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そんな職業誰も知らない

 周りの風景を見るとモデルは中世のヨーロッパかと思うような街並みが広がっていた。


「うわ、周りに人がいっぱいだ」


 サービスの開始が今日の正午だったからということもあってたくさんのプレイヤーが結衣の立っている周りにいる。

 とりあえず兄さんを探さなくちゃ、とゆっくり歩き出そうとすると約一名こちらに全速力で走ってきた。


「そこにいるのは結衣かぁあああああああああ!?」


 周囲の人がびっくりして奇声を発しながら走ってきた不審者をの方を向いている。

 どうやら声は現実と同じのようで、それが誰か一瞬で判断してしまった。

 出来ることなら他人のフリをしたかったけどいつもの癖で目の前に来た瞬間に右ストレートをぶち込んでいた。


「兄さん、もうちょっと落ち着いてください……。じゃないと次は……ってあれ?」


 いつもなら右ストレートの前に倒れているはずの兄が平然と立っている。


「ふっふっふ、結衣よ、【体術使用】スキルを獲得しなかったな……? 現実ならあれほどのダメージがあった得意の右ストレートもここでは何の意味も持たんぞ!!!」


 そういえばスキルなんて物を獲得していないとダメージにならないんだった。

 それはプレイヤーにも同じ理屈らしい。

 

 でも私はそれ以外の武器は全部使用できるスキルを持っているのでとりあえず腰にあった長い棒を取り出す。


「つまりここでは結衣は俺から逃げることなぞ……ぐはぁ!?」


 そしてなにやら変なことを口走りだした兄を一発殴っておいた。


「分かりました。護身用の武器は常に常備して置けということですね」


「なるほど・・・我が妹は【杖・棍棒使用】を選んだか……。パーソナルデータを拝見」


 そういって兄はじっとこちらを見ている。

 そうすることでプレイヤーの情報を見れるのだろうか?

 

 

 その数秒後、兄は驚いた目でこちらを見ていた。


「…………結衣、お前、一体何のスキルを取ったんだ?」


 スキルの選択までは見れないみたいだ。


「え? 私が取ったのは【召喚魔法使用】【剣・刀使用】【槍・斧使用】【杖・棍棒使用】【弓・銃使用】だよ?」


「な……ん……だと…………?」


 なにやら大げさに驚く兄。


「俺が悪かったのか……! そうだ、初心者である妹に何の知識も与えずにスキル選択をさせてしまった俺が悪いんだ……!」


 そしてなぜか地面に両手両足をついてがっくりしている。


「あの? 兄さん? どうかした?」


「……すまない結衣、まさかそんな選択をする人がこの世に存在するなんて思っていなかったんだ……。だから換装師なんていう得体の知れない聞いたことも無い職業になっているのか……ッ!」


 何を言ってるか分からないぞ、この人。


「兄さん、よくわかってないんで解説をしてほしい」

ああ……そうだった。本来なら、というか効率のいいメインスキルの取り方を教えなかった俺が悪いんだが、効率の良いメインスキルの取りかたは、武器使用スキルを一つに魔法や補助スキルを三つ、そして生産系のスキルを一つ取るのが無難、というか当たり前なんだ……」


「……はい?」


 なんだかすごい勘違いをしたかもしれない。

 とりあえず解説を要求しておく。


「基本的に武器を一種類って言うだけで戦闘する分には足りるんだ。そして戦闘しやすいように魔法を取ったり、【見切り】とかの補助スキル取ったりすることで序盤が楽になるし、最終的にはそういう補助スキルが助けになるんだ。そしてほかの武器が必要になってもサブスキルで取れるし、70%の能力で事足りるから……」


 つまりは、私はすごく無駄のある無駄な選択をしたということだろうか。


「それに、【召喚魔法】は最初は初期装備の《召喚用アイテム袋》の中に入れてるものしか召喚できないから、すごく使い勝手が悪い。そして最終的にもすごく使い勝手は悪い。燃費は悪いし」


 ・・・それはつまり、私は絶対に一般ではありえない選択を二重にしてしまったということだろうか。


「ついでに言うと、その五つの組み合わせは見たことないし、換装師なんていう職業も見たことが無い」


 要するに、兄さんの説明不足が祟った訳だ。


「……兄さん? なんで最初にそれを説明しといてくれなかったんですか?」


「ゆ、結衣!? 落ち着け、謝るから! 謝るからその手元の棒とかナイフとかしまってくれ!」


 問答無用、まずは一発制裁を加えておく。


「……で、私、これからどうするべき?絶対に不遇の状態だよね?」


「はっきり言って、そんな職業前作では見なかったし、今回もまだ一人も見てない!だから俺には分からん!」


 最初から兄を頼りにして進めていくつもりが、いきなり頓挫してしまった。

 誰かほかに換装師はいないものだろうか……。


「だが協力はしよう! 兄として! とりあえず換装師って言うのはどんなアクティブスキル持ってるんだ?」


「アクティブスキル……? ってこれのことかな?えーとね、表示されてるのは・・・召喚魔法って欄に【換装】っていうのがあるよ」


 職業の名前の通りだけど、これ、どういう意味だろう?

 とりあえず使ってみることにした。

 カーソルを合わせると説明がされる。


『アクティブスキルは発動させることを考えながらスキル名を発音することで使用が可能です』


 お知らせにしたがってやってみる。


「【換装】」


 すると、手元に持っていた棒が突然木製の簡素な弓へと変わっていた。


「おお!?」


 驚いたのは兄のほうだ。


「【換装】ってそのまま武器の持ち変えをするスキルなの……。結衣、次は特定の武器をイメージしながら使ってみてくれないか?」

「分かった」


 兄の言うとおりに手元の弓を次は槍に持ち変えるイメージをしながらスキルを発動させる。


「【換装】!」


 フォン、と音がして手元の弓は鉄製の槍へと持ち変わっていた。


「なるほど、つまり【換装】は召喚魔法の一種で、換装師専用のスキルというわけか、道理で見たことが無いはずだ……。結衣、召喚用アイテム袋の中には何が入ってる?」

「えーっとね、アイテム名がたくさん書いてる。《ショートソード》に《ロングソード》に《ショートスピア》に《ブロンズアックス》、《ウッドワンド》と《ハードスティック》に《ショートボウ》に《ハンドガン》が入ってるよ」


「要するに取った武器使用スキルのもの一式か……なんだか凄い職業だな」


 うーんと頭を抱える兄さんはすぐに次の考えにいたったようだ。


「分かった、換装師は臨機応変に武器を【換装】しながら戦う職業だ!」


「そんなの私でも分かってる!」


 ゲームなら頼りになると思ったのだが……、兄さんはどうやらダメダメのようだ。


「とりあえず換装師について情報を集めるというのは無理だろうなぁ、となると後は実際に戦ってみてどうかを見るか。とりあえず前作からのネトゲ仲間を呼ぶからそこで待っていてくれ」


 なんだか【換装】をすることくらいしか分かったことはないような気がするけど、もうやけくそになって兄さんのネトゲ仲間とやらを待つことになった。

 ……どうせ誰も役に立たないって言う展開が読めるけど。

兄妹仲が悪いわけではございません。兄がシスコンなだけなのでs(

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