第一九話 統輝「キタキタ来たーーー!!(徹夜明けのテンション」
スミマセン!
久しぶりの投稿になってしまいました!
まさかのスランプです。
……まあ、やれるだけのことはやりました(遠い目
夜の校舎。
その廊下に、一人の女性が歩いている。
息が荒く、その顔には少しの焦り。
それは、まるで何かから逃げているかのようであった。
**********
「はぁ……はぁ……」
荒い息を整えながら、私は一人歩く。
クソっ……!
あと少しでバレずにすんだというのに……
だが今更後悔しても遅い。
気持ちを切り替えて、これからのことを考えなければ。
まあ、とりあえずこの建物……稜高学園だったか……ここで休ませて貰おう。
学園ということは、確実に朝まで誰も来ないだろうし。
……ただ、問題はほとんどの部屋に鍵がかかっていることだ。
まあ当然のことではあるのだが、しかしこれでは身を隠せない。
……いざという時はトイレの中に行くしかないか……
そう思いながら、ダメもとでドアに手をかける。
すると、先ほどまでとは違う感触が。
ガララッ
そんな音と共に、ドアが開く。
ーーそして、その中にいた人物達と目があった。
「………………」
『………………』
えーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!?
心の中で、全力の叫びをあげる。
なんでよ!?
何でこんな時間に生徒が居るのよ!
今、深夜の一時なんだけど!?
冷や汗が滝のように流れ落ちる。
どうしよう…………
**********
どうしよう……
全員がそんな空気を発している。
ちなみに、今遊戯部の部室に居るメンバーは、
オレ、鴎星、恭夜先輩、雪奈センパイ、部長さん、瑠璃先輩。
何故オレたちがこんな時間に学校に居るのかだって?
センパイが急に『よし、今日は徹夜だああああああ』とか言い出したんだよ!
意味わかんねぇよ……明日も授業あるのに……
あ、ちなみに瑠璃先輩は部長さんが無理矢理巻き込んだからだ。
それと、一年コンビはちょうど今日休みだったんだよ。
さて、それは置いておこう。
オレたちが焦っている理由。
それは、突如として入ってきた一人の女性だ。
テンパった瑠璃先輩が『とりあえず、お茶でもどうぞ!』とか言って座らせちまったけど
……誰だよっ!
いや、マジでこの人誰?
歳は20代中盤だろうか。
作業服のようなものを着ている。
……学校の関係者?
と、最初は思ったのだが、どんなに思い返しても彼女のような人はいなかった。
ゴトッ
後ろでなにか硬い物が落ちた音がした。
驚いて振り返って見ると……
ーー手錠!?
(ええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?)
全員が心の中で叫ぶ。
おもちゃ?
否!あの重厚感は間違いない!本物だ!
え、ヤバい感じの人なのか?え、え?
いや、もしかしたら、捕まえる側かもしれーー
(おんぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁ!?)
再び、オレは心の中で叫ぶ。
違った!
確実に捕まる側だ!
だって、足に壊れた枷がついてるから!
冷や汗が止まらない。
どうする、どうすればいい!
オレたちはアイコンタクトだけで会話する。
うん。人間、切羽詰まれば何でも出来る。
『ぶ、部長さん!どうします?あの人』
『……殺る?』
『なるほど!……って、いや、急にどうしたんですか部長さん!』
一瞬納得してしまったが明らかにおかしいだろ!
却下だ却下!
よし、次行ってみよう!
『恭夜先輩、どうします?』
『……(無言でカッターを持つ』
『あんたもかっ!?』
駄目だコイツ早く何とかしないと……
クソ!こんな時に限って使い物にならない!
……え?先輩にその言い方はダメだろって?
いや、先輩らしいことをしてくれたらこんなこと言わねぇよ!
まあいい。
次だ、次。
『センパイはーーいえ、何でもないですから手に持った拳銃を処分してください』
というか、どこから持ってきた。
不満そうにすんなよ。なんだその残念そうな顔。
……ここはもう先輩達の良心と言っても過言ではない瑠璃先pーー
『……(ニコッ』←無言でオレにデ○ノートを差し出している
『あんたもかーーーーーーーーぁぁぁぁぃい』
いやまあデス○ートとかツッコミ所は大量にあるんだが、何よりもこの先輩達にはそれ以外の選択肢が無いのか!?
くっそ……
こうなったら、親友!
お前は大丈夫だよな!
