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終わりに向けて:1

熟睡してしまった。

眠りの粉って不眠症の人にとって、特効薬になるかも。

お店の準備をしようとカウンターに行ったら準備は既に終えてあり、一枚の手紙が置いてあった。


簡単な挨拶と『実は僕、道具屋組合の広報担当で今ちょうど組合雑誌をつくってるんだ。各道具屋の美男美女評価特集をしてて――』と書いてあり、私の評価が記されていた。


60点。


何とも言えない。高くもなく低くもなく。


こんな書き置きはいらなかった。


「60点……60点かぁ」


二回も呟いてしまった気持ちを解ってほしい。


「やった!私って上物!!」

というわけでもなく


「所詮、私なんか……」

というわけでもなく。


感想が言えない点数だ。

「あー……ね」



っていう点数。



もやもやしたままお店を開け、もやもやしたままお店を閉めた。


今は22時頃。

ちょっと遅くなっちゃった。

さて、イクダールさんの所に行く準備をしないと。


「うーん、服はどれにしよう」


いつもなら着替えずそのままギルドに行くんだけど……60点という評価が、やっぱり悔しかったので着替えた上に綺麗にお化粧をしてしまった。


我ながら化けたと思う。


●●●●


「遅いから迎えに来た……別人みたいだな」


確かに店を閉めるのは20時だし、少し遅くなっちゃった。片付けに手間取ったから仕方ないけれど、申し訳ない。


「ごめん、ちょっと片付けに手間取って。やっぱり濃いかな……ちょっと化粧おとして――?」


と思ったら、しっかりした腕に捕まれる。


「そのままでいい。行くぞ」


「―?わかった」


どうやら「別人みたい」と言うのは褒めてくれていたようだ。ちょっぴり嬉しい。



ギルドに入ると、ちょうどガイツさんとイクダールさんが話している所だった。


「よ、二人そろってきたのか」


ガイツさんはまだ包帯が巻かれている腕で手をひらひらさせた。見ていて痛々しいが、エリクサーのおかげで剣はまだ握り続けることができるらしい。


よかった。


剣が握れなくなるということは冒険者には命取りだ。剣を持てなくなった冒険者は堕ちていくのが早い。特にガイツさんみたいに優秀な冒険者ほど。


武器屋を救うために、他人の人生を駄目にしてしまうところだった。本当にガイツさんも無事でよかった。


「今回は本当にありがとうございます」


何度お礼を言っても言い足りないぐらい。命をかけて助けてくれたのだ。


だから、より多くの報酬を渡さないと。


それが私の気持ちだった。




「ガイツさん、あの、これ」


武器屋とイクダールさんが何やら話をしだしたので、私はガイツさんに促されるように隣の飲み屋に移動した。今日も飲み屋は繁盛しており、満席に近い状態だ。席は抑えていたみたいで、指定のテーブル席に座ると私はガイツさんにこっそりと、とあるものを差し出した。


「ん?」


「ギルド関係なしで個人的にお礼をしたかったので是非……あ、恥ずかしいから家で開けてくださいね」


私が渡したのはちょっと厚い手紙の様なもの。そこには私の大事なものが入っている。


「わかった。帰ったら読ませてもらうよ」


ガイツさんは手紙と思ったようで、道具袋に入れる。

よかった、誤魔化されてくれて。


「さて、今日は武器屋の奢りらしいからいっぱい食べて飲むわよ」


話が終わったようで、二人がやってきた。


「おっ、じゃあ一番上等の酒くれ」


「ほら、何頼むんだ?」


武器屋が隣に腰かける。

汗の香りが私の心拍数をあげるけど、それがとても心地よかった。


「?どうした」


「あ、ううん。じゃあ私も一番高い食べ物頼もうかな〜」


「ああ、頼め。お前はもうちょっと肉付きよくなった方がいい」


「失礼な。武器屋なんかはげればいいのに…わっ…何?」


「いや、別に」


武器屋が頭を撫でている。

ぐしゃぐしゃにするわけでもなく、女の子が人形に撫でるかのようにだ。


うわっ。


顔が一気に赤くなった。





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