旅立ちの終わり:2
一瞬で懐かしい町に辿り着いた。一週間とちょっとじゃ町の様子も変わることなく、私が出た時のままだ。
年季の入った町の看板。
近くには町の名前を言うのが好きな少年がいつもの様に立っている。
そして。
「わっ!!」
後ろから私を抱き寄せたのは。
「おかえりなさい」
さっき別れた顔と瓜二つな顔の持ち主、イクダールさんだった。
●●●●
「武器屋は一緒じゃないの?」
さらっと言われた言葉の意味が分からなかった。
首をかしげるとイクダールさんは「あぁ」と納得いったように教えてくれた。
「彼、今日はあなたを探しに行ってくるって朝、出て行ったのよ。夕方には帰ってくるから待ってなさい」
無事だったという安心感、私を探してくれているという嬉しさ、会えなくて残念という気持ち、会えなくて良かったという安心感。それらが一気に心の中に溢れだした。
表情に出ていたのだろう。イクダールさんは苦笑いをしている。
「暗黒竜を退治したって聞いて。で、怪我をしている人がいるって……だから」
「そうよ。うまく事が運んで、あなたが勝手にいなくなった三日後くらいかしら、一時間くらいで討伐が終わったわ」
「えっ!?一時間?はやいですね」
「勇者とその一行がいたから。あとガイツもフル装備で行ったのよ。剣はもとより、ドラゴンアーマーに神々の盾、ドラゴンヘルムに……とまぁ完全装備。魔王でも倒せるんじゃないかしら」
「すごい、総額いくらだろう……」
「値段を気にするのは完全に職業病ね。それは置いといて、怪我をしたのは勇者の連れの僧侶よ。まぁ、意識は回復したし大丈夫でしょ」
「そうなんですね……じゃあ、私はこれで…」
「帰らせると思う?」
「えっと……」
「さて、説教の時間よ」
それからのイクダールさんは行動が早かった。
私の道具袋を取り上げて、ギルドへ連行。しかも連れて行かれたのはギルドの地下室。
ギルドの地下室は一定のレベル以上になった冒険者しか入ることができない。足を踏み入れるのは初めてだ。
明らかに上と雰囲気が違う。
バーカウンターと四つテーブルがあり、薄暗い室内に散らばって座っている人達は、レベルが高いって私ですら解る。
イクダールさんはカウンターでお酒を作っている渋い中年の男性に「部屋借りるわね」と声をかけて、私を奥の方へと連れていった。
ちょっと奥まった所にある部屋の中は派手ではないものの、高そうな装飾品がいくつか置いてある。執務机と椅子なんて、一体いくらか想像できないくらい細かな木彫りが施されている。
「ここって……」
「ギルドマスターの部屋よ」
「やっぱり。じゃあさっきの人が?」
「ギルドマスターよ。見るの初めてよね」
「はい。想像通り『できる人!』って感じの方でした」
「そう、伝えとくわ。……で、あんたはどうして出て行ったの?」
なにか話をして、説教を回避できるかと思ってたんだけどそんなことは無理みたいだ。直球で聞かれてどう答えればいいのか……迷いながらも、どうにか少しずつ言葉を見つける私にイクダールさんは静かに耳を傾けてくれていた。
因みにガイツさんの装備
ドラゴンアーマーに神々の盾、ドラゴンヘルムにオリハルコンの剣。
以上の総額は遊んで暮らせる人生を二回ぐらい繰り返すことができるくらいだ。




