第二六話 姫「盗撮は犯罪ですよ。犯罪」
新年初投稿です。
風邪引いて遅れました。すみません……
今年もよろしくお願いします。
「私みんなのこと、知ってるようで知らなかったのよ」
「……はあ」
私は遠野さんの言葉に曖昧な返事を返す。
どうも、相楽瑠璃です。
何故か唐突に遠野さんが部室に来たのですが、皆さんこんな時はどうすればいいのでしょうか。
いや、別にどうもしませんけど。
「遠野さんはコーヒーと紅茶、どちらが良いですか?」
姫ちゃんがいつもの笑顔で問いかけた。
可愛い。襲いたい。
どうでもいいけど、私はレズじゃなくてバイです。
一応レズってことになってますが厳密にはそうです。
「あ、気を使わせちゃってごめんね。……じゃあコーヒー頂くわ」
「はい」
そんなこと気にするくらいなら小研に来るのも遠慮してください、とは言わない。
私、大人。
「それで、何を知らないんですか?」
「んー……小研三人娘はそうでもないんだけどね。……なんというか、遊戯部の関係性?」
「関係性?」
関係性なんて、この二十数話を読んでくださいよ。
「……瑠璃先輩、なんかメタなこと考えてませんか?」
「文深ちゃん、居たんですか」
「はい、ずっとここに」
「話戻すね」
遠野さんは咳払いと共に、そう言った。
「ほら、相楽さんが考えてた二十数話で分かるのは、遊戯部全体での関係性。でも、私が知りたいのは個別の関係性なんだ」
なるほど。理解しました。
確かにその通りですね。
読者も、今のままではよく分かっていないかもしれません。
よく考えたらユキちゃんなんて、作品内で未だに一年生の名前を呼んだことありませんからね。
「それで、その関係性を聞くためにここに来たということですか?」
姫ちゃんが飲み物を持って戻ってきた。
「……いや、違うよ」
「? じゃあ何故」
姫ちゃんが飲み物を配りながら聞き返す。
すると、遠野さんは笑顔のようなどや顔のような表情をして、言う。
「二人きりの時の様子を撮ってきたから一緒に見ましょ!」
「「「…………」」」
沈黙が場を満たす。
ええーっと、はい。
「盗撮は犯罪ですよ? 遠野さん」
私が注意すると、それに続いて姫ちゃんが言う。
「また捕まりますよ」
ニコッという効果音が出そうないい笑顔だ。
……『また』という部分が引っかかるけれど、気にしないでいきます。
「バレなければ大丈夫!」
「……もしもし、盗撮犯が……」
「ごめんなさいでした」
土下座が素早い。
いい大人が高校生に土下座って……
そんなことを考えていると、遠野さんは席に着き直す。
「せっかく撮ったんだから見ようよ!」
そう言ってサムズアップする。
私は一つ息を吐いてから思考する。
…………うん、まあ暇ですし。
「……いいですよ」
「わーい」
喜び方可愛い。
なんというか、大人っぽい外見で可愛らしい行動のギャップがイイ。
萌えます。襲いたい。
「……ねえ白百合さん……相楽さんの視線が熱っぽいんだけど」
「気のせいです」
「ハァ……ハァ……♡」
「違うよね。確実に違うよね。鼻息荒いもんね」
「あ、コーヒーおかわりありますよ」
「え、ありがと」
「遠野さん……ちょろすぎやろ……」
あれ? ちょっと意識飛んでましたね。
まあどうでもいいですけど。
「さて、早速見ようか」
そう言って遠野さんはディスクを挿入し、再生ボタンを押す。
画面に映し出されたのは、少しウェーブのかかった茶色い髪の女子生徒。
チサちゃんですね。
チサちゃんは、誰も居ない部室の中、一人読書に耽る。
そんな中に、一人の女子生徒が部室に現れた。
『あら、影乃さん。早いわね』
「最初はこのペアよ」
「確かにあんま見たことないですね」
遠野さんと文深ちゃんが言葉を交わしていた。
『はい、今日は珍しく終礼が短めだったんです』
