第五話 ノベルパニック!
ある意味コレが第一話!
それでは、お楽しみください!
「よーし。遊ぶぞ!」
バーンと効果音が出そうな勢いで、センパイが言う。
そんなセンパイに、部長さんが、申し訳なさそうにストップをかける。
「……あー。ごめん!ユキちゃん……今日は、やらないといけないことがあるのよ」
「……やらないといけないことですか?」
部長さんの言葉に影乃が反応する。
「うん、小説を書かないといけないのよ……」
「むぅ…………なんでまた急に、小説なんか書かないといけないんだ?」
センパイがもっともな事を言う。
部長さんは、はぁ、とため息をついてから続ける。
「さっき小説研究部の部長に、『最近面白い作品が無いから、何か書いてください』って頼まれてねぇ……」
小説研究部の部長が、手をヒラヒラと振りながら、うちの部長さんに無理矢理、原稿用紙押し付けていく光景が目に浮かんでくる……。
……部長さん……苦労してるなぁ……
……と、そんなことよりも。
「……なんで、俺達なんですか……?」
鴎星が、オレの思ったことを代弁した。
「……なんか面白そうだから、ですって」
それを聞いたかざりは、
「……部長さん!たぶん、私達バカにされてると思います♪」
そんなことを言った。
だが、部長さんは疲れた顔をして、
「……気のせいよ……」
そう言うのであった。
**************
「……で?どんな話を書くんだ?千紗都」
机の上に原稿用紙を乗せ、恭夜センパイが聞く。
「……………………」
「…………千紗都?」
部長さんは急に黙り込んでしまった。
……まぁ、大体理由はわかるけど。
「ああ、つまり考えてない、と♪」
「……うっ……!!!」
かざりが言ったことが、図星だったようで、部長さんはオレ達から目を逸らす。
「ふむ、つまりチサはポンコツということか」
グサッ!!!
どこからか、ダメージを受けた音がしたが……気のせいだろう……(笑)
「いや~、部長さんって結構残念な人だったんですね~」
グサッ!グサッ!!!
オレがそう言うと、また何かが刺さる音がする(笑)
「かざりさん……統輝先輩が……」
「うん、ものすごく悪い顔してるねっ♪」
後ろで後輩達が何かを言っているが気にしないでおこう。
「「ホント、遊戯部の部長がこんなにダメだったとはなぁ」」
グサッ!グサッ!!グサッ!!!
オレとセンパイがそう言うと、部長さんは胸を押さえて泣き始める。
「……うう~…………ぐすっ…………」
……あー、ちょっとやり過ぎたかなぁ。
そんなことを思っていると、オレの後ろで、泣いている部長さんをケータイで撮りまくっている後輩の片割れ(影乃)が「というか、さっき頼まれたばかりなのに、内容を考えてある方がおかしいんですけどね……」と呟く。
…………うん、ごもっともだ。
というわけで、オレは部長さんを慰めることにした。
「……部長さん、大丈夫ですよ。オレ達は本気でそんなことを思っている訳ではないので」
オレがそう言うと、部長さんは、涙目+上目遣いでオレを見て言う。
「……ホント?……」
……ナニコレ、超かわいい!
マジですげえよこの先輩……やっべえ惚れそう!
と、バカなことを思っていると、後ろから、誰かに殴られる。
オレが頭をおさえながら振り向くと恭夜センパイが犯人だと言うことがわかった。
「……スマン、統輝。無性にムカついた」
「痛いですよ……恭夜センパイ……」
そう言いながら、部長さんに目をやると……
「ニヤリ)……はっ!…………どうしたの?統輝君?(キリッ」
ちくしょう!今、完全に笑ってたよ!
全部計算だったのかよ!!
