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第二十話 瑠璃「……扱いが酷い……」

よーし、結構早くあげられた。

誉めて誉めて~


鴎星「キモい」


うん……ゴメン。

「かくれんぼをしよう」

センパイがそう言う。

「核恋慕?」

頭の中で変換を間違えたらしい鴎星がそんなことを言い出した。

「なんだその危険そうなモノは……そうじゃなくてかくれんぼだ、か・く・れ・ん・ぼ!」

「あの昔懐かしのですか?」

「うむ」

いつも思うが、この人はどういう思考をしてるんだろうか。

よくもまあ唐突にそんなことを思いつくものだ。

ま、それはさておき、部長さんがセンパイに問い掛ける。

「ルールは?」

「ふむ。そうだな……恭夜、頼んだ」

丸投げした!?

「おう」

軽く引き受けた!?

……はい、正直こんな事で驚くわけがねーよ。

まあ、なんだかんだで、こういうことを考えるのは恭夜先輩の方が得意なんだよな。

思考が纏まったらしく、恭夜先輩が口を開いた。

「鬼は一人で、隠れる範囲は学校中のどこでもOKだ。ただし、隠れる場所は最初に決めたところ以外へと変わらないこと。それで見つかったヤツはここに戻ってくること」

単純なルールだ。

だが

「鬼が一人でその範囲は広すぎないかしら?」

部長さんがそう言う。

その通りだ。

この学校は相当に広い。

その中から見つけ出すなど不可能に近いだろう。

「……じゃあ千紗都。お前だったら何分で見つける自信がある?」

その言葉に部長さんは一瞬だけ考え

「五分ね」

そう答える。

「だろう?」

「そうね」

ということでルールが決まったようだ。

……って、いやいやいやいや!

「五分で見つけられるわけ無いでしょ!」

オレがそう叫ぶと、先輩三人がポカンとする。

「まあ、千紗都なら余裕だが……」

「うむ、他の部員なら一時間前後くらいか」

「……その部長さんへの妙な信頼は何なんでしょうか……」

それまで黙っていた影乃が口を開いた。

その言葉に対し、先輩達は苦笑して答える。

「まあ、特技の延長みたいなかんじかしら」

オレと鴎星、そして後輩二人は、へー、と少し驚いたような反応をしたのだった。

「ま、早速やろうじゃないか」

鬼はじゃんけんで決めるようだ。

「「「「「「「さーいしょーはグー! じゃーんけーんーー」」」」」」」


統輝→チョキ

鴎星→グー

恭夜→グー

雪奈→グー

千紗都→グー

影乃→グー

かざり→グー


「ノオオオオオオオォォォォォォォッォウ!!!」

「「「「「「いぇーい」」」」」」

まさかの一人負けえええええぇぇぇぇ!?

オレがショックを受けている間に、全員が散りだす。


クソ!早いとこ見つけてやる!



~十分後~



よし、そろそろ探しに行くか。

オレは覚悟の表情で歩き出す。

……さて、まずは……



**********



ふふふ……完璧だ。

完璧過ぎるぞ私!

ふむ。私が今どこに隠れているのかって?

教えてやろう。

私は今、遊戯部の部室を出てすぐの場所。

詳しく言うならば、遊戯部の部室の扉を開けたときに、ちょうどその扉で姿が隠れる位置に、忍者がよく使う壁隠れの術を使用しながら待機しているのだ。

ん? 説明が下手すぎてわからない?

まあ、私は天才だということが分かってくれればいいさ。

ふふふ……それにしてもこれはキタ。


この勝負、勝つる!


