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武器屋との再会:2

「あっ!!嬢ちゃん!」


ガイツさんは驚いた表情をして足早に私のところへやってきた。ちょっと髭が伸びた彼は「本物か」と私の頭を撫でまわす。


「ガイツ」


イクダールさんが窘めるとガイツさんは「悪い悪い」と手を引っ込めた。

頭をなでる仕草は武器屋を思い出してしまう。撫で方は全然違うけど、懐かしさに泣きそうになる自分にちょっとびっくりしてしまった。


「この子、ちょっと治安が悪い町へ行商解除の手続きをしに行かないといけないんだけど、ついていってあげてくれない?」


「いいぜ。なら、この町に戻ってくるんだよな、勿論」


勿論、の部分を強調してガイツさんが言うとイクダールさんは「ええ、勿論、ね?」と同じように強調して私に問いかけた。


「え、でもお店ないし、あの…はい、そうですね、戻ってきます」


長い物には巻かれよ。

どこからかそう言う声が聞こえた。


そうするしかなさそうだ。




ペガサスの羽で前の町へ行くと、こちらも雨が降ってきていて、行商をしていた二人はいなくなっていた。お礼も言いたかったし、イクダールさん二号をガイツさんに紹介したかったなぁ。

そしてギルドへと向かって、解除の旨伝えると。


「じゃあ、解除手数料3000ゴールドな」


規定では存在しない手数料もここでは発生するようで、朝と同じように三人の男に囲まれた。


良かった、イクダールさんの言う通りガイツさんについてきて貰って。

一人だと絶対払わないといけなくなっていただろう。


「手数料とかいるのか?」


ガイツさんは目の前の男達を気にすることなく私に尋ねてきたので、私は首を横に振った。


「こちらが破損・破壊行為をしたとか規律違反をした場合は発生しますが、今回はしていないので……」


「俺達の心が痛んだからその手数料な。解除手続きされるなんて、涙が溢れてとまらねぇよー」


下品に笑う男達を見て、ガイツさんはため息をついた。そしてはっきり言った。


「馬鹿か、お前らは」


その一言にカチンときた男達は「あぁ!?」とガイツさんを睨みながら扉付近から離れて受付へと向かう。

受付机の下から大きな箱を取り出して、これ見よがしに武器を取り出し始めた。斧にトンファーに大剣。


因みに全部で10200ゴールド。

ガイツさんの今日持っている剣はオリハルコンの剣ではなく普通の剣だけど、楽勝の相手だろう。


「嬢ちゃんは下がっていろ」


いつでも逃げることができるようガイツさんは扉の近くに移動するよう顎で私に合図した。


「逃がすかよっ!」


トンファーを装備している一人の男が突進するのをきっかけに他の二人もそれぞれ攻撃を仕掛けてくる。

ガイツさんは最初に突進してきた男が体当たりしてくる直前にしゃがみ込み、剣の柄で男の顎を強打した。


「ぐわぁぁあっ!!」


鈍くて大きな音がする。男は顎を押さえ怯み一歩下がったが、ガイツさんは逃がさず、今度は首筋を鞘で思いっきり叩いた。そのまま男は横に飛ばされ、壁にぶつかり動かなくなる。男が攻撃する暇すら与えなかった。


一息つく間もなく続いて二人目、斧を持った男はいきなりガイツさんに向かって斧を投げた。そしてガイツさんがそれを避けている一瞬の隙を狙って懐に飛び込み、もう一つ隠し持っていた短剣を取り出し、心臓を確実に狙い刺しにかかった。


「ガイツさんっ!!」


思わず叫んでしまったが、ガイツさんは、にやりと笑い、足で男の胸ぐらを思いっきり蹴とばした。


もう少しでガイツさんの心臓に刺さる筈だった短剣は天井に飛んでいき、そのまま突き刺さる。そして男はテーブルに勢いよくぶつかって気絶してしまった。

すごい。私が今まで見たことがある冒険者の戦闘の中でもその動きは別格だ。


さて、最後の男は……と思ったら首筋にひんやりしたものが当たった。



「おっと、動くなよ」


冷たい声が右上の方から聞こえる。ちらりと見てみれば案の定三人目の男。そして、私の首筋に当てられているのは大剣だった。大きいその剣は幅が私の首と同じくらいで、私の頭と胴を軽々と切り離すことができそうだ。


思わず叫んでしまいそうだった。だけど、叫び声がその場に響くことはない。

咄嗟の時は声が出ないっていうけど、本当だ。

文句を言ってやりたかったけど、頭が真っ白になって声が出ない。

代わりに怖くて涙が出てきた。


「いいねぇ。俺、女の泣き顔大好き」


ペロリと男が私の頬を舐める。

気持ち悪い!!

更に涙が零れた。ガイツさんは私という人質がいるため、動けない。迂闊に相手を刺激してはいけないから言葉を発さない。だけど、男を睨んでいる。それは相手に優越感を与えたようで、男はにやりと意地の悪い顔で笑った。


「俺に土下座して靴を舐めて謝れば、この女は返してやるよ」


ガイツさんはそれには返事せず、投げナイフを懐から取り出す。近いこの距離なら外すことなく当たるだろう。ガイツさんはレベルが高いし、それは間違いない。ただ、何割かの確率で私は死ぬだろう。


色々と複雑な思いが胸をよぎったが、最終的に思ったのは


『死にたくない』


その一言だった。

こんなことなら3000ゴールド素直に払っておけばよかった。町を出なければよかった。武器屋に好きって言葉に出して言えばよかった。


武器屋に会いたい。


こんな状況なのにそう思ったのがいけなかったのか空耳まで聞こえてきたようだ。


「貴様、覚悟はいいな」





大剣は敏捷性が落ちるが威力は大きい品物。値段が高ければ高いほど、大きさのわりに軽くなる。あ、『金の大剣』は別。あれは実戦向けではない。高いし重いし、威力もそんなにない。

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