騎士候補生と訓練生
「君たちは今から騎士候補生に訓練をつけてもらう。より強い者と対峙することで、自分の立ち位置をしっかり確認できるからだ」
「「はっ!」」
まさかの走り込みの後はいきなり実戦。しかも超強い人達と!
「!!」
隣のルーカスからものすごい圧を感じて、びっくりした。
驚いた私に気づいたのかルーカスは圧を鎮めて私に笑いかけた。
「武者震いだよ。俺だって候補生を目指してるんだからな。」
「そっか…」
私もそのくらいの気力がなければ、ここで生き残ることはできないのかもしれない。
ルーカスを見習おう。
「俺だって騎士候補生を目指してるんだ。ルーカスにだって負けないからな!」
ルーカスに気圧されてはいけない。宣戦布告だ。
「おう!!」
拳を突き出した私にルーカスも応えてくれた。なんていい奴なんだ。
…圧倒的。その一言に尽きる程、騎士候補生は強かった。5分もてば万々歳。中にはものの数十秒で決着がついてしまうこともあった。
「次、ユーベル!」
「はっ!」
でも、ここで優秀さをアピールできれば出世コースに一歩近づけるはずだ。
相手は特に魔法能力に秀でているアルバン様。伯爵家ではあるけど、魔力の高い者を多く輩出してきた権力のあるお家だ。アルバン様はそこの次期当主。
少し狡いかもしれないけど、あれを使おう。私がこの王立学園に受かった私の武器。
「はじめ!」
「ファイアボール! ウィンドカッター!!」
私の武器…魔法だ! 平民では扱える者が少ない。ましてや攻撃魔法を放てるのはある程度魔力がないとできないため、さらに難しい。
「そして、土壁!」
これであの中はゆうに100℃を超えている。数秒いるだけで命取りな空間だ。
さあ審判、私の勝ちでしょう!
「へえ、面白いね」
「!」
足元に氷が! 土壁ごと氷漬けにして、もろくなったところを切ったかと思ったらこっちにまで範囲を広げてくるなんて、私にはできない。
「ファイアボール!」
慌てて放った攻撃もアルバン様は笑顔で真っ二つに切った。
アルバン様の周りの足元には氷が張られているから近づけない。なら、足元に魔力を集中させる。
私の残り少ない全魔力を風魔法で一気に放出する。いわゆる超加速である。
「もらったーー!」
「!!」
あと数センチ。その時、アンゲナス様が指をクイッと下から上に動かした。
「えっ?」
私の身体は上空に吹っ飛んだかと思ったら、今度は思いっきり地面に叩きつけられた。
こうして、私の初訓練は幕を閉じた。
「これでよし。」
目を覚ますと私は、見覚えのないベッドで横になっていた。私を見ていたのは
「アンゲナス様?」
えっ、なんで?
「はあ、ここは俺の部屋だよ」
銀髪のサラッとした髪をかきあげながら疲れたように言い放ったアンゲナス様。
「なぜ、私がここに…」
「はぁ、君が全力で切りかかってくるからでしょうが」
ジトッとした目でアンゲナス様が言った。それとこれとなにが関係あるんだろう。
「俺は女子を痛みつける趣味なんてないから、穏便に済ませるつもりだったのに、最後の魔力全部使って超加速されたらさすがに対処が間に合わなくなった。風魔法で下から吹っ飛ばされたの覚えてない?」
「うっすらとは…」
いや、待てよ。
「ここは騎士科ですよ。俺は男です。」
ここは取り乱してはいけない。耳の奥で鳴っている心臓の音を悟られないようにしながらアンゲナス様を見る。
「君、ユーベルだっけ?」
「えっ? はい。」
「安心しなよ。他の奴には言ったりしないし、俺はヤローだったら助けないで、その辺にほっといたから」
「はあ、」
どうやら、もう何を言っても無駄らしい。
「君、平民だよね?」
「はい。」
「なんで平民があれだけの魔法を操れたの?」
アンゲナス様は、王国屈指の魔法家系。
「私の父は貴族だからです。」
一瞬目を瞬かせるといつもの様子に戻ったアンゲナス様。
「へぇ、なるほどね。じゃあ、回復魔法も掛けたしもう戻っていいよ」
そういえばあれだけ地面に叩きつけられたのに、痛くなかったのはアンゲナス様が治療してくれたかららしい。
「ありがとうございました!」
「んー。そもそも女子禁制だからそうそう気づくやついないと思うけどいろいろ気をつけなよ」
「はい!」
アンゲナス様、良い人!
「はぁ、じゃあね」
「はい、おやすみなさい!」
私はアンゲナス様の騎士候補生の部屋を出てようやく、自分の部屋に入ったわけだけど、
「ルームメイトのカミル。よろしく」
訓練生は2人部屋だった!




