スキルを取ろう!
学校でどんどん細かい設定を考えていました。ただメモを取り忘れて・・・
俺の妹について話をしよう。
目の前を歩くブロンドの髪をした精霊種のアバターの女の子が俺の自慢の妹だ。
リアルでは中学三年間女子バスケットというハードな部活をやっていたのだが、身長はさほど高くない。
スタイルは元から良いし、妹を狙う悪い虫は昔から絶えない。
精霊種はほとんど人間と同じ見た目だし、このPFOは顔だけはアバターをいじることが出来ない。だというのにかなりの美形。男どもが沸いて出てくるわけだ。
中学時代はクラブのこともあって髪の毛はショートだったのだが、引退してからセミロングくらいにまで伸ばしている。今は背中の中間辺りに毛先があるくらいの長さだ。
我が妹ながら全くといって良いほど隙の無いよく出来た妹だ。料理はうまいし勉強もそれなりだし、運動神経は抜群だ。
少し照れ屋で照れ隠しに殴ってきたりするが、女の子の攻撃なんてたかが知れてるもので可愛いのだ。
ほら、今もこうしてこっちをじっと見て、目が合ったから照れ隠しに攻撃・・・ってあれ、ちょっと待ってください結衣さん、あなたの手に持ってるそのどう見ても殺傷能力の高そうなものは一体……?
「兄さん、今余計なこと考えてた?」
この兄がずっとこっちを見ているときというのはたいていろくなことを考えていない。
だから今回も変なことを考えているだろうと何かされる前に全力の笑顔を浮かべたまま【換装】で取り出した《ハルバード》を構えているだけだ。
「スミマセン、ゴメンナサイ、俺が悪かったです。だからその物騒な鉾を収めてくださいませんか?」
どこからどう見ても反省しているように見えないのだが仕方ないから許す。
「ファングさん、着きましたよ。案山子の訓練場」
「お、ほんとだ。結衣、ここが【見切り】を取るためによく使われる場所だ。チュートリアルマップだし、レベル1でも何とかなるはずだろ」
・・・最初に出てくるモンスターはきっと軟体生物とか、可愛らしい動物系のものとかそういうのだと思ってたのに、期待と違う。
「兄さん、一つ思ったことを言って良いですか?」
「妹の質問ならば命がけで答えよう」
「意味分からないけど。【見切り】って必須のスキルならなんでこんなにここに来てる人少ないの?」
見るからに案山子がたくさん立っている訓練場には人影がほとんど見あたらない。
というか、むしろ私たちだけな気がする。
「いや……それはだな……」
なんだかいいにくそうなファング。
「それは当然【見切り】はメインスキルで取って当然のスキルだからに決まってるじゃないっすか。ウィークポイントを判別するスキルなんだから、取ってないほうがおかしいっす」
「……おい、お前、何でそんなことを言ったんだ?」
「あ……」
うん、分かってたけど、凄くへこんだ。どうせ初心者でありえない選択をした愚か者ですよ。
「初心者なら仕方ないですよ。説明しなかったファングさんが悪いですしね」
「と、とりあえずだ結衣よ! 【見切り】の習得条件を満たそうではないか!」
楓丸がジト目で追求したことをさらりとかわして本題に行くファング。
兄さんのせいで苦労することが目に見えてます。
「【見切り】はウィークポイントを二十回連続で攻撃することで習得することが出来る! そして目の前の案山子のウィークポイントは見ての通り顔に張られている的だ!」
そういわれて案山子の顔を見てみたら確かに分かりやすく的が書いてあった。
案山子は動かないし、好きなように攻撃できるから習得には確かにもってこいなのかもしれない。
「兄さん、どの武器で攻撃してもいいんですか?」
「もちろんだ。結衣は大体の武器を持っているがどれで攻撃してもかまわないぞ」
ということなのでとりあえず武器を試してみることをかねて一つ一つ試してみることにした。
まず最初は一番使いやすそうな《ショートソード》で顔を一突き。
鉄製の剣だけど私でも十分持てる重さだし、取り回しやすかった。
「……やはり職業に合った武器じゃないと一撃にはならないんですね。レベル1だと」
「……職業に合った武器なら攻撃力1.5倍だもんな。それに比べて全武器1.2倍……」
