第六話 でんじゃらすごろく
今回は、後書きで、ちょっとしたお願いがあります!
「……本当、イヤになりますよ……」
そう言ってため息をつく影乃。
その様子を見た、鴎星は少々呆れたように笑う。
「ははは……。マジで気に入られたみたいだな……」
ちなみに、かざりが影乃の隣で腹を抱えて笑っている。
「はぁ……どうにかしてください、統輝先輩」
影乃はオレに話を振ってくる。
ちなみに、今話しているのは、小説研究部の部長のことだ。
なんでも、この間の小説騒ぎで、彼女は影乃のことをとても気に入ったらしく、影乃は彼女と出くわす度に、貞操の危険を感じるアプローチをされるのだそうだ。
……『どうにか』って言われてもなぁ……
「…………ごめん、無理、諦めろ」
「少しは後輩の身を考えて下さいよ~」
そう言って、影乃は机に突っ伏す。
「イヤ……こればっかりはマジで無理だぜ?影乃……」
鴎星がそう言ったので、オレはそれに頷いて同意を示す。
……うん、あれはムリだ……
……というかオレ、あの人は普通にいい人だと思ってたんだが。……まぁ実際、基本的にはいい人なんだが。……影乃以外には……
「あれでレズじゃなかったらカンペキな人なのに……ホント残念な人ですよね♪」
まだ、笑いが治まりきっていないかざりが、目に涙を溜めながらそんなことを言う。
「……同感だぜ。品行方正、文武両道、しかも相当な美人……でも……」
「「「レズだからなぁ」」」
オレと鴎星、そしてかざりが声を揃えて言う。
ホントに残念だよ。
あの人に憧れている生徒もかなりいるのに……
……ソイツ等があの状態の彼女を見たらどう思うのか気になるところだが……
そんなことを思っていると、影乃が元の体制に戻り、深いため息をついた。
ーーその時
「何か私に用ですか? 影乃ちゃん」
影乃の背後に、一つの影が立っていた。
……って、まぁ小研の部長だが。
急に背後から声をかけられた影乃は、カクカクとロボットのような動き方で振り向く。
そして、その正体を確認すると、彼女は顔を青くした。
「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして、彼女は涙目になりながらそう叫ぶと、鴎星の後ろに隠れてしまった。
「うふふ……。怯えた影乃ちゃんも……いいですねぇ」
小研の部長は、熱っぽい視線を影乃に向ける。
そんな彼女を見た影乃はさらに顔を青くして、ガクガクと震え始める。
……ホント、影乃がこんなに感情的になるなんてなぁ。マジで珍しいよ。
…………まぁ確かに、今の影乃は……こう、何というか……うん、いいな。
もともと、儚げな雰囲気の彼女が、こうして少しだけ涙目になりながらオドオドしていると、本当に、『小動物系』という表現が、ピッタリと似合うのだ。
かざりも同様に考えているようで、「……かわいい♪」と言いながら、ケータイで写真を取りまくっていた。
ちなみに鴎星は、満更でもなさそうな顔をしている。
しばらくすると、急にかざりが、ある発言をする。
「そういえば私、小研の部長さんの名前知らないんですけど」
部屋中の空気が凍りつく。
「……あれ?私マズいこと言っちゃいました……?」
かざりが慌てる。
その時だった。
部室のドアが大きな音を立てて開かれる。
ドアを開け、部屋に入ってきたのは部長さんだった。
そして、部長さんが口を開く。
「かざりさん! 彼女の名前は、まだ作者が考えてないのよ!」
その言葉に、もう一度空気が凍る。
そして、そんな空気の中、かざりは小研の部長の前に行きーー
「すいませんでした」
土下座した。
沈黙が場を満たす。
小研の部長は、部屋の端でうずくまってしまう。
「……うふふ……どうせ私はただのモブキャラですよ……」
彼女は一人で呟く。
「……実はレズっていうのも作者が急に思いついただけの後付け設定ですよ……」
何か、とてもマズいことを呟く。
「……所詮その程度で設定を変えられる存在なんですよ……うふふ……」
あまりの痛々しさに、オレたちは涙を抑えきれない。
すると、何処からか現れた雪奈センパイが、彼女の首あたりをトンっと叩く。
小研の部長は気を失ってしまう。
「「「「「………………」」」」」
全員が、彼女を哀れんだ視線で見つめた。
部長さんが、口を開く。
「とりあえず、聞かなかったことにしましょう。……あと保健室に連れてってあげて」
全員が心から頷いた。
**************
そんなこんなで小研の部長の一件が終わり、恭夜センパイも合流した。
今、部室の机には、大きな紙と、いくつかの人型の駒のようなものが置かれている。
これが何かって?
いや、この話のサブタイトルで気付いているだろ?
