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第一八話 シスター!

姉妹でお出掛けですよーーーーーーーーーー!!

「ということで頼み事があるんだよー」

「どういうことだ」

唐突に詩乃がそんなことを言い出した。

意味が分からん。

何かおかしな電波でも受信したのだろうか。

……うん、してるわけ無いな。どっかのセンパイじゃあるまいし。

というか何だ、一人で言って一人でツッコんでるオレの方が危ないんじゃ無いだろうか。

「いや、その……かげと遊びに行くんだよ」

「……ほう」

オレはそう相槌を打つ。

鴎星は隣で黙って聞いている。

なんでも、この前仲直りしたのはいいのだが、互いに歩み寄る機会が少ないので、取り敢えず二人で出掛けよう、となったらしい。

「それで……その、アドバイスというか、そういうのが欲しいなー、と。……ほら、あの子の好きな物とか」

詩乃は少しもじもじとしながら、そう言った。

それを受けて、鴎星が口を開く。

「いや、そういうのは俺達じゃなくてアイツの親友二人に聞いた方が良いと思うぜ?」

オレもそれに続く。

「……まあ、鴎星はアイツの彼氏だけども、いつも一緒にいる分、好みとかそういったことはあの二人の方が詳しいだろ」

そんなオレ達の言葉に、詩乃は渋い顔をする。

「いや、なんとなーくだけど、聞いたら負けな気がするんだよー……」

オレはそれに対してよく分からないといった表情をする。

鴎星は、少し同調できる部分があるのか、微妙な顔をしていた。

「ふーん。そんなモンなのか」

オレはそう相槌を打った。

「そんなモンだよー」

オレは一つ息をつく。

水筒のお茶を一口飲み、喉を潤わせる。

……ふう。

「で、オレ達に頼みたい事ってそれだけか?」

オレが素っ気なく言い放つと、

「いや……それだけって言うか、それが全てだよー」

詩乃が縋るような目でこちらを見つめる。

……段々と罪悪感が沸いてくるのが不思議だ。

でもオレは負けんからな!

心の中でそう叫ぶ。




「先輩命令だ。やれ」




「「「うわっ、なんか沸いてきた!」」」

「その反応酷くねえか?」

事実だし仕方ない。うん、仕方ない。

ということで、恭夜先輩が突如現れた。

つーか心臓に悪いわ。

「……その命令を下した理由は?」

一応だが聞いておく。

「面白そうだから」

やっぱりか。

ここまで爽やかに言い切られるといっそ清々しい。

ただ、サムズアップとドヤ顔は腹立つ。

先輩だけども無性に腹が立つ。

そんなことを思っていると、恭夜先輩がオレ達三人に、小型の機械を手渡してきた。

「なんスか、コレ?」

鴎星が呟く。

「通信機のようなものさ」

なる程。イヤホンと小型マイクか。

しかも、他人にバレないように設計してある。

なんでこんな物を持ち歩いているのかを問いたいところだが、それよりも、だ。

「コレで何をしろと?」

鴎星がそう聞くと、恭夜先輩はさも当然のように言い放つ。

「影から二人を見守って、逐一アドバイスしてやれ」

「……よりによって、その方法を選んだ理由は?」

「面白そうだから」

予想通り過ぎる。

というか基本的にこういう人だもんな。うん。

一人納得しつつ、「了解です……」と言う。

そして、鴎星もオレと同様にしたのだった。

「それじゃあ頑張れよ!……あ、明日報告しろよ」

恭夜先輩はそう言って教室を出て行った。

その背中に向けて、「分かりました」とだけ言っておく。

……気は進まないが、やるしかないようだ。

オレと鴎星が顔を見合わせる。



その数秒後、二人同時にため息をついたのだった。



**********



「ということで頼み事があるんですよ」

「デジャヴ?」

かげのんの言葉に、ふーちゃんがよく分からないことを言っている。

いや、自分でもよく分かってないらしいが、何となくそう感じたらしい。

ちなみに『ふーちゃん』というのは文深のニックネームだ。

「で、頼み事って何かなっ♪」

私がそう訊ねると、少し言い辛そうにしながら、かげのんが言ってくる。

「実は……かくかくしかじかで……」

「いや、何言ってるか分からへんから」

「あー、詩乃さんと出かけるからアドバイスが欲しい、と☆」

「なんで分かるんや!?」

ふーちゃんは、「私がおかしいんか!?」等と言って、一人騒いでいる。

私はそんなふーちゃんを放置して、でも、と言ってから、さらに続ける。

「それ、鴎星先輩に聞いた方がいいんじゃ?」

かげのんは、「うっ……」と言ってから、先ほどよりさらに言い辛そうに言葉を発する。

「その、なんとなく聞いたら負けな気がして……」

「やっぱデジャヴ?」

ふーちゃんがまた意味不明なことを言ってるね。



「ということで、コレをあげよう」



「「「怖っっっ!?」」」

そう言いながら突如雪奈センパイが現れた。

その手には小型の機械……ああ、コレがふーちゃんの言ってたことか。

うん、デジャヴ。

通信機というか無線機?

