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第一六話 Dear my……『ふたりと恋と約束と』

さあ、ここが山場っ!!


がんばれ遊戯部!



「鴎星先輩、ここでーす」

かざりが、オレに手を振る。

「……この先に?」

「はい。かげのんがいます」

目の前の建築物を見上げる。

どうやら詩乃もここを突き止めたらしく、俺達は他のみんなと別行動。

……いや、むしろ俺達の単独行動なので、後で部長さんに説教くらうかもなぁ。

「さて。鴎星先輩は行っちゃってください♪」

「お前は?」

「……私は部長さん達と合流します☆」

「…………そうか」

俺は、そう言って駆け出した。



影乃を、絶対に……



**********



「分かってて止めない辺り、すごいなぁ」

鴎星先輩が走り去った場所で、私は一人呟く。

「うーん。それだけ信頼されてるって事かな?」

また一人で呟く。

……これじゃ、私が危ない人だねっ♪

さてさて、どうしたものか。

さっき先輩に言った『部長さん達に合流する』と言うのは嘘だ。

じゃあ、どうするのかって?

決まってる。

「あー……予想以上に多い……」

見張り連中の引きつけ。

たぶん、部長さん達は正面から行って、何人かを囮にしてるんだろうけど、生憎とこちらは私と鴎星先輩しか居なかったので、私一人が囮だ。

もちろん鴎星先輩にそんな作戦は伝えていない。

……まあ、気付いてたみたいだねっ♪まさに、無駄♪

私は一つため息をつく。

裏にこんなに人数割かないでよ~!

心の中で文句を言う。

……まあ、いいや。

「……ぞろぞろとやってきて……みんな暇なの?」

反応ナシ……。

こっちも話する気は無かったけど、ここまで無反応とは……。

パッと見五十人……

しかも、武器持ってるのもいるよ~。

私死ぬんじゃない?

でも……やろうか。

かげのんを助けないとね。




「かかってきなよ。私がみーんな倒してあげるっ!」




**********



連れ去られてからどれくらいが経ったのだろう。

先程の男達は、またどこかに行ってしまった。

……お父さん、心配してるかな……?

……文深さんは大丈夫でしょうか……?

そんなことを思っていると、また男達が戻ってきた。

少し離れた所で、こちらにチラチラと視線を向けながら、何か話をしている。

しばらくすると、先程私が会話をした男は、そこに留まり、その他の男達がこちらへと歩いてきた。

そして、私を舐め回すようにジロジロと見る。

「……リーダーの許可も降りたからなぁ」

「……楽しませてくれよ?」

……最悪だ……!

肌が粟立つ。

逃げようにも、手足を縛られているので動けない。

餓えた野獣のようにぎらついたら視線を向けながら、私に手を伸ばしてくる。

「……ひっ…………い、イヤ……」

自分の顔が強ばっていくのが分かる。

どんなに嫌がっても、その手は徐々に迫ってくる。

嫌だ。嫌だ。嫌だ!嫌だ……!

そして、とうとうその手が私に触れようとする。




ーーその時





「影乃にっ……触れんじゃねええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!」





そんな叫び声。

それと同時に、殴り飛ばされる男。

そして、庇うような形で、残りの男と私の間に現れた

ーー鴎星先輩。

男達は、しばし呆然としていたが、しばらくすると、勢いよく先輩に襲いかかった。

「……っらあ!」

避けて、殴る。

ただ、それだけ。

だけ、と言うのもおかしいのだが、それだけ容易く男達を倒していった。

静寂が場を包む。

鴎星先輩が緊張を緩めた。

その瞬間、先輩の背後から襲いかかる人影。

……最初に殴り飛ばされた男……!

「先輩!危ない!」

そう叫ぶも、明らかに間に合わない。

「ーーーーっ!」

悲鳴。

それを上げたのは、鴎星先輩ではない。

「ーー油断してんじゃねーよ、鴎星」

先程の男が、突如現れた統輝先輩に殴られたのだ。

「流石、親友だな。タイミング最高だぜ」

「当たり前だ」

二人がそんな会話をしていると、リーダーらしい男が低い声で言葉を発した。

「貴様ら……どうやってここに忍び込んだ。見張りも大勢居たはずだ」

その問いに、統輝先輩が答えた。

「仲間が道を作ってくれた……ああ、ちなみにコイツがどうやって入ったのかは知らん」

そう言って、鴎星先輩に指を差す。

「ん?ああ、可愛い後輩がちょっと、な」

……可愛い後輩?

