第一二話 かざり「あーめあーめふーれふーr」雪奈「雨なんか降らなくていいーーーー!!」かざり「!?」
作品内でようやく6月に突入。
ということで、こんな話。
「……雨だ」
「雨だな」
「雨だよー」
午前中の授業が終わり、外を見ると、朝から降り続ける雨。
六月になり、急に雨が続いた。
「いやー。梅雨だよー」
「雨だと外で遊べないぜ……」
鴎星のテンションが若干低い。
そんなことよりもメシを食おうということになる。
オレと鴎星は、購買で買ったパン。詩乃は弁当だ。
しばし、談笑しながら食事をしていると、鴎星が飲み物を忘れたらしく、買いに行くために席を立つ。
…………そうだ。
唐突に、オレはあることを思い付く。
……さて、うん。焼きそばうめぇ。
詩乃が横で「うわぁー」とか言ってるけど気にしない。
しばらくすると、コーヒー牛乳のパックを持った鴎星が帰ってくる。
「おう、早かったな」
「…………ああ」
鴎星はそう言って紙パックを開け、コーヒー牛乳を口に含んだ。
そして、手元のパンを掴み、頬張った。
「鴎星。そのパン斬新だな」
オレがそう言うと、鴎星は答える。
「ああ……焼きそばパンの焼きそばを抜かれたバージョンなんて、すげえよな。この焼きそばのソースの風味でパンを食さねばならないなんて、なんという虚しさだろう。最高だな」
満面の笑みでそれを言い終わると、一度そのパンを置き、もう一度コーヒー牛乳のパックを持つ。
「ところで統輝、お前のパンも斬新だな」
そう言ってオレに向かって、コーヒー牛乳のパックを近付けて……
バシャッ←オレの持っているカレーパンにコーヒー牛乳をぶちまけられた音。
「…………」
横で詩乃が苦笑している。
「……いやー、鴎星。マジで斬新だわ。このぐしょぐしょに濡れたパン。そして、カレーと混ざる甘い液体。こんなに見事な不協和音を奏でているパンは初めてだ」
オレも満面の笑み。
二人共が笑顔のまま静かに立ち上がる。
そして……
「やんのかゴルァッ!!」
「上等だボケェッ!!」
同時に胸倉を掴み、互いにガンを飛ばす。
ちなみに今のセリフは、鴎星→オレ、の順番だ。
クソがっ!!
なんだこれ、マッズ!
甘い、辛い、食感が気持ち悪ぃ!!
見事に三拍子揃ってマズいよ!
やってくれやがったな、鴎星……!
「表出ろや!統輝!」
「やってやるよ!この野郎!」
そう言って、廊下に出るため、教室のドアを開ける。
開けたドアの先に居たのは、詩乃。
……て、え?さっきまで後ろに居たよな!?
ニコッ←恐らく雪奈センパイが作ったであろうカレーを手に持っている。
「「ごめんなさいでしたぁー!!オレ達喧嘩なんてしませんので許してください!」」
オレと鴎星は即座に土下座した。
プライドなんて必要ないよ。
命が一番大事だからね!
なんというか、笑顔が以上に怖かった……
それを見た詩乃は、カレーを仕舞う。
……よ、良かった。
背筋を伝う嫌な汗を感じる。
……マジでアレはトラウマなんだよ……。
……ん?なんでアイツがあんなもん持ってるんだ?
**********
「雨ですね」
「雨やな」
私が呟くと、文深さんも呟く。
「雨だねっ☆」
……………………。
「ところで文深さん。昨日の事ですけどね……」
「あはは。ホンマかー。あ、そう言えば……」
「無視するなーーーーーーーーーーーー!!」
私達が談笑していると、何か叫び声が聞こえてきた。
……気のせい気のせい。
「気のせいじゃないからっ」
え?心を読まれてなんかいませんよ。
ええ、きっとその辺の人の会話がたまたま私の心の声と会話しているかの如く繋がっただけです。
「文深~。かげのんが~……って言っても反応するわけ無いよね……きっと発案は文深だろうから……☆」
無理に『☆』付けなくても……。
……いえ、別に反応してなんかいませんよ?