それを私達に渡してくるのだった。

「ふむ。ということでついて行ってやると良い」

「私達にそれをさせる理由は?」

「面白そうだから」

デジャヴ。

何これ?作者の手抜き?

ホントしっかりしてよ?サボってたら後で痛い目に遭わせるからっ★

ということで、私達はかげのんのサポートをする事が決定した。



……さて、面白くなりそうな予感がするねっ♪




**********



「と言うわけで、オレと鴎星は詩乃を陰で見守ってます」

「誰に説明してるんだ?」

「読者だ」

「読者か」

え?メタ発言やめろ?

仕方ねぇ、とりあえずはやめておいてやるよ。

……いやー、それにしても

「詩乃のやつ……ガッチガチだな」

そう、詩乃が異常に緊張してやがる。

なんかもう挙動不審だ。

数秒毎にガラスに映る自分の姿を見て身嗜みを整えている。

あと、キョロキョロと周りを見回しすぎだ。

これは影乃が来たらスゴいことになりそうだ。

そんなことを考えた時、丁度影乃が現れた。


『おおおおおはよう、かげ!』


スピーカーから伝わってくる、ツッコミ所満載な詩乃の声。

どもりすぎだ!

そして今は夕方近いんだが……

さて、遊戯部のツッコミ役はどう反応する!?


『ううううううん、お姉ちゃん、おはよう!』


お前もかーーーっっっっっっっっぃぃぃぃい!?

けっこう似た者姉妹なんだな!お前ら!

「いや、二人とも緊張しすぎだろ……いきなりアドバイス要るよな、コレ」

「要るでしょうね~☆」

オレは小型のマイクに向けて言葉を発そうとする。

……ん?なんか違和感が

そう思い、顔を上げると見慣れた顔が二つ。



「「「「え」」」」



影乃の親友。

文深とかざりだ。

……なんで二人がここに?

「なんで二人がここに?」

オレの思考と一字一句違えずに、鴎星がそう呟いた。

「いや、お二人こそなんでココにいはるんですか?」

「いやいや、お前らこそ」

「いやいやいや」

「いやいやいやいや」

「いやいやいやいやいや」

「いやいやいやいやいやいや」



~互いに事情説明中~



「うん。マジで似た者姉妹ということが発覚した」

オレの言葉に、残りの三人がコクコクと頷く。

現在は、四人で姉妹を尾行している。

まあ、何にせよ結果オーライだ。

オレ達とかざり達で、同じ指示を出せば色々と手間が省ける。

『あ、コレ可愛いよ、お姉ちゃん』

『ホントだ~』

今はすっかり二人の緊張もほぐれ、ごく自然な会話を繰り広げている。

「そういえば、かげのんって詩乃さんと会話する時だけ敬語抜けるんやなぁ」

唐突に文深がそう呟く。

……そういえばそうだな。

「鴎星。お前と居るときは?」

「敬語だ。……何でも、詩乃と喋るときは、無意識の内に昔の喋り方に戻るらしい」

オレ達は、へー、と反応する。

文深とかざりは少しホッとした様子だ。

おおかた、本当に親しい人だけ敬語が抜けるんじゃないか、と考えていたのだろう。



『あ、コレ面白そうだよー』



詩乃がそんな事を言っている。

『お楽しみくじ?』

……ほう。

何か地雷というかフリなかんじもするが……。

まあいい。

影乃も乗り気なようだ。



**********



「お楽しみくじ?」

かげがそう呟く。

一回500円で、様々な……うん、ホントに様々なものが景品となっている。

「よーし。やってみよう」

私がそう言うと、かげは頷いた。

500円を払い、くじを引く。

紙に書かれている番号は……25。

「はい。25番の景品はこちらになります」



タッタラタッタッター……

どこで○ドア~



バシンっっっっっ!!