不意に肩をポンッと叩かれたので振り向くと、鴎星が、
「……俺達じゃあ部長さんには……勝てねぇよ……」
遠い目をしながらそう言った。
オレは、心からその言葉に同意したのだった。
**************
「ということで、リレー小説をしてみよう!」
またもや、バーンと効果音が出そうな勢いで、センパイが言う。
「ということでって、どういうことでしょう……」
「かげのん。細かいことを気にしちゃだめだよ」
「そうだぜ影乃。実際、オレ達は何も話し合ったりしていないけどな……あくまで、その話し合いが、カットされただけ、という風に振る舞うんだ!」
「……そこ三人!メタ発言をしない!」
一年生コンビと、鴎星が、部長さんに注意を受ける。
「まあ、面白そうだから良いんじゃないか?」
恭夜センパイは乗り気のようだ。
他のメンバーも、『まあ、いいか』と言った雰囲気だ。
それを見たセンパイは、
「よし!決まりだな!」
と言った。
「ユキちゃん……でも順番はどうするの?」
部長さんが聞くと、少し考えてから口を開いた。
「ふむ……まぁ、普通にくじ引きだろう」
***************
ということで、順番。
一番、恭夜センパイ。二番、雪奈センパイ。三番、部長さん。四番、かざり。五番、鴎星。六番、オレ。ラスト、影乃。
に、決定。
「……俺からだな」
そう言って、恭夜センパイは机に向かう。
「……なあ、鴎星」
「……なんだ、統輝」
「なんか……いきなり不安なんだが」
「奇遇だな、俺もそう思ってたぜ」
~五分後~
「よし!出来た!」
オレ達が不安を抱えたまま五分ほど経過したところで、恭夜センパイがそう言って伸びをした。
「うん、なかなかいい出来だ!」
そう言って、目を子供のように輝かせながら、原稿用紙をオレ達に見せてくる。
「「「「「「……どれどれ……」」」」」」
*************
ここは、とある王国の城の中である。
さらに詳しく言うと、その城の、玉座の間である。
その、玉座の間の中で、王座に座る者、つまり王。そしてその前で跪いている者がいる。
今、跪いている者は、魔王とその手下を倒すために旅に出る、勇者なのだ!
「勇者よ。必ずや、魔王を打ち倒し、この世界に平和を取り戻すのじゃ!」
王が、勇者に渇を入れる。
「はい!この、コーダ・ヘミルズ。身を賭して、彼の者を倒して参ります!」
「そうか。ならば、もう行けい!……そなたの旅路に幸あれ」
こうして、勇者は魔王討伐の旅に出たのであった。
*************
「……何というか……ベタですね……」
「しかも、短い」
影乃が真っ先に、感想を言い、その後に鴎星が続いた。
二人の意見に全員が同意し、オレ達はコクコクと頷く。
「まあ、確かにベタではあるけど、話の展開は楽じゃないかしら?」
部長さんの意見は最もだ。
……だが、次はセンパイの番だ……
つまり、何が起こるか分からない……!
ほぼ確実に変化球を投げてくるはずなのだ。
「ふむ、それでは書くとするか」
そう言って、センパイは執筆を始めた。
~十分後~
「書き終えたぞ」
どうやら、なかなか自信があるようで、どこか自慢気に原稿用紙を渡してくる。
……読むか……
****************
そんなこんなで、勇者は首都の隣町にたどり着いていた。
「へえ、のんびりとした町だなぁ」
そんなことを言いながら、勇者は一つの家に目を付けた。
勇者はその家の扉を勢いよく開けて、家の中に上がり込む。
そして、部屋の隅に置いてある、タンスを漁り、いくらかの金を持ち去っていく。
*************
「「「「「「「表現に悪意しか感じられない!」」」」」」
「む?なにがだ?」
センパイはオレ達の反応に首を傾げた。
「雪奈!なんか、表現がいちいち悪事を行っている風になってるぞ!」
恭夜センパイの言うことに、やはり首を傾げたセンパイは、
「……いや。実際ゲームとかだとこんな感じだろ?」
「そうだけど!実際そうなんだけど!……でも表現がおかしいんだよ!」
センパイは不服そうな顔をしながらも引き下がったため、とりあえずこの場は落ち着いたのだった。
後ろで影乃が「……まずこの描写要らないと思います……」と言っているのに心から同意しつつ、オレは続きを読み始める。
*************
先ほどの家を出た後、しばらく歩くと武器屋があったので、取りあえず立ち寄る。
店の中には、魔王を殺すのに、とても役立ちそうなモノがいくつもおいてあった。
魔王を斬り殺すための武器。突き殺すための武器。殴り殺すための武器。など、かなりの品揃えであった。
*************
「「「「「「だから表現に悪意しか感じられないって!」」」」」」
先ほどよりも大きな声で叫ぶ。
……うん、おかしい。
普通に、剣、槍、斧って言えばいいのに、わざわざおかしな表現をしてる……
「……続きを読みましょう……」
部長さんがそう言うと、全員が原稿用紙に目を戻した。
*************
「……あ。エクスカリバー売ってるじゃん。ラッキー、コレ買おう」
*************
「「「「「「なんでだよっ!!!!!!」」」」」」
伝説の剣が普通の店に売ってるってどういうことだよ!?