「……どうしたんや?」
文深さんがそう言った。
「文深……反応を返してくれるなんてっ♪」
そう言って、かざりさんが文深に抱きつこうと飛び付く。
「どうしたんや?影乃ちゃん、そのオカズ、むっちゃ美味しそうやん」
かざりさんは空振って、ズザザザ~と地面を滑っていく。
そして涙目になりながら、私達に訴えかける。
「イジメ!?」
「何のことですか?」
私は笑顔で答える。
「かげのんって結構いい性格してるよね……☆」
「心外です」
……そして『☆』を無理に付けないでください。
「いやー。コレが無いとキャラが薄くなるからねっ♪」
「苦労してるんやな」
だから、心を読まないでください。
「……しかし、雨やなー」
その言葉に、私とかざりさんは外を見る。
「……雪奈先輩達って、雨の日は?」
文深さんが私達に問いかけてくる。
「あー。そろそろ限界だって、部長さんが……」
なんというか、雨の日が長い期間続くと、雪奈先輩と恭夜先輩が発狂するらしい。
……困った人達ですね。
……あの人達、教室では何してるんでしょうね?想像ができません。
**********
「ふううううううぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「いえーーーーーーーーーーーーーい!!」
「フハハハハハハハ!!」
「ぶらーーーーーぼーーーーーーーーーう!!!」
「もう何も怖くないっっっっっっっっっ!!」
カオス。
まさにその言葉がピッタリよねぇ。
あと、なんかマミりそうな人が居るんだけど。
あら?マミるって通じるわよね?
……まあ、分からなかったらググって。
「さて、解説のルリ。コレはどう思いますか」
狂ったようなクラスメートたちを遠い目で見ながら、隣のルリに言う。
「やはり、ユキちゃんと恭夜を中心に、様々なコントラスト等を演出していますね」
え?なんでツッコミを入れないのか?
こんなのツッコんでたら私達の身が保たないのよ!
「まさにカオス。しかし目を凝らすとそこに見えてくる深淵なるテーマ、そう、カオス」
「なるほど。コレはカオスであるようでカオスで無く。実の所はカオスの中のカオスであり。つまりカオスはカオス以外に有り得ないというカオスなのね」
……こんなに暴れ回っているのに、発狂するってどういう事なのかしら……。
あら?状況が意味分からない?
……うん。私自身よく分かってないから。
説明できないから。
本当にカオスってことしか言えないから。
……あのルリですらカオスという表現が思い付かないほどのカオス。
それが今の状況よ。
……何だろう。泣きたくなってきた。
意味が分からない。
この空間の意味が分からない!
え?何コレ?
今更ながら何この空間?
いや、もう何が意味分からないのかも意味分からないわ!!
「……ぬあああああああああああ!!」
「チサちゃん!?」
もういいわよーーーーーーー!!
暴れてあげるわーーーーーーーー!
「チサちゃん!?落ち着いてください!ちょ、お願いですから!あなたのキャラが壊れますから!そして私を一人にしないでくださいーーー!!」
「ぬあーーーーーーーーーーー!!……はっ。私は何を……!」
……お、恐ろしいわ……!
いつの間にか私まで飲み込まれるなんて……!
私はルリに礼を言う。
「……チサちゃん。ちょっと私は別の所に行ってきます……なんだか、ここに居るとおかしくなりそうで……」
そう言って、ルリは教室を出て行く。
……私もここから離れようかしら……
そう思い、私も外へ出て行く。
……どこへ行こうかしらねぇ。
**********
「かげのちゃーーーーーーーん♡♡♡」
「きゃあああああああああああ!!」
またですか!瑠璃先輩!
週三くらいのペースで私を襲いに来るんですよ!この人!
そして気が済むと何事もなかったかのように帰って行くんですよ。
「はぁ……はぁ……可愛いです♡」
「ちょ、かざりさん写真取らないでください!」
「うん?何のことかな、かげのん♪」
私はいつものように必死に抵抗する。
……鍛えましょうか……?
ふと、そんなことを考える。
……いや、無駄でしょうね。この人、こういうときだけ異常に凄いですから。
「……瑠璃先輩×影乃ちゃん……いや、あえての逆転もアリやな……」
文深さんが怖い!
今、なんとなく、統輝先輩と鴎星先輩の気持ちが分かった気がします!
