表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/21

ゴブリンキングと守衛隊

魔力砲が斉射されてからまだゴブリンは出てくる。


「全員、ゴブリンを抑えこめ!」

「応!」


外で待機していた冒険者が大挙をなしてゴブリンに切りかかる。

さすがに疲れていないともあってすぐに敵を切り刻んでいる。

くっ、俺も行くぞ。


「広斗、やめとけ。」

「なんでだよ、皆戦ってるじゃないか。」

「お前、ケガしてるじゃないか。それに状態のところに疲労が出ている。」


疲労?そんな欄が情報確認の画面にあってたまるか……本当にあった。

疲労(中級)と書いてある。体は疲れてるんだな。

分かったよ。少し休んでから前に行けばいいんだろ?


「そうだよ、お前は無理しすぎるところが悪い癖だ。」

「あれ、お前心読んだか?こわっ」

「何年友達やってると思ってるんだ。それぐらいわかってるよ。」


野村、俺のことを友達だと思ってくれてたんだな。

手を取ろうとしたらよけられた。やっぱひどい奴だな。


数分後、同地点


「魔力砲、もう一度斉射だ!」


轟音が周囲に響き渡る。

その音は過剰に魔力を充てんしすぎた魔力砲が壊れた音だった。

先ほどから銀色のゴブリンが大量に現れている。

そのせいで過剰充てんにした一撃必殺の魔力砲を使わされて戦力がだんだん減っていっている。


「これは不味いな。俺たちもそろそろ行かないと。」

「ああ、ケガをして運ばれていった人もいるし流石に出るか」野村がつぶやく

「皆さーんそろそろ加勢しませんか?」俺は他の人にも聞いてみる。

「ああ、分かっている。もう疲労も回復したと思うから行くぞ!」リーダーが呼びかけた。


その言葉に反応して冒険者が立ち上がる。

武器を持ち走ってゴブリンに切りかかりに行く。


「ふむ、彼らが立ち上がるか。ならば私も行こう。」

「交代だ!あとは休憩してたメンバーに任せておけ!」


支部長を先頭にまたゴブリンを押し返す。

俺は冒険者支部のカウンターや廊下の曲がり角などを利用して奇襲を繰り返す。

しかし、長くは続かなかった。

支部長が4体の上級ゴブリンに囲まれて負傷させられたのだ。


「「支部長!大丈夫ですか!?」」皆の声が重なる

「大丈夫だ!『旋裂斬』心配しなくとも守衛隊がすぐに来る!」


旋裂斬で一体の上級ゴブリンを切り負傷した左腕をかばいながら立ち上がる。

俺は上から飛びかかり上級ゴブリンの首をめがけて一閃する。

ギイィィンと音は響くができた傷はとても浅い!さすがに硬いか。

直ぐに退いて物陰に隠れる。

俺が切れなくても支部長はこの隙を見逃さないはずだ。


「広斗のやつ、無理をして。困ったものだ。」


右腕一本で木刀を振りぬき俺が切れなかった首を切り落とす。

そして返す刀でもう一体の体を袈裟切りにする。あれは佐々木小次郎の使う燕返しでは?