そう思った瞬間に、ドアノブがガチャリと捻られる音がし、次の瞬間、扉が勢いよく開けられた。


「ぶぐほっ!!」←扉と壁の間に挟まれた


「……センパイ見っけ……」

ふ……む……これが、策士策に溺れる、と言うヤツか……ガクリ



「微妙にちがく無いッスか?」



**********



「うっし。とりあえず一人か」

そう呟きながら、廊下を歩く。

それにしても、センパイ……詰めが甘いというかなんというか……

残念な人だ。

さて、それはともかくオレが今向かっているのは、お馴染みのあの場所。


そう、小研だ。


何故、小研に向かうのかというと、簡単なことだ。

小研と繋がりのある人物が多いからだ。

それだけで、その場にいる可能性は少し上がる。

まあ、だからこそ行かないという選択肢もあるのだろうが、アイツに限っては、自分の意志とは関係なくその場にいる可能性が出てくる。


さて、そんなこんなで小研の部室前に到着。

オレは、ノックをしてから部室の中へと入る。

そんなオレの目に飛び込んできたのはーー


「か げ の ち ゃ ん ♡ ああ、今日も可愛いです! はぁ……はぁ♡ うふふふふふ♡」

「きゃああああぁぁぁぁ! だ、誰か助けてくださーーーい! ちょ、早急にぃぃぃぃぃ……!」


そんな瑠璃先輩と影乃。

なんというか、このやりとりを見るのも久しぶりだな。

……まあ、オレの知らない所でしょっちゅうやってるんだろうが。

それにしても、瑠璃先輩……影乃に彼氏が出来てもそれは止めないんだな。

まあ、鴎星は気にしないだろうが。

……とりあえず

「影乃、発見な」

それだけ言って立ち去るとしよう。

「って、ちょっと待ってくださあああい!」

しかし、影乃に呼び止められる。

オレは渋々ながら返事をする。

「……なんだ?」

「『なんだ?』じゃなくて助けてくださいよっ!」

「……頑張ってくれ(グッ」

オレはそう言って、全力で逃走。

後ろで影乃の叫び声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。うん。


しばらくしたところで、走るのを止めて次の目的地へと歩き出す。

次の目的地、それは……料理部……!

行かないといけないけれども行きたくないなぁ。

とまあ、そんな事を思っている間に料理部の部室前へと到着してしまう。

さて………………………………



「やっぱ別の場所に行くか」

「いや! 入ってきてよ!」



オレが呟いた瞬間、中から歩先輩が飛び出してくる。

「いや、ホント! ただでさえ少ない出番を減らそうとしないでくれるかな!」

……自分で振っといてなんだけどさ……なんか可哀想すぎて涙が……

……気を取り直していこう。

「お邪魔しまーす」

「って、ちょ、待っ」

歩先輩が何故か慌てているが気にしない。

「…………」

オレは部屋の一カ所に違和感を覚える。

テーブルの上、いくつかの菓子が置かれている。

そして、そのすぐ前には一枚の皿。

その皿の上には、食べかけのクッキーが乗っている。

「…………」

オレは無言でその場に近付いていく。

そして、テーブルの下を覗き込む。

「…………」

「…………」

居た。

オレとテーブルの下に隠れていた人物……かざりは無言で見つめ合う。

「歩先輩のせいだな」

「歩先輩のせいですね☆」

「何故そうなるの!?」

当然のことを言っただけなのに、歩先輩は文句を言ってくる。

「いや、事実無根すぎるよ!」

そんな先輩の主張に対して、オレは反論する。

「えー、でもさっき先輩がオレのことスルーしてたら、かざりは見つかりませんでしたよ」

先輩は、うっ、と言って一瞬ひるんだが、反論し返してくる。

「でも、三沢君は目星をつけてたみたいだから、時間の問題だったんじゃないかな?」

オレはその言葉を鼻で笑ってからこう言う。



「そんなの、忘れた振りしてみんなで先に帰るっていうオチをつけるに決まってるでしょう!」



「酷くない!? 色んな意味で!」

「えっ」

「いや、日高さんも何を『え、それが常識じゃないの!?』っていう感じの表情をやめてくれるかな。おかしいよ、うん、ガチで」

全く、何を言ってるのか理解できないよ(笑)

まあ冗談は置いておいて、次を探しに行きますか。



残りは、鴎星、恭夜先輩、部長さん。

早いとこ見つけてやるか!



