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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

どんなに明日が遠くても

作者: 朝霧

本当に衝動的に思いついて書いたため内容とか設定とか色々適当ですご注意ください。

「――っは……っは……」

 息が苦しくなっていく……だが、足を止め息を整える余裕など今の俺には無い。それがたとえ秒針すら動かぬほどの刹那の時であろうともその歩みを止めようものならば待っているのは死だけ……その言葉を頭の中で何警鐘を打ち鳴らしながら何度も何度も叫び言い聞かせ、『今日』始めて通るはずの入り組んだ裏路地を何一つ迷うことなく右へ左へ曲がり続ける。

 そんな俺の背後を複数の人影が……いや、『死』が追いかけてくる。俺は逃げる……逃げ続けてかれこれ半日が経った。どんなに巻いても、どんなに隠れても……奴らは必ず俺を見つけ出し追いかけ……そして、俺を殺す。何の迷いもなく……

 教会の異端討伐部隊……それが俺を追いかけまわす『死』の正体だ。正直『昨日』までの俺ならそんなマンガかアニメにしか出てこないような存在信じることも出来なかっただろう。だが、今俺に突きつけられているのはマンガやアニメみたいな空想(フィクション)なんかじゃない……どうしようもないくらいの現実(ノンフィクション)なんだ。

 だが、たったこれだけを知るのに俺は約230回。この事実と事の大きさを認識するのにさらに300回は死んだ(・・・)。そして、今こうして裏路地を全力疾走する『今』に至るまですでに何千回も死に……


その数と同じ分だけ『今日』を繰り返している。




 俺には昔から一つだけ他人とは違う特別な能力を持っていた。

 『タイムスリップ』『タイムリープ』『タイムトラベル』……名称は数多く存在してもそのその根底は皆等しく一つのモノ(・・)を指す。


――時間跳躍――


 俺にはたった1日。時間にして24時間分のみで、しかも条件が成立する限り0:00になると俺の意思に関係なく勝手に発動してしまう能力がある。このままだと同じ『今日』を永遠に繰り返すだけの呪いの様な能力だが、条件を知り得て居る俺にとっては望む限り『今日』という日を何度でも……そう何度だって繰り返すことが出来る理想の能力となる。

 この能力を使い1日1日を数回繰り返す毎日を過ごし、自分で考えうる限りの最善の日々を送っていた。


 人間誰にだって失敗は付き物。学校でどんな天才だろうとテストで解答間違いをするし、どんなにスポーツ万能だろうと転ぶ時は転ぶ。人が人である限り、生き物が生き物である限りいつかどこかで必ず失敗は存在する。

 だが、俺はその失敗を『今日』を繰り返すことによって自分の望むように操ることで俺の人生に失敗は存在しない。あるのは成功か、意図した不成功のみだ。


 俺は俺の力について何も知らない。ただ自分だけに備わった便利なモノとして自分の意思で自由に使う……だからかもしれない。

 こうして奴らに俺は目をつけられ、そして今まさに殺されようと……いや、実際にはもう何度も殺されている。




「っは……っは……っは……次の角……曲がって3秒後……」

 呼吸もままならない状況でもあえて口に出してやるべきことを再認識させる。自分の記憶にある最善の自分の動作をトレース……左手に持った手榴弾のピンを口で引き抜き、角を曲がる寸前でレバーも破棄。角を曲がり、奴らの視界から完全に隠れたところで爆発寸前の手榴弾をまるでごみのポイ捨てをするように後方へと投げる。


――ドン――


 いざ耳にしてみると意外と大きくもない爆発音が鳴り響き背後から少し熱を持った爆風が俺を追い越していく。

 これで3人死んだ……後ろを振り返って確認するまでもない。今手榴弾で殺した3人は繰り返し続ける『今日』の中でもう何度も何度も……殺している。だから俺はすぐさま次の行動に……今度は右手に持った拳銃を正面よりやや上向きに構え、そのまま走り続けた状態で引き金を引く。普通に考えればそんな撃ち方で狙ったものに当たるはずは無い……が、これも自分が望む最善の結果をトレースすることで狙いたがわず、先回りしていた奴らの一人の眉間に弾丸を撃ち込む。先回りしていた男は自分に何が起きたのか解らないままその場に崩れ落ちる。


 銃、ナイフ、爆弾、その他諸々……人を殺す道具や手段は数あれど、人が人を殺す時に最も重要なのはたった一つ。殺すことへの迷い……これの有無だ


 例え手に持つ銃が相手を必ず撃ち貫くモノだとしても……例え爆弾が間違いなく相手に届くモノだとしても……それ以外の全てがどんなに優秀だろうと引き金を引かなければ、相手に投げなければどんなに優秀だろうと殺すことなんて出来はしない。


 だから……本当ならば俺がこうもたやすく人を殺すことなんて出来はしないはずなんだ。

 そう……『昨日』までの俺ならば殺すどころか、この手に持った銃の引き金すら引くことは出来なかった。出来なかったのに……『今日』の……いや『今』の俺には容易く出来てしまう。

 人を殺すことへの迷いなど一切感じさせないほどにただ自分の中にある最善の結果をトレースすることだけを考え……ただ殺す。

 そこに人らしい感情などどこにもない。機械的に動き、その結果として人が死ぬ……現実味のない現実だけ。


 俺はたった一日……この世の誰よりも長い一日の中で、ちょっと人とは違うものを持った子供から、殺人者……そして、殺戮を繰り返すだけのモノと化してしまったのだ。俺はそんな自分をもうとても人だなんて思えない……思いたくない。自己否定と自己嫌悪に吐き気を模様しながらも身体は忠実に、正確に最善の行動を取り続ける……それがまた負の感情を呼び起こし無限にループする。




 それでも……


 そんな俺になってしまっても俺は生き続ける……『今日』を何度でも繰り返す。

 『昨日』から『今日』へ……『今日』から『明日』へ……ただ生きたい。


 どんなに『今日』が続こうとも……どんなに『死』を重ねようとも……




「……追い詰めたぞ。神を冒涜する力を持った異端者め。同胞の敵と共に今ここに正義の鉄槌を下す」

「っ!……何が異端だ。あんたらの宗教観で勝手に危険視して、勝手に殺そうとして、そのうえ仇だ?ふざけるな!」

 幾百、幾千も『今日』を繰り返し最善の選択をした結果、俺は俺を殺そうとする者たちに囲まれ『死』を突きつけられる。まだここから先の最善を見いだせない俺はここでまた『死』を迎え、再び『今日』を始めるだろう。

 俺にとって真の意味の『死』は『諦め』。『今日』というループをやめない限り俺は何度でも『死』に……『生き返る』。そして、『諦め』を生まぬため……『死』を拒絶するために俺は何度でも何度でも叫び続ける。


「こんな理不尽な『死』なんて絶対に認めない!俺は絶対に諦めない!必ず生きて『明日』を見るんだ!例え……例えどんなに――」


――タンッ――


 俺の訴えを遮るように無慈悲な弾丸が俺の額を射抜き『死』を突きつける。

 薄れゆく意識の中、『死』を拒絶するために最後まで叫ぶ。それが相手に聞こえて居なくても構わない。これは俺の決意なのだ。


 そう……必ず生きて『明日』を見る……

 どんなに……どんなに……




――どんなに明日が遠くても――

ここまで読んでいただきありがとうございました。

誤字・脱字・感想・ご指摘など、何かありましたら感想フォームにてよろしくお願いします。

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[一言] 復活待ってました。 英雄シリーズの更新など、今後の活動楽しみにしてます。
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