新、訓練生
「いってきまーす!」
「本当に行ってしまうのね…」
私の短くなった髪を撫でながら、お母さんは目を細める。
「もちろん!」
私は努めて明るく笑った。
「たくさん稼いでくるよ! そしたらお母さんの薬だって毎月買ってあげられるし、治療だってしてもらえる」
「あなたは無理をしてしまうことがあるから、とても心配よ、ケホッケホッ」
「お母さん!」
慌てて背中を撫でてお母さんの落ち着くのを待った。日に日に痩せていく背中に胸が痛む。
「絶対出世してみせるからね」
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「整列!」
「「はい!!」」
「本日より君たちは王立学園の騎士訓練生だ! その自覚を持ち、訓練に励むように!!」
「「はっ!!」」
私はここで性別を偽り、男装して出世コースに乗ってやる!!
「ぜぇ、ぜぇ、ハァハァ」
スタートから約1時間、まずは基礎訓練からだととにかく学園内を走らされている。
「おい、大丈夫か?」
隣には先ほど知り合ったばかりの同期、ルーカスがいる。
「ルーカスは、なん、で、平気な、の?」
息も絶え絶えになんとか絞り出せた質問にルーカスはキョトンとしてみせた。
「俺が特別なわけじゃないだろ、このくらいの基礎訓練は騎士を目指すなら当たり前だろ」
「そう、だよ、ね」
「俺の家は親父や兄貴も含め騎士家系なのもあるけどな」
ルーカスの目がキラキラと輝いて、本当に父親や兄を尊敬しているのが伝わってきた。
「よし! 10分休憩!!」
「ハァハァハァ」
汗が滝のように流れてくる。締め付けているサラシも苦しい。
「お疲れ」
倒れ込んだ私にルーカスが手を差し伸べてくれる。私より大きくて、手のひらには固くなった豆がたくさんある手。
「ありがとう」
彼は面倒見が良くて優しいのだろう。先ほど知り合ったばかりの私をこんなに気にかけてくれる。
「?」
「どうかした?」
「いや、なんでもない、それよりなんだか騒がしいな」
ルーカスにつられて目をやると人が集まっていた。
「騎士候補生の方々だ」「わざわざ訓練生の様子を見に来たのか?」
なんて、声も聞こえてきたのもつかの間。
「集合!!」
教官が号令をかけた。
「「はっ!!」」
私も急いで立ち上がり列に並ぶ。あんなにざわざわしていたのが嘘のようにシーンとして、緊張感だけが漂う。
「皆も知っていると思うが、現段階の訓練生から昇格を認められれば騎士候補生となり、王国騎士団への入団挑戦権が得られる。ここにいるこの5名は、その候補生の中でも、現段階トップの者たちだ」
現状、この学園のトップ5。
王位継承戦第3位の王太子をはじめとした魔法を操りながら戦うことの可能な稀有な5人。
私が目指す人達だ。