微妙だ、と意見を一致させるファングの仲間二人。
全部聞こえてますし不遇具合が理解できちゃうじゃないですか……。
続いて大物も取り出してみる。《バスタードソード》を【換装】で取り出す。
すると手元の剣が一瞬で1mくらいはあるだろう大剣が手元に収まった。
大きいけど思ったより軽くて両手なら余裕で扱えそうだ。
「色々使ってみるのはありかもしれないな。一応教えとくと【剣・刀使用】で扱える武器は短剣、片手剣、大剣、騎士剣、細剣、刀の六種類。【槍・斧使用】は長槍、投槍、鉾、片手斧、両手斧、ハンマーの六種類。【杖・棍棒使用】は片手杖、両手杖、メイス、三節棍の四種類、【弓・銃使用】では弓、弩、短銃、狙撃銃、機関銃の五種類だから結衣が扱える武器は二十一種類になるんだから色々使ってうまく扱えそうなのを選ぶといい」
なにやら手元に無い種類の武器も説明されたけどそんなに扱えるんだ。やっぱり便利じゃないのかなぁ。
「それに全部装備ステータスも攻撃力もDEX依存だからある意味楽かもなぁ」
どうやら本当は装備ごとに必要な能力値があるみたいだ。
ちなみに現在の私のステータスはこんな感じだ。
HP:100
MP:80
STR:0
DEX:15
LUK:0
INT:5
VIT:0
凄くDEXに偏ってるけど、もうこれは仕方ないのだろうか。
そもそも必要なステータスだからいいのか。
なんとなく色々と話を聞けたので案山子倒しを続行。
《バスタードソード》を案山子の顔の的にめがけて思いっきり叩きつけてやる。
すると案山子を倒したのか、案山子はそのまま煙みたいなものを上げて消えていった。
それと同時に何かピコーンっていう音が聞こえてお知らせが来た。
『レベルアップしました。ステータスにAPを振り分けてください』
「おおー、早速レベルアップか。じゃぁステータスの振り分けだな」
「これ、どうやったらいいんですか?」
なにやらステータス画面に似たものが表示されて、さっきの五つの能力が表示された。
「1レベルごとに3つのAPがもらえるから、とりあえずそうだな、DEX2INT1の振り分けで良いんじゃないか?」
言われたとおりにDEXを二回選択し、INTを一回選択するとどうやら振り分けが終わったみたいだ。
「なんだかこんな初心者とやるの久しぶりで楽しいっす」
「AP振り分けの説明なんてもう何年してないことか……」
とお供の二人はなぜか感動してる。
個人的には早く初心者のレッテルをはがしたい。
「さて、じゃぁ後十八回ウィークポイントを攻撃してこい。俺らはここで見学してるわー」
と勝手に放り出されてしまった。
仕方ないのでひたすら【換装】をしながら案山子の顔部分を攻撃していくことになった。
そして五分ほどして三人のところに戻ってきた。
「どうだ? 【見切り】とれたか?」
「うん。後ね、剣使ってたら【スマッシュ】っていうアクティブスキル? と槍使ってたら【串刺し】と弓とか銃使ってたら【精密射撃】を習得したみたい」
あれ、周りの目がなんだか冷たい。
「……結衣さん、剣とか槍をそれぞれ使用した回数を教えてもらえませんか?」
「えっとね、剣とか刀は全部で三回、槍は使いやすかったから五回、弓と銃は一回ずつかな」
あれ、どうしたんだろう。
「……なぁ、やけに攻撃スキルの習得早すぎないか?」
「【スマッシュ】はPFOでも仕様は変わらず五回連続でフルスイングして確率習得するスキルのはずっすよね……?」
「……【串刺し】に至ってはウィークポイントを的確に貫いて一定確率習得のはずなんですが……」
悩む三人。
もしかして、攻撃スキルは簡単には取れないものだったり……?
「結衣、換装師の説明のところ、固有スキル以外何が書いてあるんだ?」
「えっとね、『攻撃スキルの習得確率上昇+50%』だって」
「……何その優秀さ」
どうやらこれは優秀らしい。
ほかの職業にはないのかも。
「不遇すぎるゆえの救済措置な気がする。ほかは不遇すぎるもんな……」
もしかして、不遇なところだけじゃないのかも知れない。
それだけでちょっとやる気が沸いきたりしました。
《PFO》では攻撃スキルは条件を満たしたときに確率習得なのです。
補助スキルみたいなパッシブスキルは条件習得ですけどね。