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?アイテムがやってきた:1

ちょっとちょっとー。

私は平和に過ごしたいと毎日願っているのに、神様は叶えてくれる気がないのだろうか。




ある日、とある品物を売りたいとお客さんがやって来た。


まさか、こんな目に合うとは……。




だいたい、この日は朝から運が悪かった。

朝、ベッドから落ちて目が覚めて、びっくりして起き上がったら脱ぎ捨てていた羽織に足をひっかけ足を捻ってしまい、階段から降りる時に危うく転落しそうになるという三重奏。


こういう日は大人しく過ごすに限るが、お店を開けないわけにはいかない。


古びた扉を消毒した布で拭き、開店すると店の前をうろうろしていた青年が待ってましたとばかりに入ってきた。


「これ売りたいんだけど」


朝一に差し出された品物はキラキラと光る、ちょっと趣味の悪い仮面だった。仮面舞踏会に一人はこんなド派手な仮面被った人がいそうだな、っていうような上品とは言い難い仮面は装備品として私の記憶の中にはない。


「これ、鑑定屋に持っていかれました?」


ガラクタにしては魔力感じるし、だからと言ってこの商品は見たことない。

つまりは、未鑑定の品物ということだ。


世の中には様々な道具・装備品があるにも関わらず、新商品を開発する人もいる。まぁ私もその一人だけど。


元の装備品に手を加え、外観を変えれば、もうそれが何かすら解らない。

私達道具屋では何の装備品か判断できず、ガラクタ扱いとなる。


さて、今日持ち込まれたコレは仮面だけど、元来存在する数種類の『仮面』のどれとも一致しない。


「鑑定してからお売りされないと、二束三文ですよ。1ゴールドです」


「タダじゃねーか!でも嫌な予感するから売る」


そう言うと青年は1ゴールドを受け取って、さっさと店を出ていった。


残されたのは私と仮面。



「なんだろ、この仮面」


キラキラ金ぴかに輝いている仮面は、やっぱり記憶にはない道具。つけたくなるよね、見たことない仮面。てわけで、私は仮面を付けて鏡を見てみた。


「ぶっは!!センスないなーこの仮面!」


爆笑した後、仮面を外そうとしたら……え?


「うそ…え…ちょっとー!!」


外れない!!


やだ、ちょっと外れてよ!


いくら引っ張っても、水で塗らしても石鹸で滑らせても外れない。


ちょっとお客さん来たらどうするの!と思っていたら、カランカランと古びた音が鳴って扉が開いた。



「……いらっしゃいませ」


「!?」


入ってきたのは一般人。


私を見て、固まって……出ていった。


ちょっと!笑うとか、せめてリアクションくらいしてってよ!


そしてこんな時に続けて入ってきたのは。


「やっほー。早くお……って、あははは!!」


常連の冒険者だ。

三日前に来て、明日から一週間は仕事で来れないって言ってたのに!!


「なにその仮面…ぷっ、キラキラ光りまくりで眩しいけど品がまるでないねっ!」


にやにや私を見る顔を初めて殴りたいと思った。



気を取りなおして。


事情を話すと、「そうだ、まずは…ちょっと待ってて」とにやにやしたまま友人はお店を出ていった。

そして連れてきたのは……。


「なにやってるの、あんたは」


「イクダールさん!」


ギルドの看板女性、イクダールさんだ。

流石に友人とは違い声に出して笑わないが、呆れたように私を見ている。

うう……そんなまじまじと見ないでほしい。

穴があったら入りたい。

そして、止めにやってきたのは。


「おい、また万能や……」


隣人だ。



「…っ。帰って!!」


笑いもせず、驚いたようにじっと見つめる視線に耐えれなくなった私は恥ずかしさのあまり後ろを向いた。

隣人の口は『万能薬』の『く』で開いたままだ。

そんなに衝撃的だったのだろうか。確かにこの仮面はド派手だけど、そんなに固まるほどではない筈だ。後ろを向いたまま、また仮面を剥がそうと無理矢理引っ張るけど剥がれない。


「お前はどーしてそう…」


呆れたような呟きに私はカチンと来た。八つ当たりと解ってはいるが、朝からのストレスで我慢ができず、後ろ向きのまま感情をぶつける。


「いいの!自業自得ってことは解ってるんだから!自分で何とかするから」


帰って!と三人を扉の外に無理矢理追い出すと、『臨時休業』の札をぶら下げ扉の鍵を閉めた。


「おいっ、開けろ」


「ごめん、ふざけすぎた」


何回かノックと声が聞こえたが、それらを無視して、黒のローブを着込みペガサスの羽を使って一番近い鑑定屋のいる街へと転移した。



私が転移した街は第三の首都と言われる大きな街。

海に面しているため、交易が盛んな所だ。


「いらっしゃい。あらま、珍しいお客さんだね」


鑑定屋は街の隅っこにこじんまりとある。お婆ちゃんが一人で切り盛りしているようで、カウンターや椅子が随分年を重ねていた。


「あの、仮面が外れなくなっちゃったんですけど、未鑑定な物みたいで対処できなくて」


上手く言葉にはできなかったけど、頭のいいお婆ちゃんは解ってくれたようだ。さすが鑑定屋。


鑑定屋の人は凄く頭がいい。

それは資格取得の難しさに起因する。鑑定屋を経営するのにも資格がいるんだけど、難関と言われる道具屋の数十倍は難しい。そして、そんなに頭がいいなら違う仕事に就くことが多い。

だから鑑定屋を営む人は少なく、人が来やすい都会に店を出せるようにと、国から優遇されているのだ。


「こりゃ『呪いの仮面』だね」


「呪い?」


気力を吸いとって衰弱させるとか、身体の自由を効かなくさせるやつ?

うわ、やめてよー。


「なに、呪いって言っても大したもんじゃない。イタズラ目的で作ったみたいじゃの」


お婆ちゃんはぽんぽんと私の頭を軽く叩いた。落ち着きなさいと言わんばかりの優しい叩き方が泣けてくる。


「ほら、お話によくあるじゃろ?呪いを解くには……」


「え、ちょっと、まさか、え」


「愛する王子様のキスじゃっ」


「えええっっっ!!」


「さすれば呪いの仮面は外れるじゃろ」





続きます。


〜おまけ〜


鑑定屋の資格試験内容を一部公開。


・武器、防具、道具など全種類の暗記。

※レアアイテムは資料が存在しないものもあるので除外。


・付加効果魔法の判断が適切にできるか、一年間テストを毎日行う。なお、問題は毎日違うし、段々難しくなる。

※朝、ギルドに課題の品を取りに行き、夕方までに課題の品と答えを書いた用紙をギルドに持参。


〜〜〜


今いる鑑定屋はこーんな難しい試験を突破した強者ばかりなので、会って一目で装備を鑑定されます。

趣味は人間観察(装備している品の総額を瞬時に計算)の人が多いです。




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