけるところまで行ってみよう!」

 

 なんていいながらひたすらまっすぐ進んでいくとなんだか道が険しくなってきて、だんだん霧の濃い谷のようなところに着いたのです。


 モンスターもだんだん強くなってきていて、まだ無傷でここまできてるけど、荷物の上限が増えたのに回復アイテムを補充してなかったから危なくなったらすぐに逃げないとだめな状況になってしまった。


「それに誰もいないのはちょっと心細いかも……」


 さっきから姿が見えるのは鳥みたいな姿のモンスターばっかりだ。

 さすがに引き返そう、って思ったときだった


「きゃぁああああ!」


 そんな悲鳴が聞こえてきた。


「え、どこどこ!?」


 霧で悲鳴の主の姿が全く見えない。

 とりあえず悲鳴の聞こえてきた方向へダッシュダッシュ。


 するとさっきも見た鳥型モンスターに襲われている女性キャラクターが目に入った。


「大丈夫ですか?」


 遠くから声をかけてみるけどどうやらパニックになっていて聞こえていないみたい。

 とりあえず鳥型モンスターを排除しよう。


「【換装】《ショートボウ》」


 姿が見えているので弓も使える。

 女性の周囲を滞空している鳥型のモンスターに【精密射撃】を放つ。


 すると胴体とは言わなかったけど翼に見事命中。哀れにも鳥型モンスターは落下してきた。

 女性はというと加勢にびっくりしてその場に硬直している。


「大丈夫ですか?」


「え、あ、はい。危ないところをありがとうございます」


 どうやら少し落ち着きを取り戻しているみたいだ。

 でも鳥型モンスターを倒したわけじゃないから止めをしっかり刺しておかないと。


「【換装】《カタナ》」


 続いて取り出した刀でしっかりと鳥型モンスターの胴体を斬り付けたらそれで消滅しました。お疲れ様です。


「えーと、あの、びっくりしたんですけど、お強いんですね」


 突然ほめられてちょっとびっくりした。


「ありがとうございます。それにしてもなんであんなモンスターに襲われてたんですか?」


 意味合い的にはあんなに弱いモンスターにどうして?ということなのだが。


「私、実は生産職なので戦いは専門じゃなくて。それで鉱石を取りに来たんですけど、【隠密】が切れてしまってモンスターと遭遇してしまったんです」


 生産職って言う言葉は確か兄さんから聞いた気がする。アイテムを作ったり採ったりするのが専門の職業だったような。


「えーと、なんの生産職なんですか?」


「持ってるスキルが【鍛冶】と【鉱石採掘】、【紡績】と【裁縫】なので武具生産と鉱石精錬、後は装備に必要な生地作りが主な仕事ですね」


 つまりは武器とかが作れるということ?

 それって私にとって知り合いにいてほしいタイプの人じゃないの?


「表示されてるでしょうけど、私、雫って言います。結衣さん、もしこの先に行くんでしたら連れて行ってもらえませんか? この先に鉱石の発掘ポイントがあるんです」


 別にこの先に行かなきゃ行けないわけじゃないけど、この出会いは大事にしたいと思ったから承諾してみた。

《アナウンサー》はイベントのときの実況などで役に立ちます。

スキルは【大声】【商売上手】などをとる必要があるんですね。

ちなみに【大声】は遠くの人にまで念話なしで声が届くスキル、【商売上手】はフリーマーケットでの売り上げが上がるスキルです。

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