**********



「用務員室前なう」

オレは一人そう呟く。

ちなみに、先程料理部を出たときから、もうすでに二十分が経過している。

残りの三人がいそうな場所を探すにしても、やはり広い。

……まあ、正直すでにアイツの場所は分かってるんだが。

さて、とりあえずはココだ。

ちなみに、この用務員室。

校舎の隣にあって、アパートのような大きさの三階建ての建物だ。

実を言うと、この学校の用務員はかなり待遇がいい。

一階は用務員室なのだが、普通に生活が出来る。

キッチン、テレビ、風呂、などなど、設備もかなりいい物がそろっている。

そして、二階三階は各用務員の部屋。

うん、アパートのような、じゃなくて、アパートだな。

しかも結構広い。

一応、各部屋にもキッチンと風呂がついているらしい。

ちなみにセキュリティーも完璧。

それでいて値段は破格。

給料も結構もらえるらしい。


まあ、それはともかくとして、オレは用務員室の扉をノックする。

………………反応無し。

もう一度ノックする。

……………………やはり反応無し。

じゃあ……

「すいませーん。校舎のガラスがーー」

「何かしら!」

オレが言葉を言い終わる前に、中から女性が出てくる。

遠野さんだ。

遠野さんが急に慌てて飛び出してきた理由。

それは、この学園の用務員のモットーみたいなものだ。


『仕事は即座に終わらせる。余った時間は遊ぶ!』


まあ、要約して言うとこんな感じ。

ちなみに、用務員の方々は、遊戯部の活動にも積極的に協力してくれる。

何故ならあの人達も面白い事が大好きだから!

「……で、ガラスが?」

「きれいに磨かれてますね」

一瞬の沈黙。

「え?」

「きれいに磨かれてますね」

再び沈黙。

「…………ハメられたぁぁぁぁぁぁぁ!」

遠野さんがそう叫ぶ。

「相変わらず詰めが甘い。……恭夜先輩もそう思いますよね?」

「……全くだ」

オレが部屋の中に声をかけると、奥から先輩が出てきて、肩をすくめる。

「まあ、勝負は持ち越しということで」

先輩が遠野さんにそう声を掛ける。

遊んでやがったな、この人達。

「くっ……しょうがないわね」


なんだその無駄にいい笑顔。

妙なところで絆が……

「って、あれ? 今日は遠野さんしか居ないんですか?」

その事に気付いたオレが、質問した。

遠野さんは、あー、と言ってから続ける。

「それぞれが仕事と買い出しと合コン」

ああ、仕事と買い出しと合コnーー合コン!?

「合コン」

オレの表情を見た遠野さんがもう一度そう言ってくる。

……うん、ツッコまない方が良いかもな。

「まあ……頑張って下さい」

「……ええ」



そんな会話の後、オレは次の目的地へと向かう。

その場所に近付くにつれて、喧騒が聞こえてくる。

そして、ボールが跳ねるときの独特な音。


バスケットボールだ。


そう、つまり鴎星。

オレが目をやると、ちょうどアイツがボールを持つ。

そして、目の前に現れた敵と睨み合う。

一瞬の静止。

先に動いたのは鴎星。

ドリブルで相手の右脇へ潜り込むようにして抜きに掛かる。

相手はそれに反応する。いいディフェンスだ。

鴎星はその瞬間、回転するようにして逆側へ。

完全に重心を右にしていた相手はそれに反応出来ない。

鴎星はそのまま相手を抜き去ってしまった。

そして、鴎星はゴールを見据え、跳ぶ。

その跳躍が最高点に達した瞬間、その手からボールが離れる。

ボールは綺麗な放物線を描きーー

「……っし」

ネットを揺らした。



「って、いや、隠れろよ!!」



つい、状況説明したけれども、かくれんぼ中だから!

なんでバスケしてんだよ!?

隠れる気ゼロだろ!

「……いや、つい」

「つい、って……!」

オレは一つため息を吐く。

すると、鴎星が口を開く

「バスケ、やる?」

「……やんねーよ……」

「えー……」

「だから、かくれんぼ中だって!」

「あ、そっか。……で、バスケ、やる?」

「殺すぞ」



オレはもう一度ため息を吐いてから、最後の一人……部長さんを探しに行くのだった。



**********



「み、見つからねぇ……」

一旦、遊戯部に戻ってきたオレは、そう言って机に突っ伏した。

鴎星を見つけてから、もう一時間近く経っている。

そんなオレに対して、恭夜先輩が声を掛けてくる。

「……ま、アイツはこういうの得意だからな」

「……こういうのってどういうのですか……」

オレがそう言うと、先輩は肩を竦めるだけだった。

「とりあえず探して無いところを探せばいいんじゃねえの?」

バスケットボールを指の上で回しながら、鴎星がそう言ってくる。

「……もう学園内は全部探した」

「あー……マジか」

そう、もう全部探した。

なのに、居ない。

「ふむ。ちなみに言うと、私と恭夜はもう絞れているぞ」

センパイがそう言う。

「ええ!? マジっすか」

「うむ、マジだよ」

部長さんは一体どこに……

どこか見落としてる場所は無いか……


「その思考が間違ってるぞ」


恭夜先輩が唐突に言い放った。

「え?」

オレがそう聞き返すも、恭夜先輩は無言。

その思考?

