二十九話 女子会もとい女子回
前話の続きというか、女子達のお話
「さーって! 前回出番が無かった分、はしゃぐぞ!」
「いきなりメタですか」
「トバしますね☆」
雪奈先輩が、バーンという効果音と共に叫ぶと、即座にかげとかざりちゃんのツッコミが入る。
流石私の妹。素早いツッコミだよー。
……というか雪奈先輩、効果音が実際に鳴っているってどゆこと?
「まあ、私だからな」
えー……何故か納得できる不思議。
流石としか言いようがないよ。
「で、今更ですけど、何で恭夜先輩達を置いてきたんですか?」
文深ちゃんが苦笑しながら問いかける。
「ああ……実はな」
雪奈先輩がそう前置きをおく。
その表情は先程までと違い、どこか憂いを帯びたようだった。
文深ちゃんは、その表情を見て少し身構える。
雪奈先輩は、一つ息を吐いてから口を開いた。
「……普通に忘れてた」
沈黙。
「あ、ああー……」
文深ちゃんは再び苦笑し、曖昧に返事をするだけだった。
たまにヒドいよね。雪奈先輩。
「まあ、それは忘れて……ボーリングよ!」
千紗都先輩が若干のどや顔をしながら宣言する。
流石に雪奈先輩みたいに効果音は出ない。
それはともかく、ボーリングだよー。
「ふむ。ちなみに負けた人には罰ゲームだ」
絶対に負けられないね。うん。
とりあえず人数が多いので、二レーンを使うけど……
一レーン
かざりちゃん・かげ・文深ちゃん・私
二レーン
雪奈先輩・千紗都先輩・瑠璃先輩・姫ちゃん
という振り分けだよー。
なんか嫌な予感がするけど……だいじょぶ!
さあ、早速行こう!
「説明口調すぎですよ」
「瑠璃先輩。スルーしてください」
**********
一巡目・一番手
「かざりん、期待してるでー!」
文深ちゃんがそう声をかける。
かざりちゃんは笑顔で親指をグッと上に突き立ててから、投球モーションに入っていく。
「やあっ!」
かざりちゃんの投げたボールは少し中心から逸れていく。
快音。
残りのピンの数を確認すると……
「三本かー☆」
あー……一本だけ離れてるのが痛いかなぁ。
そんな事を考えていると、隣のレーンで雪奈先輩が投球した。
「ふむ」
ストライク。
雪奈先輩は満足げな笑みを浮かべている。
あの人が強いのは分かってたことだよ。うん。
さて、それはともかく、かざりちゃんの二投目。
「……よっ☆」
案の定離れた一本が残ってしまった。
……九本。
十分な出だしかなー。
一巡目・二番手
さて、次は千紗都先輩とかげ、か。
まあ、かげは……
「三本→三本で計六本です……」
そんなに運動神経良くないからねー。
罰ゲーム候補筆頭かな。
問題は千紗都先輩なんだけど……
「ほっ!」
私が視線を向けると、ちょうど二回目の投球だ。
千紗都先輩は、つい見とれてしまうほどに鮮やかな動作で、ボールをピンに向けて放つ。
指先から離れたボールは、少しずつ左へカーブしていき、一つだけ立っているピンを見事に弾き飛ばした。
雪奈先輩のせいで霞んでるけど、千紗都先輩もかなり運動神経が良いんだよねー。
いや、というか瑠璃先輩も姫ちゃんもかなりのものだから……正直罰ゲーム候補はこっちのレーンの誰かなんだよー……
……ん? 私と姫ちゃんはボーリングしたことあるのか?
