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二度目の"好き"はサクラ色  作者: ふなつさん


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3/4

第3話 なんか…あっさりしてるなぁ…

あくる日の放課後。

平井先生がスマートフォンを握りながら顔をこわばらせていた。

「いい?電話、するよ」

『はい!』

そう。これから私たちの代表として顧問の平井先生が、メモリコの所属する事務所に電話をするのだ。

数回の呼び出し音がかすかに(流石にこんな大事な電話でスピーカーにはできるはずもなく)聞こえたあと、平井先生が話し始めた。

「もしもし、〇〇高校生徒会の顧問をしております。平井と申します。突然で大変失礼なのですが、メモリア・コードさんにお願いしたいことがございましてお電話させていただきました。関係者の方とお話しする時間を作っていただくことは可能でしょうか?」

その後、会話の聞こえない私たちには状況がよくわからないので、黙って祈っていた。

「了解しました。ではそのようなかたちでおねがいいたします。はい。よろしくお願いいたします。失礼します。」

平井先生は、ふとこちらに顔を向け…………



親指を上向きにたて、笑顔を見せた。

生徒会室が歓喜に包まれる。

「まだ出演してもらえるわけじゃないよみんなー」

その声でみんなの注目が再び先生に。

「かっちゃんどういうこと?」

かっちゃんというのは、平井かなでという名前からつけられた先生のあだ名。

私はまだ先生を愛称で呼ぶことに抵抗があるので平井先生と呼んでいる。

「電話一本で出演依頼なんてできるわけないでしょう。今もらった許可は、明日の放課後に会う約束です。でもすごいのは、ふつう事務関係の人が来るのだけど、今回はマネージャーさんが来てくれるらしいの。多分、高校から直のお願いなんて相当珍しいんだろうね」

なるほど。そういうわけなら私がその話し合いの場にいないわけにはいかない。

「じゃあ、話し合いには私が……」

「話し合いには、相模くんと私が行くわ。向こうから、生徒会長と顧問の先生の二人で来てくださいって条件があったの。」

そ…そんな…

真希にポンと背中を叩かれる。

「友愛、今回はしゃーないよ。ここで失敗したらそもそも文化祭に来てくれなくなっちゃうんだから。」

「そうだね。大人しくしてるよ…」

そうこうして、明日の話し合いに向けて私たちは、具体案を出し合い、まとめて企画書を作ることになった。これがなかなかまずいのだ。

だって明日までに必要なんて考えてもいなくて、何も作っていないのだから。

私は、また臨に迷惑かけることがないようにお母さんにしっかり一報入れ、許可の返信が来たのを確認し、生徒会室にもどる。

「今日は相当遅くまでかかりそうだねえ」

「おわるかな…」

「気づいたら生徒会室にいる間に明日になってたりしてー」

そんな会話を聞きながら、私はとにかく真剣に、一番メモリコの魅力を活かせる企画を作ることに必死になった。

___________________________________________________

一時間帯には本当に明日になってしまうのではと思ったりもしたが、なんとか21時ごろに帰路に着くことができた。

ほんと、うちの時間が夜間定時制も同時開校してる学校じゃなかったら持ち帰って徹夜だった。

そう。うちの学校には、普通科全日制と昼夜間定時制の二種類がある。夜間定時制の方が22時という遅い時間までやっているおかげでそれまでは校舎もあいていて、私たちも生徒会で遅くまで残ることができるのだ。

___________________________________________________

そんなこんなで翌朝。昨日は結局、全ての生活リズムが狂ってしまった。

おかげで今朝は遅刻しかけた。今日は過去一、前授業が短く感じられた日だった。

放課後、生徒会室。

私たちにできるのは、応接室の二人を待ちながら、体育館以外のブースについて話し合うことだけ。

みんながどこか緊張したような面持ちで、心ここに在らずという感じだった。

20分ほど経っただろうか。

「はい注目ー」

という声と共に、平井先生が生徒会室に入ってくる。

「はやくない?」

「てっきり一時間くらいは余裕で話すのかと」

そんな声が飛び交う中、先生は当たり前のように言った。

「今回のオファー、受けてもらえました!」

わあ。

そんなあっさり…

正直、こんなに早く帰ってきたということはダメだったのかなと思っていた。

『うっそ!』

みんなが口を揃えていう。

その後は、なんでどうしての言い合戦。みんなを静止した先生は、さらに衝撃的なことを口にした。

「実は、メモリコとこの学校に、意外としか言いようのない縁がありました。マネージャーさんはそのことを知っていて、今回うちの高校からオファーが来たという話を聞いた時から、断るつもりは全くなかったようで…」

「企画の話とかもしっかり出来たんですか?その上で受けてもらえたんですか?」

「もちろん。というか受けてもらえるというのは会ってすぐに伝えていただいたので、むしろこの時間は、さっき言ったつながりについて少し話した後は全て詳細な企画の話をしてましたよー」

「ていうか、その繋がりってなんなんですか?」

2年の総務の先輩が聞いた。そう。そこだ。私が一番気になるのはそこ。

私の一番の推しと、私が毎日通うこの学校に関わりがあった。それも、無条件でオファーを受けるほどの。

「つながりに関しては、いうことができないんです。当日にその内容もみんなにわかるようなプランを考えてくださっていて、それまでは生徒には話さないというのが本件の条件。」