「……あ、名前知らねえから無理か」
親友は、デスノー○に名前を書き込もうとしていた。
馬鹿か?馬鹿なのか!?
よーし落ち着けオレ。
今はもう自分だけが頼りだ。
冷静に考えろ。
……………………うん、何も思いつかん。
って、どうするぅぅぅぅぅぅ!
思いつかんじゃあ済まないんだって!
クソ!絞り出せ!
オレの頭よ、何か案を下さい!
……はっ!来た!
案1・殺る
いやいやいやいや……!
オレの脳よ。それはダメだと言っているではないか。
……次!
案2・通報
おお……マトモだ。
うーん、でも微妙だなぁ。
今の状況だと、オレたちを人質に捕る可能性が……
案3・逃走
あー……いい案だけど、どうやって逃げるかが問題だよな。
怪しませる可能性が高い。
案4・殺す
おい!オレの脳!
テメェなめてんのか!
案5・だから大人しく1か4にしておけって
ダ メ だ か ら !
いいかげんにそのネタから離れるんだ!
案6・しょうがない……じゃあ無難に、帰って貰えばいいんじゃね?
お前何様だよ。
あと、それは無難なのか?
……まあ、他に案も無い訳だからそれでいいか。
見たところ襲ってくる気配も無いしな。
『とりあえず適当に言いくるめて、お引き取り願いましょう』
オレはアイコンタクトで、そう提案した。
そして、その提案に全員が賛同する。
と、不意にオレのケータイが震える。
メールだ。
こんな時間に何だ、と思いつつも画面を見るとーー
『fromかざり
一つの選択ミスでDEAD ENDになる理不尽に直面した今日この頃☆』
タイミングぅぅぅぅぅぅうううう!?
アイツは何をしてるんだ!
……ぐぅ……落ち着け、オレ。
気にしたら負けだ。
…………よし。
始めるか。
**********
(うわああああああぁぁぁぁ……!)
心の中で、全力でそう叫ぶ。
最悪よ!最悪ね!最悪だわあああああああ!
いきなり見つかったぁあぁぁぁぁ!
誰にも見つからないように気を付けてたのに!
こんな所にまさかの伏兵がいるとは……
……そして何よこの状況……
お茶出されて座っちゃったけど、この後どうすんのよ私!
ちなみに、ここの生徒らしき彼らは端の方で集まっているのだが、何をしているのだろうか……
もしかして脱獄した人ってことがバレた!?
その可能性はあるわね……だって足に枷が……
いや、冷静に考えろ私。
もし自分が彼らの側だったら、急に入ってきた知らない人物をどう思う?
……うん、この人誰だ!?ってなるだけだ……
って、今の思考何の参考にもならなかった!?
ヤバい!これはヤバい!
もはや無意識のうちに焦ってる!
そうだ!こう言うときは素数を数えるんだ!
1、2、3……ってあれ?1って素数?
……あーーーーっもう!落ち着け私ぃぃぃぃ!
そんなふうに、一人葛藤していると、ポケットから何かが落ちる。
ゴトッ
(ぎゃああああああああああぁぁぁぁ)
私は急いで地面に落ちた手錠を拾い、再びポケットの中にしまう。
コレハマズイコレハマズイコレハマズイコレハマズイ。
頭の中をその言葉が埋め尽くす。
その状況がしばらく続き、その後途中でハッとなる。
ちょうどその瞬間に、一人の男子生徒がケータイを取り出した。
……え、通報?
一瞬そう思ったのだが、どうやら違ったようで、少年はすぐにケータイをしまったのだった。
そしてしばらくすると、先程お茶を淹れてくれた女子生徒が、口を開いた。
「えーっと……警備員の方ですよね?……その、一応ここは許可を取って使っているんですが……」
警備員?
ああ、なるほど。警備員が見回りに来たと思ったのか。
まあ、残念ながら(?)警備員ではないけれども。
というか、来るときに確認したけど、警備員も仕事終えて帰っちゃってるみたいだった。
まあ、それは置いておくとして、えーっと気付いて無い……のかな?
……うん、どっちにしても、これは逃げる口実ができた。
「え、ええ。そう、許可を貰ってるならいいわ!……そ、それじゃあ私はもうーー」
ウゥゥゥゥゥゥゥ←パトカーのサイレン音
「…………」
『…………』
ぎゃあああああああああああああああああああああああ!
終わったああああああああ!
**********
「えーっと……警備員の方ですよね?……その、一応ここは許可を取って使っているんですが……」
よっし、瑠璃先輩ナイス!