もちろんあるよー。
姫ちゃんは瑠璃先輩に、私は統輝と鴎星に連れていかれたのが最初だったけどね。
ふっふっふ……これでも私、お嬢様なんだよー。
「お姉ちゃん、さっきから誰に喋ってるの?」
「画面の前のみんなだよー」
「『みんな』って言うほどコレ読んでくれてる人いないけどね」
「かげのん……それは言ったらアカン……」
なんか涙出てきたよー……
一巡目・三番手
「やったるでー!」
文深ちゃんが威勢の良い声と共にボールを持ち、構える。
「どりゃあ!」
そんな叫び声をあげ、文深ちゃんはボールを投げる。
……おお、良いコースn……
『う、うわー! 空調が壊れてボールのコースをちょうど変えてしまうくらいの突風が急にー!?』
ピュー……ガコッ!←ボールがガーターに
「…………」
『…………』←全員必死に笑いをこらえている
何ともいえない沈黙。
「笑いたきゃ笑えばええやろーーーーがーーーーー!!」
「ふーちゃん落ち着いてっ☆ ……ぷふっ」
暴れる文深ちゃんをかざりちゃんとかげが取り押さえている。
『関西人はいっつもこういう役回りなんかああああ!!』って叫びは、なんか、たぶん、文深ちゃんの心からの叫びだった。
~五分後~
「と、とりあえずもう一球なげましょう。ね?」
「うん……」
さて、落ち着いた文深ちゃんが再び投球モーションに入り……投げた。
お、今回もいいかんz……
『しまったー! 手が滑って他のレーンに投げちゃったー!?』
ガンッ……ガコッ←ボールとボールがぶつかってガーターへ
「…………」
『…………』
「かげのおおおおん! 私は関西人をやめるぞおおおおおお!!」
「辞められませんから! あとそのネタ危険!」
大分遠くのレーンから斜めに突き抜いてピンポイントで文深ちゃんのボールに……
まさにその血の運命……
「ちなみに詩乃先輩はアニメから? 原作から?」
「アニメからのにわかだよ」
あの作品好きな人はゴメンナサイ。てへぺろー。
……原作買おうかな。
「八本ですね」
「そこそこねぇ」
地味に瑠璃先輩が投げ終わってた。
まあ、完全に文深ちゃんが持って行ったからねー。
一巡目・四番手
「よし、いっくよー!」
私はそのかけ声に続き、ボールを力強く投げる。
なかなかの好感触。
私が投げたボールは、大体狙い通りの位置に転がっていったが……
「……八本!」
少し逸れていたようで、ストライクとは行かなかった。
くそう……
そうだ、隣の姫ちゃんは……
「「…………」」
八本。
…………
「姫ちゃんと光坂さんの間で火花が……」
「まあ、ね?」
瑠璃先輩と千紗都先輩が何かを言っているが気にしない。
負けられない戦いが……そこにある……!
「「はぁ!」」
行け!
心の中で叫ぶ。
その数秒後、二つの快音が響く。
くぅ……姫ちゃんもスペア……
差を付けられなかったね。
次こそは……!
「ふむ。いい感じに熱くなってきたな」
「ああ……光坂さんの方を見ながら、悔しそうにちょっとだけ唇を尖らせる姫ちゃん可愛い……♡」
「瑠璃、鼻血」
三巡目・一番手
「ふむ。そろそろ準備運動も終わりだな」
「へ?」
雪奈先輩の呟きに、隣に立つかざりちゃんが呆けた声を漏らす。
え、準備運動? どういうこと?
私達がポカンとしていると、雪奈先輩が投球モーションに入る。
すると、腕を引いた後、ボールがかなり高い位置で動きをピタリと止める。
「……!?」
ボールの周りに何かが集まっていくのが分かる。
……こう、オーラみたいな気みたいな何か。
それが充分に溜まったところで、雪奈先輩は少し目を見開き、ピンへと向かい、その一球を投げつける。
「はあっ!」
高速で飛んでいくボールがピンにぶつかると、もの凄い音をあげる。
えー……
私を含め、一レーン組は呆然としながらそれを眺めていた。
そんなのアリなのかなー……
「うむ。ストライクだな」
満足気に雪奈先輩が呟いている。
よーし私。順応しないと。
この程度で驚いてたら保たないよ、私。
……感覚って、こういう風にマヒしていくのかな。
「ふう☆」
って、あれ。地味にかざりちゃんが投げ終わってた。
流石遊戯部。適応が早いよ。
全然自慢にならないけどね。
三巡目・二番手
まあ、千紗都先輩は常識人だから大丈夫だと思うけど……
あれ。これフラグ?
さあ、注目の千紗都先輩の投球。
「…………はぁぁぁ!」
『おおーっと! 千紗都選手が動きました! あの構え、どう見ます? 解説の田中君!』
『はい、実況の山田さん! あれは、腕を捻ることにより風を纏った一撃……エア・シュート!』
解説来ちゃったよー……
どこから出てきたんだろ?
「お姉ちゃん。現実から目を逸らしちゃだめだよ」
「……かげ、遊戯部で良く生き延びれたね」
「慣れって怖いよね」
姉妹二人でどこか遠くを見つめる。
はい、もう千紗都先輩もストライクだったよ。うん。
あんな化け物みたいなことしといて、ストライクじゃない訳がないよねー……
……あー、うん。そんな目で見ないでよー。
読者のみんなが言いたいことは分かるよ。
でも、私はあんなことしないyーー
「逃げるんですか?(ボソッ」
私の耳元で姫ちゃんが囁く。
……へえ……
三巡目・三番手
文深ちゃんはさっさと投げ終えてしまった。
一応、二巡目はちゃんと投げられてたから、きっと最初が不運だっただけだよ。
さあ、問題の瑠璃先輩。
私達は緊張した面もちで瑠璃先輩をじっと見つめる。
「…………っ!」←鼻血噴射
『瑠璃選手が突如血を吹いて倒れてしまったーーーーーー!』
『これは……恐らく女の子に見つめられて興奮したんでしょうね。幸せそうな顔をしています』
瑠璃先輩。ある意味ブレないねー。
……あ、鼻血止まるの早い。
「ふふふ……今の私なら神すらも殺せます!」
瑠璃先輩なぜかツヤツヤしてるよー。
『こ、これは!?』
『ボールが煌々と輝いている! ……ブリリアント・ストライク……これはかなり高ランクの技ですよ!』
ま、眩しい!
