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第三話 三年生達の忙しい一日+α

更新が遅れてしまいました……

スイマセンでした…………

「う~ん……今日は三年生だけしか来れないみたいねぇ」

廊下を歩く女子生徒が呟く。

少しウェーブのかかった、長く、品のいい茶色の髪。そして、どことなく落ち着いた雰囲気の彼女は、遊戯部の部長、ひいらぎ 千紗都ちさとである。

「なんだ……つまらないな」

千紗都の呟きに、隣を歩く男子生徒が答えた。

整った顔立ちで、長身。彼は遊戯部の一員、真嶋まじま 恭夜きょうやである。

「そうねぇ……。あ、恭夜君は静かにマンガでも読んでおいてね。」

「……その厄介者を見る目はやめろ!」

「あなたの考える事は、大抵ろくでもないからねぇ」

そういって彼女はため息をつく。

「失礼な。俺は楽しい事をしているだけだ」

「確かに、楽しいわよ?楽しいけど、その後の始末が大変なのよ……」

「そこには目を瞑ってくれ」

「ええ~……」

そんなことを言っている間に、二人は部室の前にたどり着いた。

千紗都は部室のドアを開ける。


「……あ」


**************


「……あ」


私、柊 千紗都がドアを開けると、私がよく知っている人物のそんな声が聞こえた。

そして、私の目に飛び込んで来たものは…………


「…………」


……バシャン!……


なかなかに衝撃的であったため、私はドアを閉めてしまう。

「……ねぇ、恭夜君。私、幻覚が見えたのだけれど」

「ああ、奇遇だな。オレもだ……」

私と恭夜君は顔を見合わせる。

「「………………」」

しばらく見つめあった後、私は口を開いた。

「……開けましょう……」

「……ああ」

恭夜君の返事を聞き、私は深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

……よし!

私は覚悟を決め、勢いよくドアを開け……


……ガララッ!……


「「…………」」


…………バシャン!…………


……すぐに閉めた。

「……疲れてるのかしら……」

目頭を押さえながら私は呟く。

「そう……思いたい……」

私は、隣で私と同じように目頭を押さえている恭夜君と、同時に深いため息をついた。


そして、私達はしばらく無言で考えた後、一つの結論を出した。


「「……帰ろう……」」


見事に行動をシンクロさせながら、私達が部室を離れようとした


……その時


「……いやいや!!!!ベタなボケしておいてそれは無いだろう!!!!!!!」

部室の中からこの部の副部長が飛び出してきて、

「……はぁ……」

私はもう一度、深いため息をつくのだった……


***********

「それで、どうしてこうなったのかしら?ユキちゃん?」

私はユキちゃんこと黒崎雪奈に問いかけた。

現在、部室の中の状態はとてつもなく散らかっている。……いや、散らかっているなんてレベルではない。なんと言うか、こう、部屋の中を嵐が通り過ぎたみたいな、そんな状態である。

「チサ、ユキちゃんと呼ばないでくれ……それでだなぁ」

そういってユキちゃんは説明を始める。

…………なるほどねぇ。

「つまり、そこにある扉からミシミシと音がするから、近づいてみたら、扉の奥からいろいろ溢れてきた、と」

「何度も言うが私に責任は無いからな!」

ユキちゃんは必死に訴える。

……まあ、ユキちゃんもいろいろやらかすけど、結構几帳面だし、部屋を散らかしたりはしないからねぇ。……というか、むしろきれい好きだし。

「……まあ責任がどうこうと言うより、とりあえず片付けないとねぇ。」

そう言って私は部屋を見渡した。

「なぁ、雪奈、千紗都……」

すると、今まで黙っていた恭夜君が口を開いた。

「何かしら?恭夜君」

私が返事をすると、恭夜君は一拍間を空けてから、こう言った。



「パッと見るだけでも、散らかっているものが異常すぎるだろ!!!!!!」



「「うん!それ、私も言おうと思ってた!!!」

私とユキちゃんは、恭夜君の言葉に、心から賛同した。

そう、散らかっているのがゴミならばまだ良かったのだ。

しかし、そんなやさしいものではなかった。

「訳がわから無いぞ……!何でランドセルが何個も落ちてるんだ!ここは高校だぞ!!」

「うむ……コレなんか見ろ!信号機だぞ!!どこから持ってきたんだ!」

「こっちには『娘は預かった。返して欲しくば30円と、逃走用の自転車を用意しろ』っていう誘拐犯の脅迫状があるわよ!?というか要求した金額安すぎるわよ!!それに自転車って何よ!?すぐに捕まっちゃうじゃない!?」

