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万能鍵にまつわるエトセトラ

一部開けることはできません。

もちろん私の家はダメです。


開かない扉。

開かない宝箱。

開かない格子。


何でも開けて見せましょう!

万能鍵!!!


とか宣伝文句がつく鍵。


世の中には鍵がないからと開かないものがいっぱいある。

誰だよ、鍵の管理者は!

って私はいつも言われる度に思う。


万能鍵はすぐできるけど、置いておけるものではない。

常温だとすぐ固まっちゃうから、購入者には鍵を魔法がかかった暖かい布にくるんで渡す。


特殊な粘土と自在に形を変えることができるソフトゴムでできているため、空気に触れて30分すればガチガチになっちゃう。

だから、使う間際に布から取り出してくださいって言って渡すんだけど、「使えなかった!!」と文句を言いに来られたことが何回かあった。

ひどい時は固くなった鍵を投げつけられたこともある。

その時は目の付近に運悪く当たり、暫く眼帯をしていた。


だから、言われたら売るってことにしたんだけど……。



「だから、何で説明しないんだよ!」

「お渡す際に説明はさせていただくようにしてますし、布にも注意書があったかと思いますが…」

「布の注意書なんか誰も見ねーよ!説明をしてないそっちが悪いんだろ!」


誰か30分近く続いているこの押し問答を止めてほしい。


閉店間際、この冒険者さまはやってきた。朝に万能鍵を売ったからもしや、と思ったら案の定…。



半日かけていった遺跡の最深部で使うはずだった万能鍵。

なくしちゃいけないと仲間の僧侶が持っている巾着にいれていたら固まってたとのことだった。なすすべもなく、最深部から戻りここにやってきたとのこと。

しかも、ここにやってくる間にその遺跡が攻略されたと高いお金を出して買った地図に知らされ、怒りが頂点に達したようだ。


まぁ大分怒ってるし、今回だけは代金を返すしかないかと思っていたんだけど、彼はそれ以上のものを欲しがった。


冒険者が欲しがったのは万能鍵の返金はもちろん、新しい万能鍵、遺跡の地図代、更に自分達の1日の労働賃、プラス賠償金だ。


ざっと提示された金額は


「3万ゴールド!?」



「安いだろ?負けてやったんだぜ?」


ちなみに内訳は

鍵代:2500ゴールド

地図代:3000ゴールド

冒険者達の賃金:15000ゴールド

賠償金:10000ゴールド。

500ゴールドはおまけらしい。



「俺はギルドでは中堅なんだ。雇ったら本当はもっと高いんだぜ?」


確かに冒険者証を見せてもらったら、そこそこのギルドのそこそこのランクだった。

まぁベテランに入るだろう…………ん?てことは…使用頻度がそこそこあるこれは…


「使い方知ってるんじゃ…」


目の前の冒険者は私の呟きを聞いて固まった。

「しまった!」と顔に書いてある。


頭が悪いのかこいつは!

この揉めた時間を返せ!


頭の中で文句をめちゃくちゃ言ってから、私は一息吸った。


「今回は万能鍵の代金はお返しさせていただきます。2500ゴールド。こちらで今回は許していただけないでしょうか?」


あくまでも相手を上にして、ここで手を打つことにした。

まぁ棒読みで言ったけど。


こういったタイプは怒らせると剣を抜きそうで怖いし、こちらがギルドに報告したりすると調査官が来たりして面倒くさい。


「ちっ!」


お金を乱雑に掴むと、男は腹いせに近くの机に置いていた商品を手で払いのけ、落としていった。


ガシャン!!と色とりどりの瓶が割れ落ち、中身が混ざり、とどめ色になっていく。


男は「ざまあみろ!」といった表情で優雅な足取りで去って行った。


怖い。


すぐに鍵を閉めて、身の安全のために武器を探した。

フライパンしかない!!


(も〜、なんでフライパンしかないのよっ!)

仕方ないからフライパンを持っておこう。そして、明日になったら護身用の武器を買いに隣に行こう。


10分くらい隠れていただろうか。

もう流石に来ないだろうと私は自分の部屋へ戻った。

後片付けは明日しよう。




〜万能鍵のつくりかた〜


材料(1個):特殊粘土ちょっと。ソフトゴム少し。


採取地:両方とも業者から買う。

備考:何も言いたくないくらい。2500ゴールド。くるむ魔法の布は欠かせない程重要。

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