いろんな意味で輝いてるよー!
瑠璃先輩の手から離れたボールは、ピンに当たる直前に一際大きな輝きを放ち、その光が収まった後には、一本たりとも立っているピンは存在しなかった。
超次元ボーリング小説……うん、私だったら読まないねー。
三巡目・四番手
「もう嫌な予感がするねっ♪」
かざりちゃんの言っていることが私には理解できないよー。
ふふふ……
「ふむ。もう既に火花が散っているぞ」
「ちょっと面白いわねぇ」
雪奈先輩と千紗都先輩も意味がわからないこと言ってるよ。
私は横目で姫ちゃんを見る。
絶 対 に 勝 つ !
『おおっと! 二人の周りに強大なエネルギーが!?』
『こ、これはもしや、以前学校で見せた……!』
『魂の化身だーーーーー!』
「さっきまで散々ツッコんでたのに!?」
姫ちゃんが叫んでいるけど気にしたら負けだと思うんだ。
あと、かげが『だから今回の地の文は私が担当するって言ったのに』って言ってるのもスルーだよ。
まあ、とりあえず……戦乙女、行くよ!
『さあ、姫選手の女神と詩乃選手の戦乙女が同時に動き出した!』
「本気で行くよ……! エクス……」
「負けません……!」
「ガリバァァァァ!!」
「ラグナロク!!」
「中二病だねっ★」
「それ言ったらお終いよ。かざりさん」
「……むぅ。そもそも、必殺技なくてもストライクとか余裕だがな」
「あなたが、それを、いい、ますか!」
「いたっ……ちょ、瑠璃やめ、いたい! わき腹に指をめり込ませるな、地味に、痛い!」
「この流れを作った雪奈先輩は重罪やと思いますよ」
……あ、ちなみに二人ともストライクだったよ。
諸事情 (?)によりここからはハイライトでお送りします。
「ふはははは! まだまだ暴れ足りんな!」
「雪奈先輩のオーラが禍々しいですね、ふーちゃん」
「せやなぁ。正直今すぐ帰りたい」
「「いっけぇーーーーー!!」」
「姫ちゃん可愛い……!」←鼻血噴出
「なんか、うちの愚姉がすいません……」
「こっちこそ先輩がアレでごめん」
「年寄り臭いって言ったの誰よおおおおお!」
「う、怨みを力に変換してますね★」
「ふむ……まあ、みんなだろうな(ボソリ」
「あ゛?」
「ゴメンナサイでした」←土下座
「えい。あっ……スペアだよ☆」
「「いえーい!」」
「……普通って、ええなぁ」
「なんか涙が……」
「魔○剣!」
「お姉ちゃん、アウトだからぁ!」
「スターライト○レイカー!」
「雪奈先輩、それもアウトです」
「バーチカr……」
「部長さん、言わせませんよ」
「ティr……」
「瑠璃先輩」
「d」
「ふーちゃん」
八巡目・一番手
「さて、もう終わりが近いな。だが、まだm……なんだ?」
雪奈先輩が喋っていると、店員さんらしき人物が先輩の肩をたたいた。
……ん、デジャヴ?
てんいん (ぼーりんぐ) Lv99 が あらわれた!
「出てけ」
『…………』
せつなたち は すなお に したがった!
**********
「あの店員何者!?」
「むう……戦闘力が見えなかった……!」
「私達もまだまだ修行不足、という訳ですか」
「姫ちゃん……!」
「詩乃さん……!」
「三年生組は何故か作品的に別ジャンルだし、二年生は燃えてるし、もう何なんだろうね♪」
「以上に疲れました……」
「オチがデジャヴって……」
「まあ、あれだけ暴れたら、ね?」
『帰るか……』
はい、Setsuです。
もう、この世界の店員は化け物ですね。
実は、店員になるために壮大な……それこそ小説一本書ける位の試練を乗り越えなければ店員になれないのです。嘘です。
感想・アドバイス待ってます。嘘じゃないよ。
それでは稜高学園一同、次回もお待ちしております!
追記・テストが近いので次回更新は遅くなるかもです。
ごめんなさい。