『あー……影乃さんの所の担任、話長いもんねぇ』
「普通ですね、瑠璃先輩」
「ですね。本当に普通の先輩後輩の関係です」
『あ、その本私も読みましたよー』
『あら、ホント?』
『はい。私、その作者さんが好きなんですよ』
『……そういえば、確かに影乃さんがこの人の作品読んでるの、けっこう目にしてるわねぇ』
その後も映像は続いていったが、終始のんびりとした二人の風景が映っているだけだった。
いや、だけっていうのもアレですけど。
「はい、一組目終わり」
遠野さんがそう言って一時停止のボタンを押す。
「普通ね」
「普通や」
「普通です」
まあ、遊戯部の真面目二人ですからね。
こんなものでしょう。
「ちなみに遠野さん。コレ、全ての組み合わせを見るんですか?」
私の問いに遠野さんは首を振った。
「分かりきってるのは見ないね。同学年とか」
まあ、当然といえば当然ですね。
「それじゃ、次行ってみよー」
映像が再生される。
画面には……チサちゃんとかざりちゃん。
『ふわぁ……眠いですねー☆』
『そうねぇ。ちょうど良い気温だものねぇ』
『……寝ていいですか?』
『だーめ。ほら、眠気覚ましに思いっきり運動でもしてきたら?』
『……疲れるんで嫌ですー♪』
『足パタパタしないの。スカートの中見えそうよ』
『きゃー、の○太さんのえっちー☆』
『○び太じゃないわよ!』
「先輩後輩というより姉妹やなぁ」
「だね。まあ柊さんはすごい……うん」
「ああ……かざりちゃん……もう一声♡」
と、まあそんなこんなで二人の映像も終わりましたけれど。
……かざりちゃんもなかなか……いえ、なんでもありません。
それにしてもチサちゃんの今の表情……気のせいでしょうか。
「さて、次のペア行ってみよう!」
「おー」
『で、最近どうなのよ』
『どうって、なにがですか』
チサちゃんと、鴎星君。
何を話しているのでしょうか。
『影乃さんとのことよ』
ああ……まあ気になりますよね。
『別に、何もありませんよ』
『ふーん』
『……なんですかその表情』
『ふふ……別にー』
チサちゃんは、いたずらっぽい笑みを浮かべて答えた。
鴎星君は困ったようにため息をつくだけだった。
「……今更だけど、今まで柊さんって後輩との絡みがあんまり想像できなかったのよね」
「へー」
「すっごいどうでも良さそうね」
そう言ってから遠野さんは再び再生ボタンを押し、次の映像を映した。
『いいえ、これだけは譲れないわ、統輝君』
『こっちだって!』
チサちゃんと統輝君ですね。
チサちゃんベースはこれで最後でしょう。
……しかし、何の言い争いでしょうか?
『何でそんな余計なことするんですか! 意味が分かりません!』
『余計なことってなによ!』
『どう考えても余計ですよ!』
「これ、喧嘩ですかね?」
文深ちゃんが少し不安そうな表情で口にした。
「……さあ」
私は曖昧に首を振った。
しかし、そこまでたいした物でないことが、チサちゃんの言葉によって分かることになった。
『酢豚にパイナップル入れることのどこが余計なのよ!』
「あ、ああー……」
姫ちゃんが苦笑した。
うん、私は統輝君派ですね。
「確かに、嫌な人は嫌やろうなぁ」
「あ、文深ちゃんは入れる派ですか」
「はい」
『酢豚は酢豚! パイナップルはパイナップルで食べればいいじゃないっすか!』
『違う! 統輝君はわかってないのよ! あのパイナップルの重要さが!』
「……次、行こう。うん、仲が良いのは伝わった」
「ですね」
さて、次にベースとなるのは……
長い黒髪の凛とした女子生徒。ユキちゃんですね。
『ふむ……』
一人イスに座り、何かを思案しているようだ。
『……よし』
何かを決めたらしく、一瞬ニヤリと笑ってから立ち上がり、ドアの前に立つ。
しばらくすると、ドアがガチャリと音を立てて開かれた。
