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最終番外編:武器屋視点、その1

ちょっと長くなる予定の、番外編連載です。これが終了したら『魔術道具をつくってみよう』は完結になります。

花が色々咲き始める季節。

この日は朝から暇で、今は客が誰もいない。


「剣でも研くか」


この時間を使って商品の手入れをしようかと棚に置いてあるロングソードを一本手にとった時、ドアが鈍い音をたてて開かれた。


「いらっしゃい」


中に入って来たのは大人しそうな少女。


「……あの、はじめまして。私、今度隣で道具屋を開店することになった者です。前いた方が引退されて…」


これが初めて会った時だった。


「ああ、聞いている。よろしくな」


明らかに俺を怖がってそうな態度に苦笑いしながらもできるだけ優しく聞こえるように挨拶を返せば、少しほっとしたように笑い返してきた。



以前隣にいた道具屋は豪快な婆さんだった。だいぶ歳をとったから引退すると婆さんが挨拶に来てくれたのは一昨日。


それからすぐ越してきたらしい。この町の治安はいい方だが、一人で大丈夫か、こいつ?


「隣になったことだし、何かあったら遠慮するなよ。あと、堅苦しいのは嫌だから普通に話せ」


そう言うと、先程より表情をもっと崩して「……うん、ありがとう」とはにかんだ。



妹みたいだ。



妹がいるわけではないが、可愛い妹を持つ兄はきっとこんな気持ちなんだろう。


(少し気にかけとくか)


そうして隣に新しい道具屋が開店した。




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