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番外編:誕生日をお祝いしてもらった

誕生日には何を貰っても嬉しいもんだと思ってたけど、一回ギルドの人に「お守りがわりに」って蛇の脱け殻を貰った。

……センスは大事だよね。

「いっ…てぇ」


冒険者の友人が開いた扉に偶然額をぶつけた隣人。

今にも戦闘に突入しそうな怒りオーラを出す隣人と、謝りつつ挑発する友人をどうにか引き離して、隣人をお店に引っ張りこんだ。


額を擦りながら、隣人はカウンターの側にある椅子に腰を降ろした。肌の色が褐色なので腫れているかどうかは判断しにくいが、取りあえず濡れた布を渡したら大人しく受け取ったので結構痛かったんだろう。


「大丈夫?」


「…ああ。…あいつ最近よく見かけるな」


「うん、よく買い物しに来てくれてるの。おかげで楽しくって」


「そうか。…おい、笑うな」


不機嫌になっていく隣人に思わず笑みが溢れると、怒られた。本気で怒っているものではなくて、拗ねているみたいだ。




隣人と友人は根っから気が合わないみたいで、お互いに接触を避けている。たまに会えば睨み合い。

二人して迫力があるから、いつもハラハラする。


「仲悪いよね。性格は似てるのに」


「どこがだ!?」


「飄々としているところとか、気が強いところとか」


そう、私は同族嫌悪みたいなものじゃないかと思っている。

それを女性冒険者に言ったら、不味いもの食べたような顔をして「止めてよ」なんて言っていた。

そして目の前の隣人も似た反応をしている。


似てるなぁ。


また笑いが込み上げてきたが、隣人に軽く睨まれたので笑いを我慢して引っ込めた。


「そういえば、今日はどうしたの?」


隣人が来るときは必ず用事があるときだ。最近は気付け薬作ってないし、怒られるようなことはしてないはずだし…なにか道具いるのかな。


と思っていたら小さな箱を渡された。



「誕生日」


「くれるの?」


「ああ」


「ありがとう。開けていい?」


ぶっきらぼうに渡された可愛いピンクの箱を開けると、細長い銀色の芯に綺麗な細工が施されたイヤリングが光っていた。

その耳元近くには小さな赤い宝石がついていて、一目で結構なお値打ちものと分かる。

焔のイヤリングだ。


「きれい…」


この細やかな細工の入れ方、模様の特徴からしてガゼルさんと同格だ。ガゼルさんはアミュレット専門だけど、イヤリングを作ったらこのぐらい綺麗な筈。


初めて手にとる職人さんのイヤリングをまじまじと見つめてると、隣人が笑った気配がした。


「市場で見つけた。最近、職場復帰したじいさんの作品らしくてな。お前そういうの好きだろ?」


「うん!ありがとう!」


アミュレットと対にも見える綺麗な細工。

市場にこんな掘り出し物があるなんて早速見に行かなければ!


「その市場どこの?」


「隣町だ。ちょうど週末にあるから行くか?近いから連れてってやる」


「いいの?」


「用があるしな。ついでだ」


そして週末。

お店は組合からの代理人に任せて、私は結構前からそわそわしていた。何て言ったって起きたのは日の出ぐらいの早さ。

あの細工の名匠に会えるのが嬉しくて、興奮して早起きしてしまった。


「純白のワンピース」という聖属性の洋服を着て、準備は万端。

お小遣いもたくさん持った。

いざ出陣!!




そして、やってきました隣町。

隣と言っても馬車に揺られて小一時間かかる。

私のお店がある町より規模が大きい街は週末ということもあって多くの人で賑わっていた。

街の真ん中に噴水があり、そこから各通りに分かれていく。


隣人は慣れているようで、目的の場所まで真っ直ぐに、ひょいひょい人を避けて歩いていく。私もその後ろをついていくことで誰にもぶつからなかった。


「お、いたいたじーさん!」


「おお、いつぞやの青年」


「こんにちは」


「いらっしゃい、お嬢さん」


歩くこと数分で目的の場所に辿り着いたみたい。しわしわのお爺さんは隣人と挨拶を交わし、次いで私を見る。「ようにおうとる」と笑顔で言うと、簡易な布に並んでいるいっぱいの装飾品を見せてくれた。

そのどれもが精巧で美しい。


「綺麗……」


人魚のイヤリングに、アーサー王の腕輪、いにしえの指輪など、それなりに価値がある素材を、彫刻することで更に特殊効果を付加させている。



「あの……私と契約する気ありませんか?」


これはゲットしなきゃ損だ。

もう早速交渉に入った。


「お前な」と隣人は呆れていたが、特に止めもせずに逆に交渉を手伝ってくれた。焔のイヤリングを受け取った時の私の反応とか。


結果、隠れダンジョンの宝箱に入れる装飾品を作ってくれることになった。

歳だから、たくさんは作れないってことで隠れダンジョンはちょうどいい。


「やったー!ありがとう!!」


嬉しさのあまり、ぎゅーってお爺さんを抱き締めれば隣人に引き剥がされ頭をぐじゃぐじゃされた。

上機嫌な私はそれに文句を言うことなく、されるがまま。

結果、パーマがかかったみたいになった。




「ありがとう」


てくてくと帰り道。

あれからご飯を一緒に食べて、お爺さんの店番を手伝って、帰路についた。馬車を降りると空は夕焼けで染まっていた。


「いい誕生日プレゼント貰っちゃったね」


アミュレットとイヤリング。

この二つは今までで最高に嬉しい贈り物だ。

あと、あのお爺さんとの出会いも。


「良かったな」


そう笑う隣人の笑顔も。

何もかもが幸せで、眩しかった。




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