転機:4
もう、バカバカバカ!
それから五日が経った。
私は心ここにあらずの状態で、仕事をした。お客さんには本当に申し訳ないぐらい。
最初は一週間早く過ぎろ!と思い、次にドキドキし、そして今は胸がムカムカするに至っている。
隣の明かりは相変わらず20時過ぎには消えていた。でもあと二日経てば、明かりはきっとつく筈。
そう思いながら、私は今日も浅い眠りに着いた。
明け方、乱暴に扉を叩かれる音ですぐ目が覚めた。二階から見おろせば、イクダールさんが立っている。
もしかして!!
寒いのもそのままに慌てて扉を開けると、イクダールさんが呆れた様に笑っていた。
この様子だと悪い知らせではないようだ。
早く、早く言ってほしい。
無事だったと。
ただの旅行だと。
何もなかったと。
でも彼女は笑い顔を引っ込めて、私が望んではいない台詞を口にした。
「見つかったけれど、生死をさ迷っているわ」
目の奥がツンとなった。
「私も今から向かうわ。一緒に行くでしょ?急いで支度して」
「……はい」
『生死をさ迷っている』
その言葉が頭の中に響いているが、意外と私は冷静だ。
二階にまた急いで戻り、お金を全部と下着を適当に入れる。
靴下が柄が違う気がするが、この際履ければ何だっていい。
再び、一階へ戻ると優しそうな男の人がイクダールさんと話していた。
「道具屋は彼が面倒みてくれるから大丈夫よ」
なるほど。
「事情は聞いているよ。大丈夫、店は任せて彼についてあげて」
「すみません。お願いします」
鍵を渡すと、イクダールさんがペガサスの羽を取り出した。
「あの暗黒の村、ディーパにいくわよ」
太陽が常に雲に隠れて、いつも薄暗い村ディーパ。
暗い所はモンスターが好むため、村の周りは強いモンスターがうようよしている。確か特別注意区画になっていた上に、最近は暗黒竜の目撃情報があり、村への立ち入りは禁止されていた筈だ。
なんでその村に隣人は行ったんだろうか。
その前に、お願いだから生きてて!!
そう祈りながらペガサスの羽を発動させた。