正直言ってめちゃくちゃ気になるところではあるが、とりあえず受けてもらえただけでも万々歳。

嬉しくて仕方がないが、周りが思いの外騒いでいないので控えることしかできない。

心の中では、チビ友愛が何人も小躍りしている。

それでも、なんだか現実味がない。というか、なんだかあっさりとし過ぎている。

なぜ先生はあんなに平然と報告してきたのだろう。電話していた時にはあんなに緊張していたのに。

会長がポーカーフェイスなのはいつものことだし、裏ではどこか喜んでいる気がする。

でも、それにしたって周りの反応も薄すぎる。何か違和感を感じていたが、結局喜びが勝ってしまって。

「やっっっっっっっっっっっっったあぁぁぁぁぁ!」

飛び跳ねてしまった。

「メモリコが、あのメモリコが私たちの文化祭に来てくれるんですね!?」

「そうよー。あのメモリコですよー」

本当に夢かと思ってしまう。

「真希ぃ。ほっぺたつねって」

「ええ…。あんたまさか夢だと思ってんの」

うぎ。いたい。

「現実だあ………」

「ほーら、そんな顔してたらまた彼氏泣かせちゃ…」

そこまで言って、真希はハッとしたように目を逸らした。

「いやあ、にしても今年は一気に来てくれる人数も増えそうですね。このこと広告にしたら。」

真希、あからさまに話題逸らした…?なんだろ?ずっと違和感というか、周りの空気感がなんだか違う。

「みんななんかあったんですか?」

全員が?を頭に浮かべてコチラを見る。あれ?勘違いかな?

「なにかってどういうことだ?」

相模会長に問われる。

「あいや、なんかよくわからないんですけど、みんなリアクション薄いなあって。」

「そういうことか。正直、まだ現実味が湧いていないんだよ。ここにいる全員が熱烈なファンというわけではないが、それでもあれほどの著名人が文化祭に来るんだ。」

まあ、そらそうか。私だって最初は戸惑ってあんまり喜んでる感じじゃなかったもんな。

「でも、まさか受けてもらえるとは思いませんでした。その謎の縁に感謝ですね!」

私がそういうと、みんな笑顔で同意してくれた。

その後、さっき先生と会長を待ってる間にまとめた他ブースについてのことを話し合った。

今日は臨が迎えに来てくれるので、私は会議が終わるとすぐに生徒会室をでた。

「臨!ごめんお待たせ!」

「友愛。久しぶり。なんかすっごい嬉しそう。例のメモリコの件、うまくいったのかな?」

「すご!勘がいいねえ臨くんー。そうなんですよ。なんと二つ返事で受けてくれたとか!」

「おお。すごいね。」

「実はなんか、学校とメモリコの間に縁があったらしくてねー…」

私は今日あった出来事を一通り臨に話した。

家に着く直前まで、ほとんど私が一人で話してしまっていたにも関わらず、臨は笑顔で話を聞いてくれた。

「じゃあ、ここで。次会える日はまた連絡するね。」

「うん。ありがとう!」

別れ際、いつも通りハグをした。

たまあに、会うのが久しぶりな日には、気持ちが昂って目を瞑って顔を差し出してしまう日もあるのだが、

今日はこの前会ったばかりなのでなんとかハグに止めることができた。

臨の背中を見送りながら、私はふとあることを思い出し、彼を呼び止める。

「臨ーー!文化祭、臨もくるでしょー?」

その声を聞いた臨が、慌ててこちらに戻ってきた。

「ごめん友愛。忘れてたけど、文化祭の日、予定が入ってていけないんだ。それも二日とも。ごめんな」

「そっかあ…しょうがな…」

ん?

あらら?

私まだ日付伝えてないよね?

「臨。私まだ臨に文化祭の日取り伝えてなくない?」

臨が一瞬あっという顔をした気がしたけれど、気のせいかもしれない。

「ホームページで見た。絶対行きたいと思って、待ちきれなかったんだ。でもその日見たら二日とも外せない用事が入ってて…ほんとにごめんな。写真とか送ってくれよ。あと、こっちの文化祭も日取り決まったら教えるから来てな。」

「わかった!メモリコとか、ついでに展示も、写真いっぱい送る!」

「ついでって…メインは作品だろー」

「ふふっ。わかってますよーだ」

少しの間笑い合った後、もう一度じゃあねと言い合い、今度こそ別れた。

___________________________________________________

夕食を食べ終え、風呂に入り、私はベッドに入った。

なんだか、怒涛すぎる1日だった…。すっごく疲れたな…

きっと今年の文化祭はすごい話題になるんだろうなあ。臨と一緒に回りたかったな。残念。

でも、写真いっぱい送ってあげよう。それに臨の学校の文化祭は普通の感じだから、そっちを二人でたくさん回ろう。

そんなことを考えているとふと思う。私って、ほんとに臨が好きなんだな。

あんなよくわからない反射的な返事で付き合うことになってしまったけれど、今となっては私の中に後悔なんて一ミリもなくて。ただただ、付き合ってよかったな。幸せだな。そんな感情だけが残っている。

あのとき勇気を振り絞って、あんなとこまで連れてって告白してくれた臨には、本当に感謝しないとな。

一年記念には、今度は私があの場所までの入場料を奢ってやろう。そう思いながらニヤニヤしていたら、気づけば睡魔に襲われていた。

忙しかったもんなあ。今日はもう寝よう。どうか今日の出来事が夢じゃありませんように。

朝起きても、文化祭にメモリコがくるということが日記に記されていますように。

そう願いながら、私は気づけば眠りについていた。

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