つまり、見落としてる場所を捜すこと。

……見落としてなかった?


「……まさか」


オレはとある場所へと向かう。

恐らく、ここにいる。


小研の部室。


……オレはまんまと部長さんの思惑に引っかかっていたんだ。

オレは最初にここに来たときは影乃に気を取られていたため、部長さんの存在に気付かなかったんだ。

そして、この場所で影乃を見つけたオレは、勝手に『ここには誰もいない』と決め付けていた。

完全に引っかかっていた。

オレはノックをしてから中へとはいる。


「大正解」


中では瑠璃先輩と部長さんが優雅にお茶をしていた。

「……やってくれましたね」

「見事に引っかかってくれたわね」

そう言って部長さんは愉快そうに笑う。

そうしていると、恭夜先輩達がぞろぞろとやってくる。

「それにしても、恭夜先輩のアドバイスの仕方。部長さんに似てましたね」

「ま、今回はたまたまそんな風に出来たってだけだ」

そんな会話をしていると、センパイが口を開く。

「と こ ろ で 瑠 璃 !」

「………………なんですか」

何か嫌な予感を感じたらしく、嫌々ながら瑠璃先輩が返事をする。

「いや、なに。……もちろんこれから遊ぶよな? 私達と」

「え、いyーーはい……遊びます……」

怖っ!? センパイ怖っ!?

いま、断ろうとしてた瑠璃先輩を無言で威圧したぞ!

「うう……後輩達へのアドバイス考えないといけないのに……」

いや、ホント可哀想な人だよな。

いつもオレ達につきあっているイメージがある瑠璃先輩だが、結構忙しい。

ホント、無理矢理つき合って貰ってる時も多い。

まあ、ホントに無理な時はちゃんと見極めているだろうが。

「じゃあ瑠璃。この樽の中に入ってくれ」

「今どこから出したんですか!?」

そう言いながらも樽の中へ入る。

「よし。みんなコレを持て」

そして、センパイがオレ達に、何か長い物を渡してくる。

「……剣?」

「剣だ」

「……ちょっと待ってください。嫌な予感しかしないんですけど」

瑠璃先輩がそう言うも、センパイは聞かない。

「……刺すぞ」

樽に開いている穴に剣を突き立てる。

「ひゃあ!?」

瑠璃先輩が悲鳴を上げる。

「ちょ、コレもし当たりの部分に刺したらどうなるんですか!」

「飛ぶ」

「飛ぶ!?」

瑠璃先輩は涙目になりながら、樽を出ようともがく。

「で、出れない!」

「ああ、コレ飛ばないとでられないから」

「ええっ!?」

「じゃあ、次行きまっす☆」

「ちょ、ま」

ブスリ

……セーフだ。

「よーし、どんどん行けー」


「え、ちょ、ホント、ま……」

ブスリ、ブスリ、ブスリ

次々と刺していく。

どんどんと瑠璃先輩の顔が青くなっていき……




「やめてえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ……!!」




学園中に哀れな悲鳴が響きわたったのだった。




はい、Setsuです。


小研のメンバーもレギュラーメンバーとして数えていいんじゃね?と思い始めた今日この頃。


それにしても瑠璃ェ……

可哀想な人だw

まあ、全然出番の無い(まあ今回は出てましたが)歩よりはマシですが(笑)


そういえば今回で二十話目。

まあ、だからといって何かあるわけでは無いのですがw

ただ、これからもよろしくお願いします、とだけ。

まあ、もし五十話とか百話とかまでいったら特別編を書きたいですね。

……五十話はともかく百話までいけるのか、自分は……

ま、まあ頑張ります!



それでは、感想・アドバイス待ってます。

次回も稜高学園一同、お待ちしております!

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