その反動で膝をついた支部長に襲い掛かるゴブリンに対してほかの冒険者が囲んで打ち取った。


上級ゴブリンを倒した冒険者はいつの間にかゴブリンを押し返すことができていた。

これなら守衛隊の手を煩わせる必要はないな。

そう思った矢先、前列のタンカーが弾き飛ばされた。

そこにいたのは、金色の体で身長がほかのゴブリンと比べても頭一つ抜けているそれを見て野村は、

「あいつは、俺たちがさっき見たゴブリンキングだ。進化値は124だぞ?」といった。


は?おかしいだろ。なんでこんな奴が出てきたんだ。

野村の言うことを聞いて支部長はまた立ち上がる。


「ちょっと、支部長!寝ていてくださいよ!」

「寝ていられるか!私が行かなかったら誰が行くんだ。そうだ、私は何人も殺してしまった。私が前に進めば絶対に倒せた相手にあいつらは殺された。だから今、戦うんだ!」


そのまま支部長は落ちている剣を拾いゴブリンキングに切りかかる。

怪我をしているのに止められなかった。

俺はやっぱり弱いんだ。進化値24で強くなったとか言っていたがまだ足りない。


その時また新しく銀のゴブリンが出てきた。


「また来たか!旋裂ざ……ぐっ」


支部長が剣撃を避ける時に体制を崩してよろけた。

そのミスをリカバリーするためにリーダーが縦を構えて割って入り一撃で戦闘不能に陥った。


「私の足よ、動け!あの二体は私がやらなければ」

「やらなくてもいいんですよ。支部長がいなくなっては困るんで。銀の方は俺達でいけます。」


支部長は唇をかんで剣をキングにだけ向ける。

横では野村が強化魔法を自分と俺にかけている。


「任せてよいのか?」

「いいんですよ、俺達に任せて見ていてください。『闘術』『高速移動』発動。行くぞ。」

「生きて戻って来いよ。」


支部長に対して俺は笑いかけておく。


「なあ、広斗。どうやって倒すんだ?俺たちの進化値低すぎるぞ。」

「別に倒そうなんて考えてはいないって。」

「じゃあ、どうするんだよ。」

「守衛隊が来るまで耐えきる。ついでにダメージを与えとけば経験値が入るし。今は速動値が進化値60分ぐらいまで強化してあるから全部躱せるだろ。」


野村はこいつ経験値に対してケチだな的な目をしている。

やめてくださいよ。

まずは、野村じゃなくてゴブリンソードマンをどうにかするぞ。

高速移動が乗った走りで間合いを詰める。

ここで左に飛べば余裕で躱せる……躱せない!攻撃が速すぎる。


「馬鹿っ、回避はもっと余裕持っとけよ!」

「悪い!助かったぞ。」


野村の魔力矢(マナアロー)が飛んできて回避が間に合った。

俺は死角である後ろに回り込んでファイアランスを撃ち込みその流れで剣を振るう。

キンッと音がして浅く切り裂いた。


えっ?さっきの上級ゴブリンの方がまだ攻撃防げてたぞ。防御力が低いのか?

これなら守衛隊が来る前に倒せるかも。

ただ防御力が低い代わりに想定より速い。


剣を受け損なって体制を大きく崩された。

支部長に生きて戻るっていったのに、もう駄目だ。

あれ、当たらない。どうなってるんだ?


「おい、最上。何時間か前にメアド交換してもう死にそうになるとはな。」

「あなたは、石橋さんだっけ?」

「そんな叩いたら壊れるような人じゃないぜ。俺は石崎だ。」

「健二さん、離れて!巻き込まれるよ。『障壁砲(バリアキャノン)』!」


石崎さんが盾でソードマンの剣を受け止めているところから俺を守りながら離れた。

離れると直ぐに白く光る障壁が展開し圧縮されて光線砲のようになりソードマンをのけぞらせた。


「立てるか?最上」

「悪い、まだ立てる。あと石崎さん、俺のことは広斗でいいよ。」

「分かった。だったら広斗、行くぞ。」

「俺たちも協力するぜ!」


皆、ありがとう。これなら安心できる。

石崎さんと並んで立ちソードマンに接近する。

また剣が振るわれる。だが、今度は避ける必要もない。石崎さんがいる。

剣は盾に防がれて俺には当たらない。だから余裕を持って攻撃ができる。


足元から後ろに回り切り上げる。

やはり避けてダメージを蓄積させないタイプだな。

ソードマンの攻撃が俺に当たれば致命傷になるがそれはどちらも同じだ。


しかし、パワーで押し負ける。剣術で押し負ける。

俺は剣を振ってきた時間が短い。対してソードマンは剣だけで生きてきた。

だからその内周りの冒険者は戦えなくなる。


「まだまだ行けるぞ…… 」

「駄目だ、広斗。私がいま行く!」

「いいえ、大丈夫です。おれはまだ行ける。」


俺は剣を構えて立つ。

支部長はどう構えていた?どう振れば良い?

思い出せ、どうすれば効率良く斬撃が伝わる?


魔力を全身に流し、剣にも足にも張り巡らせる。

そうすればもっと強く、速く動ける。

そして風のように駆け、これまでで一番速く剣を振り抜く。


「これで、終わりだ!」

「あれは私と同じ旋裂斬か?驚いた。」


手応えアリ。支部長がなにかを呟いた。旋裂斬だって?あの技をいま使えたのか。

あ、油断した。これで倒せたと思ったのに。

詰めが甘い。だから俺はいつも失敗するんだ。


「危ない!『防護結界(プロテクションバリア)』!速く逃げて」

「いや、必要ない。『百烈災剣(メガバスター)』。守衛隊4課現着、これより制圧にかかる。」


プロテクションバリアが張られた直後待ちに待った守衛隊がついに来た。

隊長らしき人が上空から青く光る鉈を一閃しソードマンは地に沈んだ。

これが南関東を守る人たちの強さか。俺とは違う。

一人一人が歴戦の強者だ。直ぐにゴブリンの大群を殲滅しダンジョンの中に突入した。


「広斗、どうだった?」歩いてきた野村が言った。

「いや、油断したね。正直あれで倒せたと思ってた。」

「そうか、今度から気を付けろよ。ところで俺は今から帰るがどうする?」

「野村が帰るんだったら俺も帰る。」


俺達はそっとすべてのゴブリンを倒して歓声をあげている冒険者支部から抜け出した。

ふと後ろを向くと支部長がこっちを見て微笑した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