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カチューシャは一応装備品?

カチューシャって髪飾りの一種だけど、道具屋でカチューシャと言ったらメイド用のカチューシャしか出てきません。

さて、最近は商品の補充が出来ていなかったから、棚には空間が目立っている。

ポーションもいつもの半分くらいしか在庫がないし、MP回復薬もだいぶ減ってしまった。


まぁ、これはたまに起こることで、頑張って補充できる範囲だ。

でも今回はひと味違う。

いつもなら余って在庫過多の装備品が何故か売れに売れて在庫が少ないのだ。


売上はお陰さまで上々なんだけど、あれは手間がかかるものが多く、業者から取り寄せにしても自分で縫い上げたりする場合でも時間がかかる。


装備品が飛ぶように売れている理由。

それはコスチュームプレイが流行っているからだった。




今までのコスチュームプレイといえば小説で登場してくるお姫様や王子様、勇者様などの華やかなものが題材にされ、お金がかかるものだった。

趣味に大金を使えるのは貴族だけど、彼らはコスチュームプレイをするよりも自らを着飾る社交界に忙しいから、コスチュームプレイをするのはほんの一部貴族だけで、それはおままごとの延長みたいなもの。決して誰もがするものではなかった。


それが、今や貴族から一般人までコスチュームプレイをする。しかも冒険者の。


それはある小説が原因だった。



昨年の冬。

ひっそりと町角の本屋に並べられた女性向けの書き物。

冒険者と冒険者の汗と涙と波瀾万丈な恋愛小説。

それは出版されては消えていく売れない小説の一冊になる筈だった。


ところが年が明け、春になった頃。数少ないその本の読者である王設図書館の勤務者が、こっそり図書館搬入リストにその本を載せた。

そのまま搬入された本を借りたのはお年頃の王女様。

一晩で読み終えるとすっかりその本の虜になった王女様は、権力を使って著者に同じような種類の本をもっと書くように命令した。


そうして、いっぱい出版された本は貴族から一般人にまで知れ渡り爆発的な人気となったのだ。




人気は止まらず、来月にはこの町でも『冒険者コスチュームプレイ大会』が開催されるらしい。


女の子の力って凄い。


というわけで、これが装備品が売れに売れている理由だ。


「どうしよう……」


空になった棚を見て溜め息しか出てこない。

特に今売れているのはメイド服とカチューシャだ。

最新作が無口な賞金稼ぎと元メイドの暗殺者の恋愛話らしい。


「メイド服は明日には送られてくるけど、カチューシャは欠品だなんて……」


この小説の山場の一つに出てくるのがメイド服とカチューシャだ。


〜〜〜


一旦喧嘩別れをした二人。

暗殺者が新しくメイドとして働いている屋敷に、賞金稼ぎが情報を提供してもらいに訪れて再会する。

無口な賞金稼ぎはカチューシャに唇をつけて去っていく。

暗殺者のメイドは夜、そのカチューシャを見つめながら賞金稼ぎへの思いを募らせる。


〜〜〜


という場面に思いを募らせる女の子は多く、お金がないから、せめてカチューシャだけでもと購入しに来店する女の子は多い。

メイド服は7000ゴールドもするんだもん。

私だって高いと思う。

踊り子用のちょっと素材がいい紅いドレスでさえ、6500ゴールドなのに。



「仕方ない、徹夜するつもりで頑張ろう」


ポーション草をことこと大きい鍋で煮ながら、横に椅子を置き、針と糸と布を用意して私はちくちく縫いはじめた。


カチューシャは1種類しかない。横幅1センチくらいの細い丈夫な金属に白い布を巻き、その布とメイドのカチューシャの特徴であるヒラヒラ部分を縫いつけていく。ヒラヒラ部分も勿論真っ白だ。


これに防御力なんて期待しちゃ駄目。一応装備品として販売しているが防御力は0だ。5パーセントの確率で誘惑を無効化するだけ。

なのに120ゴールド。

これもバレッタより高い……なんで?


というわけで、カチューシャ30個。次の日、昼には完売しました。

ううっ、また夜なべしないと……。




〜まとめ:カチューシャの作り方〜


材料(1個分):

1センチ幅の細い金属:1つ

白い布:適当。

蜘蛛の糸:適当


採取地:金属は鍛冶屋に頼んでいる。白い布は布屋。


備考:

1つ120ゴールド。

装備して役に立つことはほぼない。いっつも余ってたんだけど、最近は売り切れてばかり。流行が去ったらまた皆売るんだろうな〜と将来の在庫過多が心配。鍛冶屋さんが「俺は武器とか鎧をつくりたい…」と嘆いてた。




〜設定補足〜


解りにくい部分があるので、ちょっと設定を補足しておきます。


・冒険者には種類がいっぱいあります。

賞金稼ぎ、暗殺者、剣士、情報屋、運び屋など様々です。

引っくるめて冒険者です。



・この世界には漫画は存在しません。娯楽の本は小説などの活字のみです。



・小説冒険者シリーズは、世界観共通で書かれ、一冊ごとに完結して販売しています。著者は今ベストセラー作家となってウハウハです。

→これは設定です。実際には販売してませんので本屋で探さないでください(笑

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