かざりさんでしょうか?それとも文深さん?もしくはそれ以外……?

「ふん……まあいいさ」

そう言って、男は懐からナイフを取り出す。

「人を殺す覚悟が無いとでも思っていたのか?」

男は吐き捨てるようにそう言うと、こちらへと駆けてくる。

先輩達にも、流石に対処に困るようで、焦りの色が強く顔に出ている。



「とりゃああぁぁぁぁっ!!」



そんな時だった。

突然に飛び出す影。

その影は、勢いよく男へと突進した。

「……がっ!」

短い悲鳴と共に、男は転がる。

「統輝っ!」

鴎星先輩が叫ぶ。

その直前から走っていた統輝先輩が必死にある物を掴む。

男が落としたナイフだ。

「クソがぁ……!」

男はゆらりと立ち上がる。

不意に手足が自由になる感覚がした。

「大丈夫……?かげ」

……っ……!

「……光坂詩乃……!」

「……うん」

いつの間にやら、統輝先輩から受け取っていたらしいナイフで縄を切ったようだ。

恐らく、先程の影は……この人。

先輩達は、再び男と向かい合う形となっている。

そんな時だった。

いくつもの足音が聞こえてくる。

「……やっべ」

統輝先輩がそう漏らす。

増援。

何人もの男達が現れた。

私達は、顔を強ばらせ、焦りの表情を浮かべる。

男達は私達とは対照的に、ニヤニヤと、見ているだけで怖気が走るような表情を浮かべている。

ーーしかし、一瞬の内に、双方の表情は劇的に変化した。


「よお……楽しそうじゃないか。俺達も交ぜてくれよ?」


そんな声と共に、何人かが吹き飛ばされる。

恭夜先輩だ。

「……なっ!」

男達は驚愕する。

しかし、それで終わりではない。


「ふむ。なんだ?むさくるしいな。……仕方ない、眠れ」


そう言って男達を蹴り飛ばしていくのは、雪奈先輩。

蹴り飛ばした瞬間、次の男の背後に回って、また蹴り飛ばす。

そんな超人的な技を前にしては、人数がどれだけ居たところで手も足も出ないだろう。


「あら?やーねぇ?女の子をそんなに乱暴に扱っちゃダメよ?」


部長さんは、そう言って、華麗に男達の攻撃を避けていく。

いくつ同時に攻撃が来ようとも、一つたりとも当たらない。

まるで、攻撃を予知しているのでは無いかと思うほどに、だ。

そして、部長さんはただ避けているだけでなく、飛んでくる拳の方向を変えることで、男達同士で相討ちをさせている。

そんな先輩達に加勢する形で、鴎星先輩と統輝先輩が駆け出した

「クソッ!表の奴らは何をやってるんだ!」

先輩達と戦いながら、男の一人がそう言った。


「あ、もしかして、この人達の事ですか~☆」


場にそぐわない快活な声。

その声と同時に、ドサッという音がいくつも聞こえる。

声の方を向く。

「ーーーーっ!」

多くの人が絶句した。

もちろん私もだが、男達と私では絶句した理由が別だろう。

声の主は、かざりさん。

そこまでは、いい。

かざりさんは、先程の声からは想像出来ないほどボロボロだった。

殴られた痕だけでなく、切り傷なども見受けられた。

そして、男達が驚愕したのは、かざりさんの状態よりも、地面に転がっている人数。

ーーおよそ八十人。

たった一人でこの人数に勝利したのだろう。

しかも、その中には、刃物を持つ者も多い。


「かげのん!後ろっ!」


そんなかざりさんの登場に呆けていると、突如、驚愕に彩られた表情で、かざりさんは叫んだ。