三人そろって、落ちているものにツッコんだ。

 なによこれ絶対ツッコミ待ちでしょ。

「はぁ……とりあえず片付けましょう……」

「うむ、そうするか……」

「……だな」

私がそう言うと、それぞれが動き始める。

「「「…………」」」

 えーっと……鉛筆は使えるわねぇ。貰っておきましょう。

あら、トランプは遊戯部で使えるかも。

……ライター。危ないわねぇ。

…………鉄パイプ。何に使ったのかしら?

…………………メリケンサック…………………あれ?

……釘バット…………………………………血まみれの鉄パイプ…………………………



「「「なんか、手に取る度におかしなものが出てくる!!!!?」」」



私達三人は全く同時に、同じツッコミを入れた。

「なんなのよ!鉄パイプが血まみれなんだけど!!?なんかマズい気がしてきたよ!!!!!」

「チサ!こっちには、猿ぐつわと鞭、それに蝋燭まで出てきたんだが!!!訳がわからない!!!!」

「おいおい……!俺の所には拳銃だぞ!!なんか犯罪臭がするぞ!!!?」

なんともコメントのし辛いものが続々と登場する。

「……と、とりあえず早く終わらせましょ!」

私は近くにあった台に片足をドンッと乗せ、そう言った。

そして二人の方を見ると、

「「……………………(ガクガク)」」

何故か二人は、青い顔をして激しく震えていた。

その様子に私は頭に疑問符を浮かべる。

「……?どうしたの?二人とも」

私の疑問に、

「…………チサ……下…………」

ユキちゃんが、私の足下を指差す。

私がユキちゃんの指の指し示す場所に目を向けると、そこにはーーー



ーーー血痕の付いた棺桶が横たわっていた。



「「「……………………」」」

場を沈黙が包む。

状況を理解した私の額からは、大粒の汗が滝のように吹き出し、体の芯から冷えていくような感覚に襲われ、体も激しく震え始める。

「「「……い」」」



「「「いやああああああああああぁぁぁぁぁぁ」」」



三人の絶叫が部屋中に響き渡る。

私達は部屋の端に固まり、体を縮こまらせる。

「確実に鉄パイプで殴られてるわよ!!!!」

「確実に猿ぐつわ噛まされて、ろうを垂らされた上、鞭で拷問されてるだろう!!!!!!」

「確実に銃でトドメをさされてるぞ!!!!!!!!!!!」

そうコメントをした私達は、今、心の底から思っていることを全力で叫ぶ。


「「「もういやだあああああああぁぁぁ」」」



***************

「……とりあえず、棺桶はどうにか出来たわね」

私はげっそりとした表情で呟く。

「うむ……」

「ああ……」

その呟きに、同じくげっそりとした二人が返事をする。

「……ホントに早く終わらせて帰りましょう……」

私の言葉に二人は頷き、続きを始める。

それから数分間、黙々と作業を進めていると、恭夜君が鼻歌を歌い始めた。

……まぁ、掃除中に歌いたくなるのはわかるわねぇ。……BGMにちょうど良いわね。

「~~~♪~~~♪」

というか、このしんみりとした曲調にこのメロディーは……



津軽○峡冬景色!?



選曲おかしいでしょ!普通こういう時は軽快な曲調のものを選ぶでしょー!!あと、今はどうでも良いことだけど、あなた演歌知ってたのね!てっきり、ロックとかアニソンばっかりだと思ってたわ!

「~~~♪~~~♪」

……あら、心の中でツッコミまくってる間に曲が変わった。

……うん、今度はちゃんと、掃除中に合った軽快な曲ね……でもこれ……



サ○エさんのオープニングじゃない!?