……ま、まあ、どうせ値段が高すぎて買えないんだr……『……はい、エクスカリバーのご購入ですね?こちらの商品は、三千九百八十円になります』……って、安い!!さんきゅっぱ!?伝説の剣なのにそんなに安くてもいいのかよ!?
「……いきなり伝説の剣を装備してる勇者って……」
影乃がそう呟いた。
……最初から最強装備……敵モンスター涙目ww
……まあ、楽しくはない、な……
「……って、あれ?これで終わり?」
部長さんがそのことに気付いた。
……マジでこれで終わってる。中途半端な……
「うむ、ここからどうやって話を進めるかは……チサ、お前次第だ……!」
センパイがドヤ顔でそう言うと、部長さんは、それをスルーして机に向かう。
「………………(泣)」
「ありゃ?…………音も無く泣き始めましたねっ♪」
「……放っておいてあげてください」
……センパイはスルーされるのが一番苦手です。
~五分後~
「出来たわ」
部長さんは伸びをしながら、そう言い、原稿用紙を渡してくる。
オレ達はそれを読み始めた。
……まあ、部長さんなら安心かな。
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……というマンガを読んだのだが、とても続きが気になる今日この頃。
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「「「「「「まさかの急展開!?」」」」」」
部長さんは、オレ達のそんな反応を見て、満足そうに笑っている。
「……まさか、こんな壊し方があるとは……」
何故かセンパイは悔しがっている。
……続きを読もう……
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……とでも言うと思った?
残念でした!魔王倒しちゃいました!端折っちゃいました!エクスカリバーで切ったら、一撃で死んじゃいました!
ということで、書くこともうありませーん!
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「「「「「「まさかの急展開!?(さっきとは違う意味で)」」」」」」
おったまげたぁ……部長さんがここまで、抉り込んでくるとは……。
「……じゃ、続きお願いねぇ♪かざりさん♪」
「………………」
この状況で振られたかざりは涙目になりながら、しばらく考え、原稿用紙に一文字だけ書き込んだ。
「…………(グッ」
そして、残りのメンバーに向かって、親指を上に突き立てる。
オレ達は、かざりの書いた文字を見て、彼女の伝えたい事を理解した。
オレ達は、彼女と同じように、一文字ずつ、原稿用紙に書き込んだ。
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終 わ り 。
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「「「「「「「……………………」」」」」」」
出来上がった作品を見て、オレ達は、こう思った。
「「「「「「「全然ダメじゃん!!」」」」」」」
「短い!!短すぎですよっ♪」
「……というかそれ以前に、内容がダメダメですよ!」
一年生コンビが全員の言葉を代弁した。
「……これは、不味いわねぇ」
「……どうする……みんな」
恭夜センパイがそう聞くと、全員が黙り込んでしまう。
その沈黙が、しばらく続いた後、部長さんが口を開いた。
「……取りあえず、今日、みんな家で書いてきて、一番良かったのを小研に渡しましょう」
ちなみに、小研とは、小説研究部の略である。
「そうするか」
恭夜さんが頷いた後、他の面々も続く。
「それじゃ、今日は解散!」
部長さんの一言で、この日はお開きとなったのだった。
**************
「……まずいですね。遅れてしまったようです……」
翌日、私、涼村影乃は急いで部室に向かっていた。
……もう全員がとっくに集まってる時間ですね……
私は、スピードを上げる。
しばらくすると、部室のドアが見えた。
私は、そのドアを勢いよく開け、遅れたことを謝ろうとする。
「すいません!遅れまs」
だが、その言葉を言い切る前に、すごい勢いでみんなが私に近付いて来て、こう言った。
「「「「「「最後の希望よ!やっと来たか!!」」」」」」
