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スタンピードするなんて困るんだよ

ゴブリンナイトの後ろから頭に平突きをして頭を吹き飛ばす。

よし、結構ゴブリンナイトでも油断しなければ勝てるようになってきた。


「あれ、ここどこだ?ちょっと奥まで行き過ぎたか。」

「あの後ろの立て札見てみろよ。ここから鈍色のゴブリンナイトより上位の銀色のやつらが出るぞ。」

「早く言えよ!やばっ、ナイトでもまだ囲まれると殺られるんだぞ。」


分かれ道から左に進んできて中が迷路状になっていることに気がついた。

後ろから忍び寄って黒いゴブリンを切る野村に話しかける。

ハッキリ言ってしまおう。俺達は今迷子だ。


「だからマッピングしてけって言ったんだよ。」

「悪かったよ。時間の無駄なんて言ったこと。」


胸ポケットからメモ帳を取り出してこの部屋の地図を書き込む。

次の部屋に足を踏み入れた時に、何だこれ。強烈な波動を感じ取った。

恐る恐る岩の影から前を覗くとそこには金のゴブリンがいた。何だあれ、趣味悪いな。


「なあ、野村鑑定頼む。」

「頼まれた。鑑定発動、って早く逃げるぞ。」

「あっ、おい俺もつれていけ。」


ひとつ前の部屋に戻って息をつく。

野村の顔が青いぞ。何を見たんだ。


「野村、何があったか言え。」

「言われなくても言うさ。あれはゴブリンキングだ。周りには剣鬼(ソードマン)近衛(ロイヤルガード)将軍(ジェネラル)その他諸々全部進化値55以上だ。」


全部55以上だと?見た感じ10体ぐらいいたぞ。

さっさと帰らなければ。

その後音を出さないよう気を付けながらマッピングして逃げてきた。


「何でこんな所にゴブリンキングがいるんだよ。普通はボスだろ!」

「知らね、偶然近道の当たりでも引いたんだろ」

「それ当たりじゃなくてハズレだろ。引きたくねーし。」


もう疲れた。今日のところは引き上げるか。

と思ったら、何かいるな。

なんだ、奥の方にゴブリンが蠢いているだけか。

いや、先頭に冒険者の姿がある。


「逃げろ!!殺されるぞ!」


え、冒険者が銀色クラスのゴブリンを引き連れてこっちに来るではないか。

あれは俗に言うトレイン状態ってやつで逃げるときに失敗して大量に魔物を引き連れるもんだ。


じゃなかった、俺達も逃げなきゃ何だよ。

もう五十メートルぐらいに迫ってきている。


「おい、野村早く逃げるぞ!闘術、高速移動発動」

「うっひゃー、これ巻き込まれると危険だなー。術式構築、『速動強化(クイック)』。」


野村が魔法を発動する。

俺達は大分速く走っていく。

今なら百メートル走も十秒台行けそうだ。


「皆さーん、トレインが起こってますんで速く逃げた方がいいですよ!」

「魔物の暴走だ!銀色クラスだから死にたくなきゃ逃げろ!」


行きはゴブリンナイト倒しながらだったし二時間ぐらいかかったけど今回は15分で入り口まで戻れた。

入り口から結構近かったんだな。


黒い柱に飛び込んで冒険者支部内の戻りカウンターに行く。

並んでいた列を掻き分けて話しかけたので嫌な顔をされたがそれどころじゃない。


「すみません、トレインが発生しました。警告と応援をお願いします。」

「トレインですか?!それは危険です。守衛隊にもきてもらわないと……」


ちょうどダンジョンから他のPTも飛び出してきて回りの人も事態に気がついたらしい。


「支部長と守衛隊に連絡しました。しかし、南関東を担当する第1課は先日の八王子の事故で大勢が出払って居るらしく直ぐには来れないそうです。」


えっ、来れないの?ゴブリンが外にもれだしたら危ないぞ。

しょうがない、とりあえず俺達で対応するか。


「皆さん、トレインが発生しました!速く待避して下さい。ですが討伐に協力くれると助かります…」


最後の方の言葉が小さくなっていく受け付けの人の姿に冒険者は

「俺達は協力するぜ!」「ここで見捨てたら悪いからな!」「私もやるよ」

と皆して協力してくれるそうだ。


「ありがとうございます!後で報酬も出ますのでよろしくお願いします!」


「野村、俺達もやるぞ!」

「どうせ広斗のことだしやるって分かってたよ。」


はは、野村も分かってるじゃん、俺のこと。


「協力してくださる方はこちらに並んでください!」

「ついでに私からもお願いしておこう。」


その一言で場がざわついた。

あっ、支部長がいる。いつものように革のコートを着て階段から降りてきた。

ついでに装備代金の返済完了したこと言ってこよう。


「すみません、支部長。この証文の代金、全部払っておきましたよ。」

「広斗か。報告は受けているぞ。」


話しかけるとまたざわついた。

何だよ。そんなに驚くことか?