「ていうか、早く帰ってくださーーーーーーい!」
**********
「さて、放課後な訳だけど」
部長さんがそれだけを口にし、雪奈センパイが続きを言う。
「雨だから遊べないじゃないかっ!」
バンッと机を叩いてそう叫ぶ。
……そう言われてもなぁ。
「どうしようもないですって、コレばっかりは」
オレがそう言うと、センパイは机に突っ伏す。
「私は外で暴れたいんだ……!」
もう限界が近いな。
発狂されたらたまったもんじゃない。
「……そんな訳で考えたのが、コレだ」
恭夜センパイが唐突に口を開き、少し大きめの紙に見出しを書いて、それを見せてくる。
「なになに……『この際逆に雨の良いところを聞いて来ちゃおうぜ!』」
鴎星が見出しを声に出して読む。
「……まあやることも無いし良いんじゃない?」
部長さんがそう言ったのがきっかけで、全員が立ち上がる。
「……でも、誰に聞くんですかっ♪」
かざりがそう問いかけると、部長さんは即答する。
「それはもちろん、あの子達よ」
**********
「ということなので、雨の良いところを教えろ」
「どういうことですか」
はい、みんなの予想通り、小研に来たぞ。
現在、ドアをノックしたら瑠璃センパイが出てきたので、記者のように聞いてみたという感じだ。
~事情説明中~
「なるほど、それで私達の所に来たと」
「そうそう。……あ、このお菓子すっごい美味しいわねぇ」
「あ、それ私が作ったんですよ。……雪奈先輩はどうしますか?」
「ふむ。コーヒーを頼む。あ、ブラックな」
「俺も頼む」
「はい、わかりました」
「少しは遠慮してくださいよ!」
瑠璃センパイが叫ぶ。
ちなみに、今お菓子を食べているのが部長さん。姫にコーヒーを頼んだのが、雪奈センパイと恭夜センパイ。
残りのメンバーは遠慮して、三年生達の座っている少し後ろで立っている。
「なんなんですか!急に部室に押しかけられたと思ったら、『雨の良いところ教えろ』とか意味分からないこと言われて、その上、図々しくもお茶してるってどういうことですか!」
「なんかスイマセン……」
オレがそう言うと、瑠璃センパイは少しバツの悪そうな顔をする。
「……はぁ。ともかく、雨の良いところを教えたら帰ってくれるんですよね」
ため息混じりに聞いてくる。
それに対してオレ達は頷く。
……どうでもいいことだが、瑠璃センパイはさっき部長さん達に文句を言っているときも、ずっと手元の原稿用紙に視線を向けている。
「……相川君。ここ状況描写甘いからちょっと修正して」
そして、真面目に執筆をしている部員にアドバイスや注意等をしている。
……マジで悪いことしてるな。
何でうちのセンパイ達はこんなにも図太いのだろうか。
……謎だ。
ちなみに、文深も真面目に執筆中のようだ。
ここからその様子が伺える。
「……ふむ。それで、雨の良いところは?」
瑠璃センパイはしばし黙考する。
……そして、答える。
「……そうですね。雨の日は泣いてもいい、と言うことでしょうか」
「ふむ。つまりは?」
「雨は涙を隠してくれますから」
なるほど。
なんというか、物書きっぽい答えだな。
そんなことを思っていると、今度は姫に問いかけた。
すると、姫はいつもの笑顔で答える。
「雨が上がれば、その時に希望を噛みしめられます」
おお。これまた物書きっぽい。
「瑠璃先輩、ここなんですけど……」
ちょうどその時、瑠璃センパイにアドバイスを貰うために文深がこちらに来た。
ということで聞いてみた。
うーん、としばらく唸ってから、文深はこう答えた。
「苦難を乗り越えて、花がより美しく輝きます」
ほう。
なんというか、この三人は流石としか言いようがないな。
ということで聞き終わったので、オレ達は外へ出る。
………………。
無言。
「あのさ。言ってもいいか?」
恭夜センパイがそう言うと、全員が無言で続きを促す。
「……最初に小研に来たのって、ミスじゃねえか?」
「「「「「「確かにっ!!」」」」」」
だって、あれ以上に綺麗な回答とかありえねえだろ!
少なくともオレ達の知り合いにそんなことをアドリブで出来る奴はいない!
………………。
再び、無言。
「…………カラオケ行くか」
恭夜センパイがそう言う。
「……いいですね」
「いきましょー☆」
「ですね」
「うむ」
「駅前の所でいいわよね?」
「あ、はい。そこで」
うん、普通に楽しかったさ。カラオケ。
はい。Setsuです。
カラオケって楽しいよね!
え?どうでもいい?
サーセン。
さて、次話について少し。
えー、以前私の活動報告では言っていたんですが、次話からしばらくはシリアス編に突入します。
今のところ、全五話の予定です。
多少の変更はあるかもしれませんが(笑)
それでは今回はこの辺で、さよならー!




