監査が店にやってきた
監査がやって来て暫くは、真似してアドバイスする町人もいる。隠れたブームらしい。
不正が行われていないか審査をするために、時々抜き打ちで監査がやってくる。
「いらっしゃいませ。何かご入り用でしょうか?」
店内をうろうろする人。じーっと私を見る人と様々なお客がいるなか、明らかに監査の人なのは。
「この辺りは毒性のモンスターが多いから、解毒剤は多めに持っていた方がいいぞ」
来る人来る人にアドバイスしている鎧を見にまとった男性。
そう!お前だ!!
なーんて言えはしないけど、間違いなくこの男性は監査の人だ。
開店から閉店まで、決して広くないこのお店の中をくるくる行ったり来たり。
一日中いるお客さんは監査以外はさすがにいない。いたら怖くて毒粉でも投げつけてやる。
そして監査の人は同じ様な手で毎回来る。前回は『安い道具を買い揃えるより、高いのを一つ買う方が総合的なステータスは上がるよ』なんて言っていた気がする。
確かそのおかげで、抜き打ち監査がいた一日はお守りよりアミュレット、バンダナよりナポレオンハットが売れて、売上に大分貢献してもらったのだ。
今回の人は解毒剤の売上に協力してくれている。
ありがたいけど、ピンポイントに解毒剤……確かに毒性のモンスターは多いけど。
そして閉店間近。
「うむ、会計の際にはずるしてないし、価格も適正。問題ない。……ああ、申し遅れた。監査の者だ」
名刺を手渡され、監査の人は監査結果の一枚を私に渡すと「これからもずるしないように!」と帰っていった。
特に害はないんだけど、正体が解っているだけに弱冠ストレスになる。さすがに一日居座られるとね。
一回来たら半年は来ないと言いたいんだけど、本当に不定期に来るから困る。
何故か監査の人と毎回鉢合わせになるお客さんもいるんだよね。で、アドバイスを聞いてその通りに買っていってくれる。
それはそれで有難いけど、ある程度強かったらアドバイスは鵜呑みにしなくていいと思う。
なんにせよ、足りないことがないように道具は揃えて冒険頑張ってください。




