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さあ、ギルドへ行こう

だいたいどの町でもギルドマスターが誰かすら解らない。

カウンターの中でお酒作ってる人かな?

てくてくと、ギルドに向かって歩く。もう陽は沈み、露出が激しい服を来たお姉さんや怪しい雰囲気を出しているお兄さんが行き来し始める時間になってきた。


ギルドは大抵、酒場の中にあるか併設している。この町は併設だから昼間でも来れるけれど、店がある私は夜しか来れない。


木製の古びた扉を開ければ、目の前には紙がいっぱい貼られた壁があらわれる。


目的、報酬が簡潔に紙に記され、紙の左上に難易度が書かれている。


持ってきたアミュレットは違う町で、こんな風に貼られている依頼書の報酬になるんだろう。


うう、さよならガゼルさんの作品よ……。



「あら、いらっしゃい」


「イクダールさん」


イクダールさんは男勝りな美人さんだ。綺麗な黒い肌に、綺麗な真っ黒な髪。看板娘、と言う年齢ではないが看板女性だ。


「これ」


ことり、と受付机の上に置くとイクダールさんは手にとって色々な角度から見た。


「ガゼルのは相変わらずいいわねー」


「ですよねー、本当は欲しいんですけど……」


「あんたも黙っておけばいいのに。みんなしれっと規定以外のアミュレット扱ってるし、個人で所有する分には何も言われないわよ……多分」


「それ、付加価値が『先制攻撃』なんですよ」


「あ〜成る程。あんたは変なとこで優しいわね」


冒険者には有難い『先制攻撃』。私の手にあったって持ち腐れだ。

欲しいけど。

もし万が一、私の手にまた巡ってきたら、今度はこそっと着服しよう。




「じゃあ流しとくわね」


「お願いします」


大事に箱に収納されるアミュレットは明日には旅立ってしまう。何処に行くかは知らない。

前に見せて貰ったペルセポネのアミュレットは高値すぎて、釣り合うクエストなんてないだろうがガゼルさんのアミュレットは、釣り合うクエストはそこそこあるだろう。


「Cランクぐらいですか?」


「さあね」


ギルドは機密が多い。アミュレットの行き先も、こんな他愛ないランクも教えてくれない。


「そんな残念がらないの。ほら、今隣開いたばかりだから飲んで帰りなさい」


ガゼルさんのアミュレットを買い取った時のゴールドをそのままギルドから受け取り、私は言われた通りにギルド横にある酒場に向かった。



「なんか照れるな。あんなに渋ってくれると」


隣の酒場へと消えた人影を見ながら、中年の渋い男性が椅子から立ち上がり受付へと歩み寄ってきた。


「あの子、あんたの作品好きみたいよ。ほら、道具屋の」


「ああ、素朴な造りの店のか」


「いっつも、嫌々持ってくるのよ。かわいくって」


「扱っているのは確かルビーだったか」


「そうよ。また作ってやって」


「ああ。しかし、黙って手元に置いておけばいいのにな」


「あの子真面目だからねー」


ふふっとイクダールは笑うと、隣の酒場に目をやった。

きっと一人で、ちまちま飲んでいることだろう。


「回収に武器屋を呼んどかないとね」


そう言うと、暇そうな若手を呼んでメモを預けた。


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