表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/33

第一三話 Dear my……『過去-はじまり-』

今回はプロローグ的な物で、短めです。



夢を見た。


よく見る夢だ。


子供の頃の出来事。


**********


どこにでもあるような公園。

私がそこを通りがかったとき、自分よりもさらに幼い子供が虐められていた。

虐めているのは数名の男の子。

自分より2つほど年上だろうか。

自分とは、圧倒的に体格が違う。違いすぎる。

もし、今、彼らに関われば、確実に自分は恰好の獲物になってしまう。

だが、そんなことを考えながらも私は助けてしまった。

不意をついたこともあってか、子供は無事に逃がすことが出来た。

……しかし、自分は捕まえられる。

少年達は、初めこそ苛立ちを見せていたが、しばらくすると、私を見ながら、極めて愉快そうに笑う。

下卑た笑みだ。

その笑みに、私の肌が粟立つ。

ーーそして

『うあっ……!』

1人の少年が、突如として、私を蹴り飛ばす。

そして、それを合図として、他の少年達も、私を痛めつける。



ーー痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。



やめて、と叫ぶ。

……いや、叫んだつもりだったが、かすれた声が、喉の奥から漏れただけだ。

少年達は笑う。嘲う。



ーー痛い……痛い……!痛い!痛い!痛い!



この状態が、永遠に続くのではないか。

そんな思考が、頭の隅に芽生える。


……だが、そうはならなかった。



「ーー喰らえっ!」



鈍い音が響く。

それは私が殴られた音ではない。

次の瞬間には、誰かが地面を転がる音。

その音と同時に、私への攻撃が止まる。

そして、私に手を出していた少年達の、焦ったような声。

しばらくすると、彼らが逃げるように走り去る音がした。

何が起こったのだろう……?

そう思い、私は顔を上げる。

そこに居たのは1人の少年。

その少年が口を開く。

『大丈夫か?』

私は、その問いに対し、立ち上がるということで、肯定を示す。

彼はそれを見て、少年特有の無邪気な笑みを浮かべる。

『ありがとう……ございます』

私は感謝を伝える。

彼は、気にするな、と答える。

そして、少年は私に問う。

『何で虐められていたんだ?』

私は、一拍間を置いてから、説明した。



『君は凄いな』

説明を終えた私に、少年はそう言った。

私は驚いた。

呆れられると思っていた。

無謀と理解しているのに行動をするなど馬鹿でしかない、と。

……しかし、そんな私の予測とは、全く以て正反対の言葉。

そんな私の様子に気付いたらしく、少年は言う。

『だってさ、ちゃんと冷静に予測を立てて、明らかに無理だって分かったのに、それでも助けたんだろ?』

私は首肯した。

それを見た少年は続ける。

『だったら……やっぱり君は凄いぜ。誰だって傷つくのは嫌だ。だけど、君はその思いを投げ捨てて、他人を助けたんだ。……そんなこと出来るヤツなんか殆どいない』

褒めて貰えたことが嬉しかった。

……でも、私は少年が思っているほど、自分は立派では無いと思った。

為す術もなくやられる自分が情けなかった。

悔しかった。

ーーそれに

『あなたの方が凄いです』

そう、私には彼の方がよっぽど凄いと感じていた。

彼は、私と同じ事をした。

だが結果は真逆。

彼の残した結果は完璧だ。

私を助け、少年達を追い払い……

『俺は男だからな。……女の子1人守れないようじゃやっていけない』

彼は当然のようにそんなことを言った。

……やっぱりこの人は凄い。

私はそう思う。

陳腐な言葉なのかもしれない。

だが、実際に行動をした彼の言葉はそんな安いものではない。

……少なくとも私はそう感じた。

そして、少年が私のことを誉める理由が理解出来た気がする。

ーー実行をする勇気。

それを持っていることは素晴らしい事なのだ。

だけど、私はもうーー

『二度とその勇気を出せない……か』

私は驚きを露わにしながら少年の方を見る。

自分を見透かされた、何故か少し怖くなった。

私の見た彼は、優しい苦笑を浮かべていた。

……そう、私はきっと、もうあの勇気を出せなくなった。

恐怖が……芽生えてしまったからだ。

言うなれば、トラウマだ。

きっと、私がもう一度同じ状況に立たされた時、足が竦んで動けなくなるだろう。

あの、鈍い痛みを思い出してしまうだろう。

あの、屈辱がフラッシュバックするだろう。

ーーだから、私はもう……

『だったら』

ダメだ。

そう思った瞬間、彼がそう言う。

『だったら、さ。……どんなに強い相手だったとしても、どんなに不利な状況だったとしても。お前が苦しんでいるなら、そして、お前が正しくあり続けるのなら、いつだって、どんな時だってーー』





『俺が守ってやる』





彼は、そう言って無邪気に笑う。

今でこそ、自分は単純だ、と思う。

だが、間違いなく私はその言葉で救われた。

そして、この言葉のおかげで、今の私が出来たと言っても過言ではない。


**********



……私はこの暫く後にある事情から、この場所と、少し離れてしまったので、彼と出会う事は二度と無かった。

……もう、顔もほとんど覚えていない。

ただ、彼に勇気を貰ったのは確かだ。



私は再び、深い眠りの海に沈んでいく。






……彼は今、何をしているのだろうか。





はい、Setsuです!


さあ、『Dear my……』編、ついに始まりましたよ!

前にも言いましたが、今回を含め、全五話の予定です。


ちなみに、タイトルのことですが、Dear my……の隣にある『』の中がサブタイトルです。

……え?

章管理のところで、『Dear my……』にして、サブタイトルを普通にしろって?

……いや、『Dear my……』にしたらさぁ、他の部分も章管理で設定しないといけないからね。

他の部分、章管理でつける題名とか無いし……


まあ、それはさておき。

この『Dear my……』編、楽しんで頂ければと思います。

ベタな展開に次ぐベタな展開の連続ですが、優しい目で見守って頂ければと。


感想、アドバイス等お待ちしております。

あと、誤字の報告もよろしくお願いしますね!


それでは、また次回~♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