私は景品を見た瞬間に地面に叩き付けた。

「はぁ……はぁ……」

『プッ』

マイク越しに統輝の噴き出す声が聞こえてきた。

……笑い事じゃないよっ!?

この世界の技術では存在してはいけない物だから!

それ以前になんかもう一杯一杯アウトだよ!?

背後から微妙な視線を感じる……

かげぇ……

「わ、私もやるよ」

流石優しい。

やっぱり最高の妹だよ。



タケ○プター♪



バシンっっっっっ!!



「…………」

私は無言で肩に手を掛ける。

『ぶふっ』

……だから笑い事じゃないよー……

「……いこう。かげ」

「うん……」

微妙な空気のまま、私達はまた歩き始めるのだった。



**********



「ぷくく……」

「ほ、ほら、統輝先輩……笑っちゃだめですよ……ぷはっ」

「ツいとる……ツいとるでかげのん&詩乃さん……笑いの神が来とるで」

「すまん影乃……ぶほっ」

四人で爆笑しながら尾行を続ける。

ホントやるな、あの姉妹。

「って、なんか空気が微妙なかんじになってますね☆」

かざりの言葉に、オレ達はハッとなる。

……これはいかんな。

よし、こんな時には……

「鴎星!二人の共通の趣味は!」

「可愛いぬいぐるみ集めだぜ!」

流石鴎星。

ていうか鴎星が居ればオレ達必要無いんじゃね?

もしかしてオレ役立たず?

え、この前の影乃誘拐事件でもよく考えたら活躍してないよな……

主人公って……オレだよな……?

鴎星じゃ……ない……よな……?

「何で統輝先輩のテンションがだだ下がりしてるんでしょうか★」

「主人公特有の悩みやと思うよ」

いかん!そんな事を思っている暇は無いんだった。

そう思い、マイクに向けて言葉を発す。

「詩乃。右斜め前のぬいぐるみ店に行け」

『了解だよー』

その返答のすぐ後には、店の方を指差し影乃を誘う。

「かげのん、行っちゃえ!」

『はい』

かざりの言葉に返答した影乃。

二人はぬいぐるみ店へと入っていった。

追いかけるか……

そう思った瞬間、背後から声がかかる。

「うん?キミたちは遊戯部と小研の……」

「へ?」

オレ達が振り返るとそこには……えーっと……誰だっけ……

「歩さん。何でここに」

文深が彼女にそう問いかけた。

……ああ、料理部の部長か。

……彼女の存在を忘れていた方は『鬼ごっこ』の話で登場してるので、それを読み返して下さい。

「いや。新しいフライパンを買いに来たんだよ。……で、そういうキミたちは?」

「尾行です」

歩先輩が固まる。

「……ごめん、もう一回言ってくれるかな」

「尾行です」

もう一度先輩は固まる。

「もう一度言ってくれないかn「尾行です」……そうなんだ」

先輩はそう言ったきり、立ち尽くしてしまった。

「…………えーっと、うん。私は何も聞いてない。聞いてない。聞いてない。聞いてない……」

そして、ブツブツと一人よく分からないことを呟きながらどこかへ行ってしまった。

「これ絶対変な誤解されてるだろ」

「ひさびさの出番がアレって……」

鴎星と文深がそう呟いた。

「って、アレ姫ちゃん先輩やないか」

文深は気付いたようにそう言った。

おお……ホントだ。

「ぬいぐるみ店に向かってるんじゃ……?」

ん。二人と鉢合わせするんじゃ?

「……どうすんの?これ」

「……引き止めようぜ」

オレの呟きに、鴎星はそう答える。

よし、それじゃあ

「文深!ゴー!」

「アイアイサー!」

元気良く返事をした文深は、姫の方へと駆けて……かけ……て……

……………え?どこ行った?

「後ろですよ……」

「「「うおわっっ!」」」

「まさか文深さんが先に光を超えるとは」

「いや、その言い方だとお前も超えれるってことか!?」

「どうでしょうね?」

いつもの笑顔。

……そうだ、姫スマイルと名付けよう。

「それで、なぜ私は連れられてきたのでしょうか」

「ああー。かくかくしかじかで☆」

「やから伝わらへんって……」

「なるほど、詩乃さんと影乃さんが一緒に……」

「やから何で分かるんや!?」

隅の方で文深が「なんでや……何でなんや……!」と言いながらうなだれているが気にしないでおこう。

まあ、なんだかんだで姫も尾行に参戦。

そして、そうこうしている間に姉妹はぬいぐるみ店から出て来た。

二人とも手に袋を持っている。

「……て、姫。いつの間に……」

姫の手には姉妹と同じ袋が。

「光を超えて買いに行きました」

なるほど。

……いや、今のは納得するべきところではないのか?