確かに軽快よ!軽快なんだけどね!?もうちょっと別の曲あったんじゃないかなぁ!!?

ツッコミたい……!思いっきりツッコミたいよ……!!

でもここでツッコんだら、また作業が中断されちゃう……!

……そうだ、ユキちゃんはこの状況をどうするつもりなのかしら……?

「…………(ウズウズ」

ものすごく我慢してる!!!うん、だよね!ツッコミたいよねぇ!!!!

あ~、もうなんなのよ!ボケてるのか素なのか分っかんないわ!!!

私は心の中で激しく葛藤する。

「~~~♪~~~♪」

そんな中、恭夜君の鼻歌が、また曲を変える。

……いやー、予想外ねぇ

まさか……



ベートーベンの『交響曲第九番』が来るとはねぇ!



「「さっきから選曲がおかしいよ!!!!」

とうとう我慢出来なくなった私とユキちゃんは全力でツッコミを入れる。

「何で津軽海峡冬○色なのよ!!?暗いよ!!暗すぎるわよ!!!!!」

「だが次のサザ○さんのオープニングはおかしいだろう!!正直耳を疑ったぞ!!!」

「そして、何故この状況の中に第九を放り込んだのよ!!?完全にカオスよ!!!?」

あまりにも全力でツッコミすぎて私達はゼェゼェと息を切らす。

「いやいやいや!何を歌おうと俺の勝手だろ!」

恭夜君はそう反論した。

「そうよ!そうなんだけれどねぇ!私達がこの場に居ることも考慮してくれないかなぁ!!!!」

私がそう言い返す。

「はいはい……わかったよ」

少々不満そうにしながらも彼は理解してくれたようだ。

そんなやりとりの後も作業は続いていく。

しばらくすると、恭夜君はまた鼻歌を始める。

「~~♪~~♪」

アハハハハ……



もの○け姫!?



「「もう歌わないでーーーーー!!!!」」


*************

「さて……色々あったけれど、あとはこの鞄一つね……」

「ああ……色々あったな……」

「うむ……本当に、色々あった……」

私達は遠い目をしながら呟く。

「本当に……恭夜君が急に笑い出して止まらなくなったりねぇ……」

「他にも、雪奈が急に暴れ出したり……」

「チサが急に謎の呪文を唱えはじめたり……」

……本当に、色々あったなぁ……

……あら?思い出してたら、目から汗が……

「ぐすっ……けど……これで、この鞄で最後よ!」

私は、目から滝のように流れ落ちる汗を拭いながらそう言った。

「うむ……私達はここまで頑張って来たんだ!……もう、終わらせよう」

ユキちゃんの言葉に、私と恭夜君は頷く。

「よし!じゃあ、この鞄を『せーの』で開けるぞ!」

そう言って鞄に手をかけた恭夜君の提案に、無言で頷き返した私とユキちゃんは、恭夜君と同じように鞄に手をかけた。


「「「せーの!!」」」


パカッ→大量の日本人形


パカッ


私達三人は鞄の中身を見た瞬間に再び鞄を閉めることを選択した。

「「「…………」」」

私達は無言で鞄を睨み続ける。

そして三人同時に互いの顔を見合わせる。


「「「…………せーの!!!」」」


パカッ→ギッシリと詰め込まれた日本人形


「「「ひいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!」」」


私達は大音量の悲鳴をあげる。

「俺の笑いも、雪奈の暴走も、千紗都の呪文も、確実にコイツが元凶だろっ!!!!」

恭夜君が叫ぶ!

「そ、そ、そんな事よりも、こ、コレどうするのよ!?…………って、え?ユキちゃん……?」

ユキちゃんは私と恭夜君が慌てている中、先ほど私が回収しておいたライターを手に取った。そしてそのまま鞄に近付いていき、鞄の前にしゃがみこむ。ユキちゃんは、その手に持ったライターを鞄に近付けていき、そのままーー


カチッ。……ボウッ!!!