どうしたんでしょう。……まあ、大体予想はつきますが……。
次の瞬間、全員が私に土下座した。
「「「「「「私達全員、まともに書くことが出来ませんでした!」」」」」」
……予想通りすぎですね……
そんな先輩+友人一人を見て、私は一つため息をつく。
そして、私は口を開いた。
「私も書けてません」
私は絶望の音を聞いた。
「「「「「「そんんなああああああっっっっっっっっ!!!」」」」」」
……面白いですね。コレ。
まあ、可哀想なのでホントのことを言いますか……
私は鞄から、原稿用紙の束を取り出して、先輩達にそれを掲げる。
「先輩達。コレを見てください」
私がそう言うと、全員の視線が、原稿用紙に集まった。
「そ……それは、まさか……」
「そうです。私の……作品です」
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」
先輩達は、もう一度私に土下座して、こう言った。
「「「「「「影乃様、本当にありがとうございます」」」」」」
……本当に楽しくなってきた……
「……取りあえず、読んでみていいか?」
統輝先輩の問いに、私は頷く。
それを見た統輝先輩は、私の作品を読み始める。
そして、しばらくして、統輝先輩が原稿用紙を机に置いた。
「………………(号泣」
「「「「「なんで泣いてんの……」」」」」
先輩達は、全員でツッコんだ。
統輝先輩は無言で部長さんに、原稿用紙を手渡した。
「……読めって事かしら……」
そう呟いてから、部長さんも読み始めた。
その後……
「ええ話どすぇ……(号泣」
「「「「急にどうした!」」」」
部長さんは何故か舞子さんの訛りになったのだった。
「「「「そこまで、泣くほどな訳が無いだろう……」」」」
そう言って、残りの四人が読み始める。
やはり……
「「「「……ええ話でゴンす(号泣」」」」
全員語尾がおかしくなっていた。
……私、そんなに文才あったんですね……
そんなことを思っていると急に部室のドアが開き、誰かが中に入ってきた。
「……えーっと、どちら様でしょうか……」
私は、部室に入ってきた女生徒にたずねる。
「私は、小研の部長です!」
そう答えると、机の上に置いてある、原稿用紙を手にとる。
「私の、面白い作品を見つけるためのセンサーにビビっと来たの……」
そう言って、私の作品を、ものすごいスピードで読み終えた。
……というか、どんなセンサーですか……。
「…………(満足気な笑み」
……本当に文才あったんですね、私。
などと思っていると、小研の部長は口を開く。
「……この作品を書いたのはあなた?」
そう質問されたので、私は、コクンと頷いた。
すると、彼女は急に私の手を引いて、どこかに向かおうとする。
「……え、ちょ、どこに行くんですか……?」
「もちろん、小研の部室です。あなたには才能がある!私と共に目指しましょう!芥川賞を!」
「……いやいやいや!無理ですよ!」
「そんなことありません!……というかあなたに惚れました!付き合ってください!」
「何を言ってるんですか!!私もあなたも女ですよ!!」
「私はレズです!」
「知りませんよ!何をぶっちゃけてるんですか!惚れるにしても、作品に惚れるだけで勘弁してください!」
「ええい!ゴタゴタ言わないでください!早く、部室で私と愛し合いましょう!」
「芥川賞はどうしたんですか!」
「もちろん忘れてません!ですが、それは愛し合ってからですよ」
「この学校で部長、委員長やってる人はほとんど変人だって事忘れてましたよ!……というかあなたは数少ないマトモな人だと………………って、ちょ、ホントにやめ……!……ちょ、先輩……!助けt……」
「「「「「「……ええ話どすぇ……(号泣」」」」」」
「まだやってたんですか!!!っちょ、ま……!」
「はぁはぁ……はぁ……はぁ」
「や、やだ……襲われるぅぅぅぅぅ」
「はぁはぁ……はぁはぁ……大丈夫……すぐ気持ちよくなりますから……」
「いやあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
学園中に、哀れな叫び声が響いたのでした……
いかがでしたか?
かげのんは今のところ常識人なポジションですよ!
小研の部長は書いてて楽しかったです(笑)
それではそれではまた次回~!
影乃「……ぐすっ……なんでこんな目に……」