……そうだよ、想像通り
「……双六ですか」
こういうことだ。
ちなみに今呟いたのはかざりだ。
さて、この双六。正直イヤな予感しかしない。
何故かというと
「センパイ、コレ、どこで手に入れたんですか?」
「ああ、この前部室を片付けた時だ」
……そう、オレが何かに取り憑かれた時。
あれの前日にセンパイ達が部室を片付けたそうだ。……まぁ読者のみんなは知ってるだろうが。
その時に、いくつか遊べそうなモノが出てきたらしい。
部長さん曰く「まぁ、基本的にカットされてたから、双六に関しては読者は知らないはずよ」とかメタ発言をしていたが。
そして、だ。
何よりも気になっているのが、あるルールだ。
そのルールとは、『進んだマスでの命令は、絶対に実行しなければならない』というものである。
正直、かなり気になる。というか気になって仕方がない。
何故わざわざそんなことをルールとして書いているのか。
「とりあえずやってみましょう」
オレが思考に没頭していると、部長さんがそう言って、スタート地点にコマを置く。
それに続いて、残りのメンバーもコマを置く。
それを見たオレは、「まぁ、気にしすぎか」と思い彼女らに続いた。
ーーその考えが、浅はかだったと気付くのは、もう少し後の事だった。
**************
ということで、順番は、部長さん→雪奈センパイ→オレ→恭夜センパイ→かざり→影乃→鴎星、に決定。
1順目
まずは部長さん。
サイコロを転がす。……出た目は3。
「1……2……3!」
部長さんがコマを進める。
そのマスに書かれていたことは、『一回休み』
……まぁ普通だな。
「うーん。いきなりやっちゃったかしら?」
部長さんは微妙そうな顔をしている。
次に、雪奈センパイ。
「ふむ……私も3か」
センパイは、少し口を尖らせながらそう言う。
つまり、センパイも『一回休み』だ。
コレはラッキーだな。
……オレの番か。
サイコロを振り、出た目は……
「うわ……オレも3かよ」
ああー、『一回休み』か。
ま、まだまだ序盤だから大丈夫だろ。
恭夜センパイがサイコロを振る。
4の目が出る。
「…………4!」
マスに書かれている内容は……『半裸になる』。
……双六ってプレイヤーに何かやらせるって事が、普通は無かったはずなんだが……
「…………コレ、女子が止まったらマズいぜ?」
鴎星がそう漏らす。
……確かにな。
と、まぁそんなことを言っている間に恭夜センパイは服を脱ぎ終わる。
その体を見た部長さんは、少し顔を赤らめて
「相変わらず、締まった体してるわね……」
と言う。
恭夜センパイの体は、適度に筋肉がついていて、とてもスタイルが良い。
「「「「……(赤面」」」」
女子全員が、顔を赤くする。
「……1年コンビはともかく、千紗都と雪奈は海とか行った時に何回か見てるだろ」
その言葉に、部長さんが反論する。
「……あ、改めて見るとなると、何というか……違うのよ!」
「……ふーん」
そんな部長さんの言葉に、恭夜センパイはそんな曖昧な返事しか返せないのであった。
そんなこんなでかざりの番。
出た目は……2。
「うーんと、『パンツの柄を言う』……って、ええ!?」
かざりは、マスに書かれた内容を見ると、顔を赤くして、バッ!とスカートをおさえる。
そして、かざりはその状態のまま口を開く。
「……そ、その、コレは流石に勘弁して欲しいんですが」
「……ああ、そうだn」
オレが『そうだな』と言おうとすると、センパイと部長さんがオレの言葉を無視して答える。
「ダメよ? かざりさん」
「うむ、ルールにあっただろう、『命令は絶対』だと」
その回答を聞いたかざりは、涙目になる。
そして、影乃に視線で助けを求めるが、影乃はそれをスルー。
今のセンパイ達は、有無を言わせない迫力があるため、影乃は首を突っ込まないという選択肢を選んだのだろう。
完全に追い込まれたかざりは、観念したようで、肩を落とし、顔を真っ赤にして俯く。
ーーそして
「……わ、私が今はいているパンツは、白と水色の縞模様ですぅ」
暴露した。
男子3人は真っ赤。
影乃ですらも、顔を赤らめている。
そして、暴露した本人は、
「……ぐすっ……うえぇん……」
恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にして、泣いていた。
その様子を見た影乃は、かざりの頭を「よしよし」と撫でる。
いつもは、元気一杯のかざりが泣いている……だと?
しかも、顔を赤らめて……
……何というか……かざりが凄くかわいい……
コレがギャップ萌えってヤツか?