私はその声に従い後ろを振り向いた。

「ーーあ」

そう声が漏れる。

リーダー格の男が、私の背後でナイフを振りかぶっていた。

勢いよくナイフが振り下ろされる。


ーーあ、死んだ。


そう考える。

だが、そうはならなかった。

光坂詩乃が、私を庇うようにして抱きつきながら、後ろに思い切り飛ぶ。

私は大丈夫だったが、光坂詩乃は、背中を切られたようで、少しだけ苦悶の表情を浮かべた。

一瞬の滞空の後、私は尻餅をつく。

「……大丈夫、かげ?」

「それはこっちのセリフです!」

そう言うと、光坂詩乃は、あはは、と苦笑混じりに返す。

「血は出てるけど、そんなに深くなさそうだよー」

その言葉は事実のようで、制服に血が滲んではいるが、その程度のことならば大丈夫だろう。

……しかし、状況は変わらない。

男はこちらに歩み寄ってきた。

先輩達とかざりさんは現在、この男の仲間に足止めされていて、こちらに助けに来れなかった。

為す術も見つからないままで、男は、ナイフを振りかぶり……

そのまま、振り下ろす

「ーーーーっ」

私は目を瞑り、体を強ばらせた。

………………?

いつまで経っても、刺された感覚は訪れない。

不思議に思い、ゆっくりと瞼を持ち上げた。

「…………っ!」

私は思わず息を呑む。

隣の光坂詩乃、そして男すらもが同様だった。




「……させねえよ……!」




鴎星先輩だ。

私達と男の間に立ち、左の手のひらを前に出している。

その手には深くナイフが突き刺さり、赤黒い液体が、流れ落ちている。

「……覚悟しろ」

そう呟くと同時に、右腕を大きく振り上げて、全力の一撃を浴びせた。

「ーーーーがぁっ!」

そんな声を上げて男は転がっていった。

鴎星先輩は、手に突き刺さるナイフを抜いて、止血等の応急処置を施した。

「……後であの三人にも礼を言わないとな」

鴎星先輩は、そう呟いた。

鴎星先輩の視線の先を見ると、いつの間にか現れた、小研の三人。

恐らく、足止めされていた鴎星に道を作ったのは彼女達だろう。

「かげのん、鴎星先輩」

恐らく、鴎星先輩と同様に、あの三人に男達の相手を任せてきたであろうかざりさんが駆け寄ってきた。

「なんだ、かざり?」

「……二人は逃げてください」

鴎星先輩が聞くと、少し間を空けて、かざりさんは真剣な声色ででそう告げた。

きっと、私の身体能力と精神状態、そして鴎星先輩の怪我を考慮しての発言だろう。

私達は素直に頷く。

「詩乃は?」

鴎星先輩が聞くと、「私は残るよー」と答える。

鴎星先輩は無言で頷いた。

そして、私の手を握り、駆け出した。


喧騒が徐々に遠ざかっていく。

息が切れてくるが、何故か苦しくはない。



疾走感と、先輩の手の温かみが、私の心を満たしていった。




**********



「かざり。アイツらはもう?」

恭夜センパイがかざりに聞いた。

「はい。行きましたよっ☆」

恭夜先輩は「そうか」とだけ呟いた。

現在、オレたちを中心として、誘拐犯連中がオレたちを円形に囲っている。

「しっかし……なんでこんなマンガみたいな事しなきゃならないんだ……」

オレがそんな愚痴をこぼす。

「あら?男の子的には燃える展開じゃない?」

部長さんがそんなことを言ってくる。

「物書き的にもありがたい経験ですが」

瑠璃センパイが呟くと、姫と文深が苦笑しながら頷いた。

いや、こんなベタな展開でもありがたいのか?

