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美女とお守り

アイテム:お守り、は全然関係ないような内容。

後書きに〜お守りのまとめ〜を書いてます。

この頃、お店にやってくるお客さんは女の子が多い。


そう、今年もこの季節がやってきた。


●●


春。

それは旅立ちの季節。

大切な人が息災であるようにと切なる思いで見送る女の子達。

『旅先で何かあったときに私は側にいることができないから、代わりに連れていって』と手渡されるお守りは、旅立つ者にとっては最高の贈り物となるでしょう。


というキャッチフレーズのもと、数年前に販売されはじめたお守り手作りキット。


それが世の中に受け入れられ、人気爆発。

くさいキャッチフレーズと共に世界に広まった。

もうすぐ春ということで、そのキットを買いにたくさんの女性客がやってきている。




「いらっしゃいませ。何かご入り用ですか?」


「お守りキットありますか?」


「あちらに展示しております。お好きなものをお選びください」


このやり取りをもう何回しただろうか。流石に疲れてきた。


カランカラン。


またドアが開かれる。

綺麗な少女が入ってきた。


「あの…」と静かな声で少女が声をかけてくる。綺麗な少女は声までも綺麗だ。


「いらっしゃいませ。ご入り用ですか?」


そう言うと、少女は少し言いにくそうに「お願いがあるのですが…」とちらり、とお守り展示コーナーを見た。



「……で、蜘蛛の糸を5ミリ幅で縫っていきます」


「先生!糸が切れません」


「蜘蛛の糸は特殊だから…切りたいときは私に言ってください」


今日、お店は臨時休業中。

なにをしているかと言うと、10名の女の子と一緒にお守りの作成中。


先日来た少女はお守りの作り方を教えてほしい、と言ってきたのだ。

いつもお世話になっている人が3人いて、渡したいが縫い物が全くできないとのこと。


最初は多忙だから、と断ろうとしたが後から来た連れという女性がなんと、先日セクシーなドレスを買ってくれた女性だったのだ。



「綺麗……」

「…綺麗すぎ…」


誰もが凝視するくらい、その女性はセクシーなドレスが似合っていた。

いや、もう一生こんな綺麗な女性には会えない!

また会えただけでも幸運!

来てくれた少女に感謝せねば!

出会いは大事にせねば!

ということで、教室を開催するに至った。


果たして彼女は人間なのかと聞きたくなるくらいの美しさ。

人間と交流をもたない天使じゃないんだろうか。



その噂の女性はお守り作りに来てはいるが、見ているだけ。

美少女に誘われていたが、断っていた。


「できましたっ」

開始してから三時間。

おのおのがデザインしたお守りができあがった。

美少女はできあがったばかりのお守りを「一番に渡したかったんです。いつもありがとうございます」と言いながら、セクシーなドレスを着た女性に渡していた。


いい。


女性同士でも、とても絵になる。


その光景を見た他の参加者も「私も頑張ろう」、「渡せたか、次会ったら聞かせてね」などと励まし合いながら、意気揚々とお守りを手にして帰っていった。


「今日はありがとうございました」


「こちらこそ。楽しかったです。久々に若い女の子達と話せたし」


最後に美女二人組を見送るため店の前に出てきた。

今は少し日が傾きはじめたころ。

まだ夜は少し構えてしまう。

万能鍵のせいで怖い目にあってしまったから。

けれど。


「また機会があったら、宜しくお願いします」


憂鬱を溶かすような軽やかな声に自然と笑みが溢れる。


今日は大丈夫そうだ。


二人に別れを告げると手を振って歩き去って行ったが、セクシーなドレスを着た女性が戻ってきた。


「どうかしましたか?」


「ええ、お礼に一つ伝えておくわ。…この間の暴れん坊な冒険者様はもう来ないわよ」


「…え?」

「じゃあ縁があればまた……」


そう言って美女は淡い笑みを湛えると、ゆっくりと元の道をかえって行った。


何で知ってるんだろう、と不思議に思いながらも見送っていると隣人がちょうど美女とすれ違った。


眉間に皺をよせながら、美女を見たあと、私を見る。


なんで、こんな美女が私なんかの店にいるのかって顔をしている。早速、あの女性に惚れたのかな。


おっ。

こっちやってくる。


「あいつお前の知り合いか?」


私の目の前まで来た隣人は、光の加減か瞳の赤がいつもより煌めいている。この赤はとても綺麗だ。


「知り合いっていうか、お客さん。羨ましいでしょ」


ふふん、と鼻高々に言うと隣人は笑いもせず、私の頭をグシャグシャとかきまぜた。


「なにするの!またグシャグシャにして」


「何もされなかったか?」


「?なにを?」


そう言うと、隣人は頭を撫でるのを止めて、私をじっと見た。

言おうか言うまいか思案しているような顔つきだ。


「なに?」


我慢できなくて再度尋ねれば、隣人は口を開いた。


「あいつ、血が身体に染みついてる。アサシンだ。しかも並みじゃねぇ」


当然、まさか、と言った。感じはすごくよかったし、綺麗だし、美少女の連れもいたし、踊り子専用のセクシーなドレスも買ってくれたし、と言い訳のようにその女性について喋りまくった。

だけど、レベルが高いアサシン程、分かりにくいものだと隣人はため息をつく。

人の世界に溶け込む。

分かりにくいように普段は目立たず、夜は一人で動き出すという二面性をアサシンは持っているという。


「お前は気に入られたみたいだからよかったが、気をつけろ。あいつは簡単に人を殺せるんだ」



明くる日の新聞で、あの冒険者が死んだと知った。



〜お守りのまとめ〜


材料(1個分):

手作りキット

(中身は布、木彫りの人型、糸、紐)


採取地:

業者


備考:

たいていの人には思い出の品物。願いを込めて、という商品なので防御効果はまるで駄目。

ただ、木彫りの人型が一回だけ身代わりになってくれる。

教室では丈夫な蜘蛛の糸を縫い糸に使用。


1セット:500ゴールド。


人型が高いため、お高め。


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