さて、次は影乃。
ちなみに、かざりはまだ顔を赤くしたままだ。
「……5」
影乃がコマを進めた先には、『保健室に行って、次の自分の番まで、誰かを看病してくる』という命令の書かれたマス。
「……保険……室……」
影乃の顔が青くなる。
何故? 決まっている。
「……確か、今、保健室には小研の部長が……」
鴎星も気づいたらしく、小さな声で呟く。
そう、彼女がいる。
影乃にとって、最も危険な相手。
それを、看病しなければならないのだ。
……恐らく、部長さんに、嫌だ、と申し出ても、突っぱねられるだろう。
影乃は渋々と歩を進める。
影乃の体は少し震えている。
そして、真っ青な顔のまま、影乃は部室を出て行ってしまった。
ちなみに遊戯部の部室は5階、保健室は1階にある。
~5分後~
『い、いやああっぁぁぁぁ』
『ああ! 影乃さん! わざわざ私を心配してくださるなんて!』
『ちょ! ドコ触ってるんですか! ……ひゃっ!』
『はぁはぁ、逃げないでください影乃さん!』
『ま、待ってくだs……だ、誰かあああぁぁぁぁぁぁ…………』
と、そんな声が何処からか聞こえてきた。
…………影乃、ガンバ!
さて、影乃のことは置いておこう。
1順目ラストの鴎星は6の目を出す。
「ここか……」
マスに書かれている内容は……『窓から飛び降りちゃいな!』
……………………え?
「……は?」
鴎星も唖然とする。
その一瞬が、鴎星にとって命取りとなってしまった………………
男3人が唖然とする中、素早く行動する人物が3人。
まず1人目、かざりが、鴎星の背後に位置する窓を開け放つ。
そして残り2人。
部長さんと雪奈センパイが、鴎星の腕を持つ。
ーーそして
そのまま窓の外にブン投げた。
「……………………え?……………………」
鴎星が、空中でそう漏らす。
そして次の瞬間には、落下が始まる。
「うわああああああぁぁぁぁぁぁ…………」
「「…………」」
オレと恭夜センパイは徐々に顔を青くしていき……
「「鴎星いいいいいいぃぃぃぃ!!!」」
ただそれだけを叫んだのだった。
「……さて、次行きましょうか」
しかし、落下した鴎星など、気にもせずに部長さんがそう言う。
「ふむ、そうだな」
部長さんに、雪奈センパイが賛同した。
その言葉に、待ったをかけようとして、振り向く。
そして気付く。
何故か2人とも目が据わっている。
……いや、2人だけではなく、かざりの目も同様だった。
……おかしい。
……今更ながら、オレはいくつかのことに気付く。
まず最初の異変は、かざりの時。
部長さん達があんなことを強制する訳がない。
というか、いつもだったら聞いた男子は全員殺される。
そして今の鴎星。
……まあ確かに男子は体を張ったネタが多い。
だが、必ず何かしらで安全を確保していたり、フォローしたりする。
まあ、何かの罰なら、それも無いときがあるけど……
だが、今のは罰でも何でも無かった。
コレは、おかしい……!
本能がそう告げる。
逃げたい……だが、自分だけでは何も出来ない……
そう思い、部屋を見渡した。
部室の中にいるのは、目の据わった部長さん、雪奈センパイ、かざり。
そして、オレと同じ思考を辿っているらしき恭夜センパイ。
さらに、和服を着た黒髪の少女。
ーーーって、え?
「お前誰だーーーーーーーーー!!!!!」
オレは和服の少女を指差してそう叫ぶ。
その叫びで、少女の存在に気付いたらしく、恭夜センパイも、驚きの声を上げた。
少女は、急に指を指されたので、驚いたように体を反応させる。
オレと恭夜センパイは少女に詰め寄る。
「……お前が何かしたのか……!」
恭夜センパイがそう言うと、少女は頷いた。
「暇だったから……」
「……というかお前、何者だ?」
オレの質問に少女は答える。
「この前、あなたに取り憑いた幽霊」
その答えに、オレと恭夜センパイは唖然とする。
なぜなら、この前とは、性格が全然違ったからである。
「悪意の部分を祓われちゃったから……」
……なるほど、つまり今はもう害のない霊ということか。
…………って、いや。
思いっきり被害出てるけどな!
「……てへっ」
コイツ……なかなかいい性格してやがる……!
「まぁ、とりあえず。双六、頑張って……」
そう言うと、姿を消してしまう。
だが、今はそんなことどうでもいい。
……地獄の双六が、再開されたのだから……
「ふふふ……私達は一回休みだから、恭夜君の番よ……」
部長さんが告げる。
オレと恭夜センパイは、消えてしまった幽霊に向かって叫ぶ。
「「お前、早く成仏しろおおおおおぉぉぉ」」
****************
翌日、一般生徒が、遊戯部の部室で倒れている、統輝、影乃、恭夜を発見した。
遊戯部の部室の中には、ダイイングメッセージらしきものが残されていた。
その内容は……
『誰か、お祓いをしてください』
というものだった。
ちなみに、鴎星は茂みの中に倒れていたため、発見されたのはさらに数時間後の事なんだが……どうでもいいか★
はい!いかがでしたか?
さてさて、先ほど言っていたちょっとしたお願いを。
前話、そして今回の話に登場した、小説研究部の部長。
彼女の名前を募集したいと思います!
感想に書く、もしくは私宛てにメッセージを送ってきてください!
素敵な名前、待ってます!
それではよろしくお願いします!