その瞬間、ユキちゃんは目をカッと開く。
『こんにtーーって、センパイが大量に!?』
『『『『ふむ、影乃。目の錯覚じゃないか?』』』』
「分身って……あの子はホントに人間……?」
「……一応」
『『『『ふふふ……』』』』
『…………』
『『『『……む?』』』』
『……』
『『『『気絶してる……』』』』
「……次行こうか」
「……はい」
微妙な空気の中、映像が再生される。
次は、順番的にユキちゃんとかざりちゃんでしょう。
『…………ふむ、こんなものか』
ユキちゃんは、白い物体をドアの前に設置していた。
そして、ユキちゃんがお茶を飲みながらしばらく待っていると、ドアが空き、私の予想通りかざりちゃんが現れる。
『あ、センパイこんにちーーって、うわっ!?』
かざりちゃんは白い物体に足を取られ、思いっきり前に倒れ込んだ。
『うぅ……何が……って何これ。この白いの全然取れない……★』
『科学部特製の接着剤だ』
『え、ちょ、起き上がれない。手足と服にべったりついて起き上がれませんよっ★』
『ふむ。なんかエロいな』
「……あの子は何がしたいのよ」
「楽しいこと、でしょうね」
遠野さんの呟きに、私は苦笑しながらそう答えた。
……次行きましょうか。
『おいーっsーーぎゃあぁぁぁぁぁ……』
「…………え」
はい、状況を整理しよう。
再生された瞬間、挨拶をしながら部室に入っていく鴎星君が穴に落ちていった。
落とし穴……
『ふむ、一階まで落ちるように全部の床をぶち抜いたが……生きてるかな?』
「この前修理した床はこの子のせいか……!」
遠野さんが手をワナワナと震わせている。
アレは業者の人じゃなくて用務員さんが直すものなんでしょうか。
というか、どうやって床に穴開けたんでしょうね。
それにしても短いですね、今の映像。
まあいいです。次は……ユキちゃんと統輝君ですね。
『うぃーっす。……って、あれ? 誰も居ない』
統輝君がドアを開け、部室の中へと入っていく。
ーーその時
『よーうーこーそー』
『ぎゃああああああ!? いつの間に背後に!?』
『ふむ』
『うわー、すっげー満足気な顔してるー。殴りてぇー』
『まあ、これでも飲んで落ち着け』
『あ、はい』
『…………(ドキドキ』
『…………(ゴクッ』
『…………(ワクワク』
『…………(パタッ』
『……む?』
『…………(ビクンッビクンッ』
『……ふむ、まあいいか』
『よくないですよーーーーー!!』
『え』
『何飲ませてんですか!? 三途の川見えましたよ!!』
『何って……ふっ』
『なんスかその邪悪な笑い……!』
「なんか安定感あるね」
「むっちゃしっくり来ますねー」
なんというか、相性良いですからね。あの二人。
……と、これでユキちゃんベースは終わりですね。
次は……
『…………』
黙々と何らかの作業をしている男子生徒。
恭夜君。
何の作業をしてるのかは……まあ何か遊びに使うんでしょうけど。
『失礼します』
さて、影乃ちゃんが入ってきた。
『おう、影乃』
『……何作ってるんですか?』
『ん? ああ、ゴキブリのダミー』
『ひやああぁぁぁ!? なんか無駄にリアルじゃないですか!』
『我ながら会心の出来だ』
『確かに凄いですけど……材質何ですか、コレ』
『折り紙』
『え!? コレ紙なんですか!?』
『おう。コレ、明日瑠璃の鞄に入れるんだ』
『瑠璃先輩……ご愁傷様です』
「この前のは恭夜君だったんですね……」
「……相楽さん」
「哀れんだ視線止めてください」
なんかいたたまれないですから……
「まあ、次行こう。うん」
次は、かざりちゃんと恭夜君でしょうね。
『……あ、逆鱗来た』
『レア素材って欲しいときに全然来ないのに、いらない時に限って出ますよね☆』
『確かに』
「……次、行こう」
なんでしょうか、この空気。