「スッゴいポジティブですねっ♪」

「うむ、アホみたいにポジティブだな」

かざりとセンパイの会話に全員が失笑した。

「いやいや、ポジティブ以前にこの状況でこんな会話をしているのがおかしいんですよー」

詩乃が全員の思いを代弁する。

その言葉に、「違いない」だの、「全くもってその通りねぇ」だの、「気のせいですよ♪」だとか、みんなが様々に呟いた。

……さて。



「ーーそろそろ終わらせるか!」





オレの言葉と同時に、全員が駆け出した。





**********



「アイツらはどうなってるだろうな……」

鴎星先輩が呟く。

私は「きっと上手くやってますよ」と言ってから、あたりを見渡す。

公園。

月明かりの中の公園に、私達は立っている。

「先輩」

私が呼びかけると、「何だ?」と反応する。

「なんで、私の事を守ってくれたんですか?」

私は、そう聞いた。

最初に男の一人を殴ったときも、リーダー格の男から、私を守ってくれたときも、何故私の為にあそこまでしてくれたのか……

先輩は、苦笑した。

「あー……大切な後輩だから、じゃあダメか?」

「ダメです。本当のことを言ってください」

私が真っ直ぐ先輩を見つめると、バツの悪そうな顔をする。

「別にお前を守ったのは俺だけじゃ無いぜ?……かざりと詩乃だって命懸けで……」

「私は今、先輩に質問しているんです。二人には別で聞きます」

先輩の言葉を遮って、言った。

すると、先輩は逃げられない事を悟ったらしく、諦めたような顔をしてため息をついた。

私は先輩の言葉を待つ。

すると、唐突に先輩が、優しい、どこまでも優しい微笑を浮かべる。


「約束……したからな」


「約束……?」

私が不思議そうに呟くと、先輩は先程の微笑に、一瞬だけ苦笑を混じらせた。

先輩は、私を真っ直ぐに見つめる。


「どんなに強い相手だったとしても」

……え?

「どんなに不利な状況だったとしても」

これは……。

「お前が苦しんでいるなら」

あの時の……。

「そして」

……ああ、そうか……

「お前が正しくあり続けるのなら」

私はあの時……

「いつだって」

あの、少年と……ううん……この人と……

「どんな時だってーー」

約束、したんだ。








「『俺が守ってやる』」








あの日の少年の笑顔が、先輩の横に見えた気がした。

「……ずっと、ずっと……覚えててくれたんですね」

私の頬を雫が伝う。

先輩は、やはり優しい微笑を讃えている。

「……影乃」

先輩が、私の名を呼ぶ。

「何ですか?」

涙を拭って、私が聞き返すと、先輩が、語り出す。

「俺、さ。ずっとお前に伝えたいことがあったんだ」

私は無言で続きを促した。

「あの日、お前を初めて見たときに。初めてお前の『強さ』を見たときに、お前に……」

最後の言葉は、聞き取れなかった。

先輩の独白は続く。

「……高校で、お前を見つけたときに……自分の思いを確認できた」

一拍。

「影乃」

先輩は、もう一度私の名を呼ぶ。



「俺は、お前のことが好きだ」



愛の、告白。

……答えは、決まってます。

「私は……私も……」

また流れ落ちてきた涙を拭い去り、微笑を浮かべ、私は答える。





「ずっと、ずっと前から、あなたのことが好きでした」





***



ーー繋がる想い。

約束は永遠とわに。


重なり合う二人はきっと、ずっと。








はい!どうもSetsuです!


いやー、出し切ったw


ついにカップルが誕生ですねぇ。

にしても、このDear my……編は、ゆーぎぶ開始時にやりたかったことの一つなんですよ。

いや、まあシリアス編はやりたいことがいっぱいなんですが。


そうそう、Dear my……編での主要キャラクターのイメージソングを発表したいと思います。

もともと目星をつけてた物から、最終的な出来上がりを見て決定させたのですぜ!

それでは、発表です。


鴎星

水樹奈々『SCARLET KNIGHT』


影乃

水樹奈々『innocent starter』


です!

カップルなので、同じ歌手から曲を選んだよ!

鴎星が意外と歌詞と合ってるんだよね。

あ、曲の歌詞とキャラの設定が出来るだけ一致するような曲を選んでるので、こいつはこんなキャラなんだなーと思っていただければと。

まあ、影乃はストーリーに合った曲にしてますがね(笑)


なお、次回もイメージソングの紹介を少しばかり。

まだ、あいつが居ますよね。


ちなみに、今回の話にエンディング曲を付けるとしたら、


BUMP OF CHICKENさんの『ダイヤモンド』


でしょうか。

自分のイメージとしては、しんみりというよりも、ここから始まっていくんだ!、というイメージの話なので、こういった選曲に。

歌詞もいいかんじですし(笑)


まだ、書きたいことはたくさんあるのですが、グダグダと書いていてもアレなので、そろそろ終わらせましょう。


なんだか、Dear my……編が終わったみたいな雰囲気になってますが、あと一話残ってますのでw


感想・アドバイス待ってます!

それでは、また次回!!



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