蝿
部屋に蝿がいる。
気づいたらそこにいた。
ブーブーとそこらを飛び回る。
「……五月蠅い」
俺は新聞紙を持ってきて蝿に狙いを定める。
するとまたどこかへブーブーと飛んで行ってしまう。
エアコンの方へ行って吸い込まれる。
「おっ」
しかし、すぐにはき出された。
今度は俺のテキストの上で悠々と糞をしてやがる。
この場で仕留めてやりたいと思った。しかし、俺のテキストが汚れてしまう。蝿の痕がついたテキストなんて絶対に使いたくない。
そして、もう確実に仕留められる状況になると俺は急に蝿を哀れに思う。
蝿は何の罪もない。ただ、この部屋に迷い込んだだけだ。
蝿にも親がいて、兄弟がいたのだろう。
……どれだけいたかなんて想像したくないが。
俺は手に持った新聞紙を下ろして蝿に話しかけた。
「明日になったら逃がしてやるよ。俺は別にお前を食べたいわけでもなんでもないしな。外行って自然のために糞でも浄化してこい」
蝿はしばらくブーブーと言っていたが、トイレに行っている間に影も形も無くなっていた。
蝿は何を思って加湿器の中に突っ込んでいったのだろうか。
翌朝加湿器の中で蒸されていた蝿を見て俺は理解できなかった。
……蝿の考えなんてそんなもんさ。
こんにちは、まなつかです。
久々に短編を書いてみました。
蝿がいたのでそれをもとに。
うるさかったですが、朝になって逃がしてやりました。
命あるものは大切に。
それではっ