まあいいか。

『ねぇ、統輝。そこのクレープ屋さんに行こうと思うんだけど、どうかな?』

詩乃から通信が入る。

オレは鴎星に視線を向ける。

「クレープはOKだが、あの店の味はどうなんだ?」

鴎星の言葉に、かざりと文深が反応する。

「あ、あの店、私とふーちゃんとかげのんで行きましたよ♪」

「かげのんも気に入ってました」

ナイスな情報だ。

「詩乃。OKだ!」

『うん』

その返答と共に、姉妹はクレープ屋へ向かっていく。

『私はチョコバナナです。……かげ、どうするー?』

『じゃあ、私も一緒で』

「……後で私達も買いません?」

文深が提案する。

全員がそれに頷いた。

みんな小腹が空いてるんだよ……

『おいしーね!かげ!』

『うん』

にしても、良い笑顔してんな、二人とも。

自然と顔が綻んでくる。

……よし。

「文深。今のうちにクレープ買ってきてくれ!」

「イエッサー!…………買ってきましたー!」

速い!

そして買いに行った描写を入れなくて良いから作者が楽!

流石文深だ!

……さて、それじゃあ、いただくとしようか。

もぐもぐと全員がクレープを頬張る。

……うん。美味い。

にしてもクレープなんて久しぶりに食ったな~。

そんな事を思いながら食べていると、ふと視線を感じた。

ん?

「どうした?姫」

「い、いえ!何でもないです」

「?そうか」

……じー……

えーっと、うん。

「こっちの味が良かったのか?……一口どうだ?」

「いえ!そういうことでなく」

「遠慮すんなって、ホラ」

オレは姫にクレープを差し出した。

「ほ、本当に大丈夫ですので!」

「……(じー」

「……うう。それじゃあ、お言葉に甘えて」

とうとう折れた姫は、目を伏せて、顔を赤らめながら、一口パクリと頬張った。

「……どうだ?」

「お、美味しいです」

姫は顔を真っ赤にして、消え入りそうな声でそう返してきた。

「……甘々だな」

「甘々ですねっ♪」

「甘々や~」

「……どういう意味だよ」

三人がニヤニヤとしながらそんな感想を言っている。

姫はそれに、顔をさらに赤くしていた。

文深はそんな姫に対して、『やりましたね!』とか言っている。

どういう意味だ。

『ねえ統輝、殴って良い?』

「何で!?」

『なんかわからないけどムカついたから』

「理不尽過ぎる!?」

そんなやりとりをしていると、姉妹は移動を始めた。

って、みんなクレープ食い終わってるか?

そう思い、みんなの方へと視線を向ける。

「……いつからオレがクレープを食べきっていないと錯覚していた」

「なん……だと……」

『いや、バカやってないで早く付いてきてよー』

詩乃からツッコまれる。

……あぶねえ、マイク切るの忘れてた……

さてさて、そんなこんなでついて行く。



なのだが……

「なぁ。みんな」

「なんだ?」

オレは二人の様子を見て、感じたことを素直に口にする。

「もう、二人だけでやらせてやった方が良いんじゃないか?」

「……そうですね。私もそう思います」

そう言った姫に続いて、みんなが頷いた。

じゃあ

「あとは自分でどうにかしろ……詩乃」

それだけ言って、通信機を鞄の中に片付ける。

かざりも横で同様にする。



「じゃ、帰るか!」



**********



「で、なんで昨日は勝手に帰ったのかな」

「……えーっとそのー……ね?」

「まあ、なんだその、アレだ、いい雰囲気だったから」

詩乃は、ふーん、と言う。

そして……



「雰囲気とか関係なく最後までちゃんと見守ってよーーーーーーーー!!」



**********



「で、言い訳はありますか?」

「「ありません。ごめんなさい」」

「許しません」

「「ええっ!?」」



「昨日、あの後不安で死にそうだったんですよーーーーーーーーーー!」




うん。やっぱり姉妹だ……






はい。Setsuです。


姉妹がイチャイチャ。

統輝と姫がイチャイチャ。

統輝は氏ねば良いと思う。


統輝「ひでぇ!」


まあ、姉妹の仲は良好です。


そう言えば千沙都を出さないのは珍しいですね。

書かないと自分が落ち着かない(笑)


感想・アドバイス待ってます!


次回も稜高学園一同、お待ちしております!

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