これなら、彼女も逃げる口実を作れる!
「え、ええ。そう、許可を貰ってるならいいわ!……そ、それじゃあ私はもうーー」
よし来tーー
ウゥゥゥゥゥゥゥ←サイレン音
……………………まさかの
『警察キタアアアアアーーーーーーーーーー!!』
うっわ、来ちゃった!
そして、この空気感!すっげぇ空気重いし!
つーか、この人冷や汗の量ハンパねぇ!
まさに滝のように流れている……
……どうするんだろ。
そう思っていると、女性が口を開いた。
「…………えーっと、もう気付いてるっぽいから聞くけど……こういう場合ってどうするのが正解?」
一瞬の沈黙の後、オレ達は答える。
「逃走」
「立てこもり」
「正面突破」
「……自首?」
再びの沈黙。
そして、女性はふっと息を吐き、どこか達観したような表情になった。
「ふふ……短い間だったけれど、あなた達と出会えて良かった。……楽しかったわ」
オレ達はそれを静かに聞いている。
女性はさらに続ける。
「……でも、もうお別れのようね」
そう言うと、彼女は微笑んだ。
「それじゃあ……アディオス!」
そう言うと、勢いよく扉を開いて、部室を飛び出していってしまった。
残されたオレは、その背に向かって叫ぶ。
「いや、良い話風にしようとしても無理ですからーーーーーーーーーっ!」
そう叫んだ先で、こんなことが起きた。
女性、逃走→見つかる→逮捕。
早っ!
せめて姿が見えなくなるくらいまで逃げろよ!
「……何だったんだ」
センパイがそう呟くと、オレ達は全員肩を竦めるだけだった。
**********
「おはよー……って、なんか眠そうだね」
「……ああ、色々あってな」
あの後、結局徹夜したオレと鴎星は、朝の教室で睡魔を必死にこらえていた。
「あ、そうそう。昨日このあたりでなんか脱獄犯が捕まったらしいよー」
「…………へー」
あの人か、と思いつつ、オレはそう返事を返した。
「……その人は元々何で捕まってたんだ?」
鴎星がそう問い掛ける。
うん、それはオレも気になる。
「ああ、確かーーって、二人とも何か呼んでるよ」
何だ、このタイミングで……
そう思いながらも、渋々外に出るとそこにいたのは……
「やあ、また会ったわね」
昨日の女性。……って、え?
「えええええええぇぇ!?なんで居るんっすか!?」
「いやー、奇跡?」
よーっし、クールダウンだ
……うん。
「で、どういう事ですか?」
「冤罪が判明して釈放された」
新聞に載ってない事実……
「……あれ、でも脱獄の方の罪は残ってるんじゃ……?」
その問いかけに関しては、女性も首を傾げる。
「さあ?詳しいことは知らないわ」
どういう事なんだ……
その思考に没頭していると、突如声が掛かる。
「あ、統輝さんに鴎星さん、どうしたんですか?」
姫だ。……ん?
姫か!?
「おい姫!」
「小声で叫ぶとは器用ですね」
今はそんなことはどうでもいい!
「あの人はお前の仕業か?」
姫はコクリと頷く。
「あ、誤解の無いように言っておきますけど、冤罪は事実ですよ……それ以外は……ふふ」
「笑って誤魔化すな……」
オレは一つため息を吐く。
「あ、そうそう。私今日からこの学校の用務員だから」
すると女性が唐突にそう言った。
「「は?」」
「だーかーら!今日からここで働くの!」
オレと鴎星が一瞬呆けてしまう。
「ああ、自己紹介がまだだったわね。……私は遠野純子26歳よ。よろしくね!」
そう言って女性……いや遠野さんはオレ達に背を向ける。
「あ、言い忘れてた。私は用務員室にいるからいつでも遊びに来なさい。私も面白いことは大好きよ、遊戯部みたいにね」
それだけ言って、遠野さんは歩いていったのだった。
もう、遊戯部の事は伝わってるのか。
いや、自ら聞いたのか。
まあ、どっちにしろその言葉には甘えさせて貰おうか。
どうやらまた、楽しくなりそうだ。
はい、Setsuです。
新キャラ登場ですね。
初の大人でしょうか。
それは置いておくとして、やっぱり姫の権力パネェっす。
それでは、感想・アドバイス待ってます。
次回も稜高学園一同、お待ちしております!




