第1話 女子高生騎乗、巨大ロボット神機『アマテラス』爆誕
校門の近くで学生の声がする。
「一旦バイバーイ。あ、今夜8時から通話ね」
「オケ。アタシは物理やりながらするわ」
「マジ?さっすが理系。私は現国かな……」
最近の学生は家で勉強中も通話をする。仲の良いことで。
「……はあ……今から塾かぁ。だっる……」
高校2年生の桜場つづみはそう呟くと、学校近くのバス停まで歩いて行った。
今からコンビニで軽食を買って、バスに乗って家の最寄りのバス停まで帰り、途中にある進学塾で食べて夜8時半まで勉強をしてから家に帰る。
週3日はそんな生活だ。
帰っても父も母もやっと帰宅して夕飯を済ませた頃だ。
お風呂は沸いてるかな……すぐ入りたいな。
社会人の姉も毎日毎日忙しそうにしている。
一生懸命勉強して、いい大学に入って……就職しても、結局会社にこき使われてお金を稼いで生活するだけ。
休みの日にちょっと旅行したり、姉は趣味の推しのライブに行ったりしているけれど。
そんなので良いのだろうか。人生って何なんだろうな……
高校生なのに先が見えている様で、つづみはいつも気が重かった。
唯一の楽しみは自分の趣味である神話の読み漁りだ。
古今東西、北欧神話やギリシャ神話、リグ・ヴェーダにエジプト神話……神話の世界は面白い。
世界の様々な文献を読み漁って妄想する。
神話の神々が今も現役で祀られている日本は世界的にも珍しいらしい。
そう言えばお爺ちゃんの家は神道だったな……そんな事を考えていた。
家に着くまでに小さな橋を渡った。
昔は農地だった場所が住宅街になったので、この辺りには水路が何本も通っている。
ふと、こんな些末な橋にも名前があるのだろうかと思い、スマホのサーチライト機能で照らして橋名板を確認してみた。
「……『月虹橋』?虹……虹の橋。ビフレスト……」
橋の名前からつい北欧神話の『虹の橋』を思い浮かべる。
神々の住む世界アースガルズと人間の世界ミッドガルドを結ぶ架け橋のことだ。
——私もオタクだなぁ……
つづみがそう思った時。
突然橋が光りだし、彼女の身体を包み込んだ。
「……な、何?」
驚いて光から顔を庇い、次に目を開けて見た。
すると……
見た事のない何かの司令室にいるではないか——!
つづみは今ではあまり見かけない、電話ボックスの様な一辺が80cm程の四角いブースの中に立っていた。
自分の足元にも壁面にもびっしりと緑の光る回路のようなものが張り巡らされている。
その隙間から外の様子が見えた。
つづみが入れられているブースと同じ物がいくつも並んでいる。
中から外は見えるが、外から中は見えないらしい。プライバシーに配慮がしてあるという事か……
司令室の中には大勢の人間が……いや、人ではない。
人間の姿を模したアンドロイド達が多数行き交っていた。
「……転送、完了。2026年生存中、性別、女性、氏名『桜場つづみ』。年齢17歳……適性度数、92%。神機製造、セッティング入ります」
つづみの側で機械が話す。どうやら自分の事のようだ。
……2026年生存中?適性度数?神機……製造?いや、ここは何処?!私、閉じ込められてる?
混乱している彼女に1体のアンドロイドがブース越しに近寄って来た。
「驚かせて申し訳ありません、桜場つづみ様。ここは西暦5026年の地球です。貴女様にはこちらで地球外生命体と戦っていただきたく、私共が召喚しました」
「えっと……何?なんなの?私……何か悪いモノに拉致された?」
つづみが蒼ざめて言う。
しかしアンドロイドは平然として話を進める。
「こちらのパイロットスーツを装着します」
「うわっ」
彼女の身体に電子ガードの様に物質が沿って行き、制服が動き易そうなパイロットスーツに変換されて行く。
「ご希望の神の名を詠唱してください」
「……神?」
「はい。今からその神の名を冠したロボットを製造します。
神の力を模して造られた超機動兵器——『神機』
その名は『守護者』を意味します。貴女様にはそれに乗って敵を殲滅していただきます」
「……ええ?」
司令室の中では他にも指示を出す声が聞こえる。
モニターに各ロボットの画像が浮かぶ。
それは体長17m程の人型の巨大ロボットだった。
形状は各関節が細かく動く様に設計されたデザインで、全身が白銀の金属で覆われている。
しかし各神話に出て来る神々のニュアンスが所々に付随されていた。
「5番隊、アタッカー(近接火力)『アポロン』、
サブアタッカー(遠距離支援)『トール』、
タンク(囮・盾役)『ロキ』、
防御(防壁と回復)『デメテル』
この4機で出ます」
「了解。各機コアエネルギー充填。限度一杯まで後30秒!……システムオールクリーン。行けます!」
——芸術の神、雷神……変身の神に豊穣の神?