「あれ、皆さんどうしましたか?」

「どうしたも、その人元γ+級冒険者で殲滅鬼と呼ばれた人だぞ!なんで名前で呼ばれてるんだよ!」

「えっ?そんな大層な二つ名ついてたんですか。」

「こいつは神災の時にゴブリンを倒したのでその後の補助をやっている。」


理由があれば納得するようで直ぐに黙った。

今回の作戦はダンジョン内に半分の人が入りゴブリンの数を減らす。

削り切れなかった敵は冒険者支部の建物の中に一応備え付けてある魔力砲の斉射で殲滅する。

俺は内部でゴブリンを削る係に配置された。


中では魔法使いの人たちが罠系の魔法を設置したり隊列を組んだりしている。

入口から50メートルを最終防衛ラインとして内側まで入られたら外に退く。


そのうち逃げてくる人たちが見えてきた。

大量にゴブリンを引き連れて走ってくるのがついに射線に入った。


「全員魔法斉射!」


属性魔法や魔法術、一台だけ持ってきた魔力砲が放たれる。

前列がだいぶ削れた。

でも、まだまだたくさん残っている。

俺はゴブリンの列の中程で岩影から飛び出して首を狩り落とす。


「何だ、お前ら!隊列を守れ!」

「いつものように奇襲した方が強いんですよ!」

「許してやれ。あれが彼らのやり方だ。」

「支部長がそれで良いと言うのでしたらまあ……」


支部長ありがとうございます!

あれ?後ろに居たのか。気配が全くしなかったぞ。本当に強いんだな。

許しも出たことだしちょっとチャレンジしてみるか


火炎舞(ファイアダンス)爆炎火(ファイアブラスト)出来たことないけど二連だ!やってやる」


ぶっつけ本番はうまく行かないな。

まあ、失敗した魔法が合わさり大爆発してゴブリン消し飛ばせたから良しとしよう。


爆魔弾(マナブラスト)魔力斬(マナカッター)魔力嵐(マナストーム)。広斗、こっちは三種類三連だぞ?」


けっ、ドヤ顔しやがって。お前はマナブラストで爆発してろ!

そんなこと言ってたら前線のタンカーが盾を飛ばされてゴブリンに殴られそうになっている。

危ない!だが、ここから30メートル程の距離があって駆けつけられない。

その時、支部長が動いた。


「『速撃』『闘術』危ないぞ、ここは助けてやる。一回後ろに下がれ。」


一瞬で俺より遠い間合いを詰め木刀を振り抜き切った。

木刀なら切るのではなく叩き割るや押し潰すの方が正しいのではないかと思うがこれは正しい。

本当に当たったゴブリンの首が切れて落ちたのだ。

あれがγ級冒険者の実力と言う訳か。これで強い冒険者が後ろにいると言うことで士気も上がった。


よし次、剣を振るう。横から来たゴブリンナイトの剣を受け流してファイアブラストで牽制する。

とにかく殲滅するぞ!


だがそんな進化値の高い冒険者とは言え戦い続けていると疲れてくる。

俺も流石に隠れながらだったがノックアウトされた。


「ギャー、吹っ飛ばされた。助けてー」

「助けてーって言ってられる内はまだ元気だな。『回復(ヒール)』一応かけておいてやるよ。」


野村ありがとー!まあ、ヒールをくれても俺からやるものはないけどな。

その時だった。入口から50メートルにゴブリンが入った。


「退却線に入った!全員、退くぞ!」


その声と同時にファイアランスを放ってから逃げる。

全員が出ていくまで支部長が戦ってくれていた。

その支部長も撤退してきて30秒後……ゴブリンが大量にダンジョンから出てきた。

これはもうトレインではない。ダンジョンからモンスターがあふれ出すスタンピードだ。


「魔力砲一段斉射!冒険者支部から一匹たりとも逃がすなよ!」


魔力砲が放たれて銀の上級ゴブリンも消し飛ばす。

しかし、まだまだダンジョンの中から出てくる。

野村が額から汗を流しながら言った。


「これは守衛隊が着くまで総力戦になりそうだぜ。」


全くその通りだ。ゴブリンには悪いが俺たちですべて切らせてもらうぞ。

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