その22
攻撃力を上げたため、多少は暗黒竜の体力を減らすことができたようだ。本当に微々たるものだが。それを地道に何回も繰り返していく。
勇者達はいつの間に話し合ったのか、全員が俺とガイツのサポートを中心に動いている。防御力向上のレアアイテムやハイポーションを惜しげもなく使ってくれている。
「よし!!両翼とも動かなくなったぞ!」
竜の体力は残り三分の一といったところだろう。一気に畳みかける。
あともう少しで!
「小僧!焦るな!」
「わかってる!」
前回とは違う。生きて帰ると決めた。あいつを連れ戻しに行くと。
だからだろうか、気持ちは昂ぶっていたが、冷静な判断を下せる自分もいた。
翼が動かなくなった竜は死角が多くなった。身体が重く動きづらいようだ。
尻尾と口からの炎で主に攻撃してくる。
「脇腹を狙え!」
「わかった!」
勇者からの助言を受けて横に移動すると同時に後ろに下がり、少し呼吸を整えた。
「流石に疲れたか?」
「!!」
「気配に気づかないなんて相当だな」
そう声をかけてきたのは騎士隊長だった。
眼帯して薄暗い雰囲気を身に纏った隊長は鎖を持ち出した。
「次会う時は竜退治が終わった時と言ったが、道具屋に逃げられたって聞いてな」
くつくつと笑い、騎士隊長は鎖を回し始めた。投げて尻尾か口の動きを封じるつもりだろう。
「お前が死んだらその話聞けなくなるだろ?」
だから手伝いに来た、と言った。
こいつは変わってない。それがとても嬉しかった。
「そうか。これが終わったら存分に話してやる」
鎖が投げられて竜の尻尾に絡みついた。
「ギャァァァァァ!!!」
竜が鳴き叫ぶ。
「地下バニーが『特製で作ったの』って言ってたが凄いな」
「……あいつが?」
底知れぬ何かを感じて俺と騎士隊長は押し黙った。
「ま、お前は行け。仇討ちたいんだろ?」
腰にぶら下げている剣を見る。今まで持っていたレア物の剣を騎士隊長に預け、俺は古い剣を抜いた。
「尻尾をまず攻撃する!!」
「わかった!」
叫ぶと同時にガイツが走ってこちらへ移動してくる。
「武器屋さん!武器に強化魔法をかけます!」
僧侶が叫び、剣が光輝いていく。それに加え、防御魔法・行動力上昇魔法・命中率上昇魔法と立て続けにかけていく。
「ありがとな!」
「……っ!いいえ!」
全体ステータスが大分あがった。これなら行ける!自分が知っている中で最強の攻撃を放つ。MPの消費量は半端ないが、一気に残りの体力を減らすことができた。
「武器屋!」
勇者がすぐにMP回復薬を渡してくれた。口に含むとみかんの味が広がる。
「この味……」
「ほら!もう少しだぜ!」
ガイツも攻撃を繰り返し、魔法使いはウィンディーネで燃えた木々を消火している。槍使いは僧侶を守りつつ、竜に攻撃していく。
「俺は、恵まれてるな」
本当にそう思う。俺は剣をぎゅっと握りなおした。竜はもう弱っている。恐らく次のこの攻撃で倒せるだろう。
「ほら、行け!!」
ガイツも槍使いも魔法使いも僧侶も騎士隊長も。動きを止めて俺を見ている。
迷わず、俺は竜の眼前に剣を突き刺した。
――シャァァァ
か弱い短い鳴き声で竜は灰になって消えていった。カラン、と黒い何かが地面に転がっていた。
「石?「触るなっ!」」
拾おうとしたのを勇者に叫ばれ止まる。勇者は急いで走ってきてその石に聖剣を突き立てた。
焼けるような音がして、石は蒸発する。
「あれは魔王の魂の一部なんだ。触ったら危なかった……」
勇者はそう言って汗を拭う。剣を鞘に入れる音で俺は地面に向けていた視線を勇者へと向けた。
「終わったのか……」
「ああ、終わったんだよ」
「そっか、そうだよな」
頭が真っ白になった。
ただ、目が熱い。
誰も見ない振りをしてくれてるのがありがたかった。
「あ……太陽!太陽が出てる!!」
空を見上げると、太陽を中心に波紋を描くように雲が消えていく。
やがて雲一つない真っ青な空が広がった。




