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旅立ちの終わり:1

言われた通り町の中心部に来ると確かに二人座っている人がいた。後ろ姿しか見えないけど女の人と男の人だ。


男の人の所にはお客さんがいるようで向かいにしゃがんでいる人が見える。まぁ、全くお客さんがいない状態ではないみたいで、ちょっと気が楽になった。


「あの、隣いいで……イクダールさん!?」


「イクダール?私はエクーレよ、隣どうぞ」


「あれ……あ、すみません。知り合いにそっくりだったので」


「いいわよ。それより貴女もぼったくりギルドに引っ掛かったの?」


苦笑いした彼女、エクーレさんは本当にイクダールさんそっくりだった。

声も仕種も本当に本人みたいだ。


……いやいや、ここまでそっくりな人はいる筈ない。絶対本人だ。


「イクダールさんでしょ?私はそんな解りやすい嘘には引っかかりませんよ」


「だから私はエクーレだってば。イクダール?って人にそんなに似てるの?」


「というか、本人にしか見えません」


瞬きをしたり、目をこすってみたりしたけど、どこからどう見てもイクダールさんだ。


「双子ですか?」


「いいえ、一人っ子よ」


「う〜ん、本当にすっごく似ているんですよ。似ているというか本人って言っても皆信じると思います。すみません何回も聞いて」


あんまりしつこく言って怒らせてもあれなので、話を終わらせることにした。

絶対目の前にいるのはイクダールさんだ。

でも思ったよりイクダールさんとは普通に話せるもんなんだなぁ。私が逃げてきたのは武器屋からと彼に対する自分の気持ちだけだから、それは当たり前なんだけど、でもなんか嬉しい。



「そのイクダールって人、そんなにそっくりなら会ってみたいわ」


「あ、イクダールさんのいる町が登録してあるペガサスの羽がありますから、良かったらどうぞ」


「貰っていいの?」


「はい、すごくいい人なので是非会ってみてください」


ここは騙された振りをしようっと。本人だから、本人に会うわけないけど。


「なんていう町?」


町の名前を告げると、エクーレさんは首をかしげた。


「その町ってこの間、暗黒竜を倒した人達が今いる町じゃない?」


「!?暗黒竜を!?あの、詳しく教えて貰ってもいいですか?」


「良いわよ」と私の反応に驚きつつもエクーレさんは話をしてくれた。……この人、本当にイクダールさんとは別人なのかも……。


私がいた町に勇者がやってきた。そこで以前暗黒竜の退治に失敗した中年冒険者と暗黒竜が敵の青年と出会う。

青年の話に心を痛めた勇者:アランは討伐を決意。その二人をパーティーに加えて一緒に討伐に旅立った。そして、暗黒竜を討伐した際、勇者は冒険者と青年をサポートすることに徹して、見事冒険者に名誉挽回をさせ、青年に敵討ちをさせたという。


それを聞いて私は開いた口が塞がらなかった。


(アランってあのアラン?以前、町に来たあの勇者?)


なんていう偶然。やはり勇者は勇者だ。立派な美談になるような行為を無意識に行っている。

そして、中年冒険者は恐らくガイツさん、青年は武器屋のことだ。


良かった、敵が討てたのか。


涙が止まらなくなった。


良かった。


本当に良かった。




「どうしたの?」


「その二人…多分、知り、合い、良かった、と…」


エクーレさんが貸してくれた手拭き布で涙を拭きながら途切れ途切れ伝えると、どうやら分かってくれたらしい。しかし、涙は止まらない。


良かった。

本当に、本当に良かった。


でも、その涙は次の言葉で簡単に引っこんでしまった。


「……でも…それなら急いで町に戻った方がいいわ。皆怪我をしているらしいけど、大怪我でベッドから起きあがれないくらい酷い人がいるらしいから。結構危ないらしいわよ」


…………え?


今、なんて…………


…………


……


「!!帰ります!!ありがとうございました!!」


嘘!どうしよう!!

何で!!


急いで荷物を道具袋に突っ込んで、ペガサスの羽を出して、私はペガサスの羽を発動させるために町を出た。


誰だろう。武器屋?ガイツさん?


急いで、お願い、一秒でも早く帰らせて。


町の入口から一歩出た瞬間に私はペガサスの羽を発動させた。




そういえば、エクーレさんって結局どっちだったんだろう。

んー、従姉妹、とか?

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