ここはなんなのだ……一体……ロボットで戦う?私が?
「……さあ、神の名を……」
「えーと……じゃあ、天照……『アマテラス』」
つづみがうっかり答えてしまった。
「認識しました。
神機『アマテラス』製造。
武装:日輪照破砲。
副武装:八咫鏡シールド。
コアエネルギー高出力必殺技:天照閃煌搭載」
機械の声がする。
モニターには光に包まれた床から、まるで3Dプリンターの様に巨大なロボットが形成されて行く様子が映し出されている。
「ええ……3Dプリンターだ……お手軽製造マシンなの?」
いかにも簡単に仕上がって行く様子に驚く。
それは『アマテラス』の冠ではあるが超近代的なロボットの姿だった。けれども何処かに日本の女神のニュアンスが漂っている、美しい女性型のマシンだった。
「製造完了。こちらでよろしいでしょうか」
「……よろしいも何も……マジであれでいいの?動くの?出来立てホヤホヤじゃん……」
「了承確認。コックピットに転送します」
「なんで?うわっ!」
つづみの身体が一瞬光り、気が付いたら『アマテラス』の胸の中のコックピットに入っていた。
ヴィンと音がして視界が360度開ける。
立った状態で非常脱出用ベストが付いた機体固定ベルトが両肩に回され、腰の辺りに低反発素材の緩衝クッションが当たる。
「ひええ……」
手元には両手を添える機械の手型をした操縦部があり、脚には筋肉の動きをスキャン出来る装置が幾つも付いた、膝上までのブーツが履かされている。
頭上には視界を遮らない程度のドーム型のガードが下がり、脳波を読む為の髪飾りの様なピックが頭の各部に多数貼り付いて来た。
何もかもが身長158cmのつづみの体のパーツの位置とサイズにピッタリ合わせてある。
目の前には出力モニター、照準スクリーン、武器のエネルギー残量計、本体の速度計等が並ぶ。
「こ、これ……本当に私が操縦するの?アニメの中とかでしか見たことないんだけど……」
つづみが困惑する。
どうやら頭で考え、身体を動かすとその動きに連動してロボットも動くようだが、それにしてもこんな事……
耳元の通信機から音声が聞こえた。
「射出と同時に背面スラスター作動、落下スピード相殺、滞空時間最大18分。神機活動限界時間は20分です。出来るだけ15分以内で決めてください」
「活動限界?15分で決める?!何それ」
「射出後エネルギー放出開始から20分で機体は光学分解開始、粒子原料化完了後回収されます」
「原料化回収?これって毎回製造するロボットなの?中の人は?」
「戦士の方々は戦闘終了後即座に元の時間、場所に帰還されますのでご安心ください」
——元の時間と場所に帰還される?帰れるって事?
つづみは光る計器を前にして考える。
——帰してもらえるのなら、やってみるか……敵を倒せばいいんだよね?!
と言うか、やらなきゃダメっぽい!!
「チーム編成、6番隊。
アタッカー『ゼウス』、
サブアタッカー『シヴァ』、
タンク『アマテラス』、
防御『ガイア』。
セッティングお願いします。
先頭、タンク『アマテラス』各機コアエネルギー充填……完了」
「よ、呼ばれた!」
つづみの『アマテラス』が射出装置に運ばれる。
「……確かチーム編成はゼウス、シヴァ、ガイア!全能神、破壊神、大地母神!
私はタンク?!マジで?」
「6番隊、システムオールクリーン。出ます!!」
射出装置が動く。
思っていたよりも軽い『フイィィィ……』という音がする。
しかし突然高速で押し出されて行く。
「う……嘘嘘ウソ、やるって言ったけど、うぐっ!〜〜〜っっ!」
G(重力)が掛かりだして声が出せない。
——つづみの『アマテラス』機は地表から程高い山の中腹にある発射口から、空中高く射出された。
視界が白く霞む中、管制の声が冷静に響く。
『目標、 大量の小型機=スウォーム級、
突撃型大型機=シンギュラリティ級1体。
迎撃開始まで——残り20秒』
つづみは息を呑む。
——いきなり神話の神様の名前を言えと言われて言っただけの女子高生が、これから本当に戦うのか。
その答えは、あと20秒で出る。
女子高生騎乗未来巨大ロボット物です
よろしくお願いします