いや、ホントにありのままの日常の光景なんですけど、ありのまま過ぎて……
よし、切り替えていきましょう。
次は恭夜君と鴎星君ですね。
『うぃーっす』
『鴎星か……よし、バスケやろうぜ』
『喜んで!』
「……遠野さん」
「何かしら」
「……三行で終わりましたね」
「三行で終わったね」
「……次、行くね」
『統輝! 外行こう!』
『はい!』
「二行で終わりましたね」
「十一文字で終わったね」
「おい」
「サーセン……」
そう言いながら、遠野さんは次の映像を再生する。
『ずっと思ってたんだけどさ』
『はい』
統輝君と影乃ちゃんです。
『敬語キャラ多くね?』
私と姫ちゃん、そして映像の中の影乃ちゃんの表情が引きつる。
『私と姫先輩と瑠璃先輩ですね』
『だな』
『特に問題もないんじゃあ……』
『いや、お前ら三人が同時に居ると誰が喋ってるか分からないんだよ。文章だけだと、な』
「って、相楽さん!?」
おや? 体が勝手に早送りのボタンを……
まあメタ発言をした統輝君が悪いんですよ。ええ。そういうことにしておいてください。お願いですから。
『あ、統輝先輩。ペイントボール切れました☆』
『もう捕獲できそうだしいいんじゃね?』
「またかよ!?」
「遠野さん落ち着いて!」
文深ちゃんが遠野さんを取り押さえる。
かざりちゃんぇ……
私は苦笑しながら次の映像を再生させる。
『…………』
鴎星君が寝てますね。
『失礼します……って……』
そこに影乃ちゃんが入ってくる。
影乃ちゃんは荷物を置き、鴎星君の正面の席に座り、鴎星君の寝顔を眺め。
『……ふふっ』
幸せそうに微笑んだ。
「瑠璃先輩……」
「姫ちゃん……私、耐えきりました……」
ちなみに、私の隣では文深ちゃんと遠野さんが砂糖を吐きながら倒れている。
まさかここまでの破壊力とは……
影乃ちゃん……恐ろしい子!
『鴎星先輩。粉塵使います?』
『頼む』
「そしてまたですか!?」
どんだけ好きなんですか!? かざりちゃん!
……って、今のでラストだったみたいですね。
とりあえず、遠野さんと文深ちゃんを起こさないと……
って、あ。ちょうど意識取り戻しましたね。
「ふう……なかなかヘビーだったね」
「ですね」
正直、影乃ちゃんに全部持って行かれた気がします。
と、そんなことを言っていると、部室のドアをノックする音が聞こえてきた。
私は「入ってください」と言う。
「…………」
「あ、チサちゃん。どうしたんですか?」
私が聞くと、チサちゃんは一瞬沈黙してから口を開く。
「さっき、部室から隠しカメラが見つかったのよ」
「……はい」
「言い残すことはあるかしら?」
「早いですよ!? 結論を出すのが早いですよ!?」
笑顔がこわい。
「まあ何でも良いわ」
「へ?」
「ムシャクシャしてるから八つ当たりするわね」
「り、理不尽すぎる!? い、いやあああぁぁぁぁ……」
「瑠璃先輩……ドンマイです」
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「で、遠野さんは何故逃げようとしてるんですか?」
「カメラ……犯人……遠野さん……パタリ」
「へぇ」
「相楽さん!? 最後の力振り絞ってまで売らないでよ!」
「で、覚悟はできている、と」
「え、ちが、ぎゃあああああぁぁぁぁ……」
「自業自得ですね」
はい、Setsuです。
遅れましたが、あけましておめでとうございます。
今年も頑張っていきたいと思いますので応援よろしくお願いしまーーえ? お前のことなんて応援してない?
……べ、別に寂しくなんかないんだからねっ!
はい、忘れてください。自分でやっておきながら気分悪いですから。ええ。
それでは、感想・アドバイス待ってます。
稜高学園一同、次回もお待ちしております!