メラメラメラメラメラメラメラメラメラメラ。


鞄に火をつけた。

「「やっぱりかっ!!!」」

ライターを手に取った時点で私と恭夜君は、ユキちゃんのしようとしている事を、なんとなく予想していた。

そんな私達の叫びに対し、ユキちゃんは、

「いや……コレしか無いかなー、と」

そう言いながらこちらに戻ってくる。

いや、今はユキちゃんの言動はどうでもいい。

なぜなら……



『ギィヤアアアアァァァァ……コロス。ニンゲンドモメェゼッタイニコロスゾォ……』



「「「何か喋ってるううううううぅぅぅぅ!!?」

私達が怯えている間に、鞄と日本人形は燃え尽きた。


「「「………………」」」


場に長い沈黙が降りる。

しかし私は、いつまでもこうしている訳にはいかないと思い、沈黙を破る。

「と、とりあえず……一件落着?かな?」

「……うむ」

「終わり……だな」

そこまで言った所で私達の緊張の糸が切れる。

私達は、盛大にため息をついて、その場に座り込む。

「ああ~……何か異常に疲れたわねぇ……」

私がそう呟く。

「うむ……って、うわ……もう八時回ってる……」

その言葉を聞いた恭夜君は窓の外を見る。

「うわ……外、真っ暗だぞ……」

私はもう一度ため息をついてから、こう言った。

「早く……帰りましょ」

「だな」

こうして、私達三年生だけの一日は終わりを迎えた。



「「「本当に……疲れた……」」」



**************

「それにしても、昨日は大変だったわねぇ」

「うむ……」

「ああー……今日はゆっくりしたいな」

遊戯部の部室に向かいながらそんな話をする。

「そうねぇ。お茶でも飲んで和みましょ」

私がそう言うのと同時に、部室の前にたどり着く。

そして、私がドアを開けると、中には統輝君がいた。

「よぉ!統輝、今日は早いな!」

恭夜君が統輝君に話しかける。

「…………」

しかし、何故か統輝君は反応を示さなかった。

それを訝しんだ恭夜君がもう一度彼に話しかけたが、やはり反応がない。

「統輝君……?」

流石にユキちゃんも、コレはおかしく思ったらしく、統輝君の名前を呼ぶ。

だが、やはり反応は無い。

そして、私も彼に話しかけようとした、その時だった。

統輝君がゆっくりとこちらを振り向いたのだ。

そして彼は言葉を発した。

『ニンゲンドモ……キノウハヨクモヤッテクレタナ……!カクゴセヨ、ワレガキサマラヲコロシテクレルワ!!!』




ーーーーーーえ?




『キシャアッッッッッ!!!』

統輝君(仮)がそう叫びながら、恭夜君に殴りかかる。

「うわっ!!危ねえ!!!」

恭夜君はなんとか統輝君(仮)の攻撃の回避に成功する。

『コロス……コロス……コロス……』

私とユキちゃんはそんなやりとりを、少し離れて見守っている。

そしてユキちゃんは恭夜君と統輝君(仮)の攻防を見ながら、私に話しかける。

「なぁ……チサ。コレ、昨日の人形が……」

ユキちゃんはそこで言葉を止める。

彼女の言いたい事を理解した私は首肯しながら返答する。

「うん……たぶん、取り憑いてるわねぇ」

「……というかだなぁ!!」

そんなやりとりを聞いていたらしく遠くからそう言ってくる。

その言葉の続きを、三人同時にこう叫んだ。



「「「もう、ゆっっくりさせてええええぇぇっっっっ!!!!!」」」




結局、その日、統輝君に取り憑いたものを祓うのに、数時間を要した……。



………………明日はのんびりできるといいなぁ。

本当は3000字程度にするつもりが、倍になってしまいました。

自分の予想以上にキャラが動いてくれましたね!


それでは、次回予告的なものを一つ。


さて、次回は皆さんの予想通り、遊戯部の一年生達と、もう一人の男子生徒が登場します。

ただ、次回はギャグは少なくなるかもしれません……。

ちょっとした説明とかが入ってくるのと、あと何というか作者的にちょっと絡ませにくいんですよねぇ……。


それでは今回はここまでです!

また次回~♪

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