初めてのダンジョン
ダンジョンの中は洞窟のようだった。
あー、よくある石の部屋が連なっているやつではないんだな。
しかし、何か全体的に白く発光している。
「これ、壁に魔力が流れているな」
「野村そんなこと分かるのか?」
「『情報確認』に明記されていないけど俺は魔力を感知できる。」
すげー、そんな能力持ってたんだ。
能力魔法として発現したらもっと使えるようになるのかな?
まあいい、まずはモンスターだ。倒して進化値を上げなければ。
目標は4桁だ。
現在記録されている最大進化値は996。
一方で、30程で7割の冒険者は挫折して辞めてしまうそうなので狭き門だ。
しかし、見た感じ近くには冒険者PTがいるだけでモンスターは1匹たりともいない。
「魔力を感じるんだったらモンスターも感知できないか?」
「やってみるか。」
そう言って目を閉じ集中する野村。
しばらくして目を開けこう言った。
「モンスターなんて分からん。」
「分からねーのかい。何してたんだ。」
ズルは止めておとなしくモンスターを探そう。
このダンジョンのメインであるゴブリンは最初に入った所のすぐそばの岩の影に2体もいた。
エンカウント率高いな。
ゴブリンは学校のときと同じ漆黒の体で奥に向かって歩いている。
「このゴブリンて学校に来たのと同じやつじゃない?」
「そのとおりだ広斗。あれと同種だな。」
じゃあ簡単だ!と言うわけでもなく前から堂々と戦うのも怖いので回り込んで奇襲することにした。
先に行って剣を抜いて待っている。
脇を通ったときに一瞬で首を狩り落とす。
「普通に切れたなこれ。」
「学校のときと余り変わらないんだろ。」
よし、この調子でどんどん狩って行くぞ。
そういえば核の魔塊を取ると売れるんだった。
剣で解体すると白く光る塊があった。
「これを持っていくと換金してくれるのか。さっさと剣の代金を清算してやる。」
「広斗、お前結局金かよ。」
これだけは支払わないと起こられるんだよ。
さっさと50万貯めなければ。
※※※
「今何時?」
「17時52分だな。」
「ダンジョンに入ったのがだいたい2時半だからもう3時間半ぐらい立ってるな。」
「大分倒したからそろそろ帰るか。」
ダンジョンの入口に戻って黒い柱に触ると入口の建物に戻ってきた。
凄いな、転移魔法なんだろうか。
そのままカウンターの方に行くと受付の人が声をかけてきた。
「生きてらっしゃったのですね。良かったです。」
「いや、そんなに簡単に死にませんよ。あと、これは魔塊です。」
鞄から白く光る魔塊を取り出す。
10個ぐらいのときは真顔だったが34個全部出すと驚いた顔になった。
「大分多いですね…普通はもっと少ないですよ。」
「そうですか?隠れて首を切ればすぐに倒せるじゃないですか。」
この人たちに言っても意味ないと思ったのか黙って魔塊の代金の計算を始めた。
「1つ8800円なので合計19万7200円です。」
「19万!?ゴブリンなのに高くないですか?」
「まだ魔塊が市場に出回っていないんですよ。ダンジョンの一般開放が始まったら1000円ぐらいになると思います。」
まあ、高ければそれに越したことはない。
代金を受け取り野村と分配する。それでも10万弱も稼ぐことが出来た。
そういえば、ステータス見てみるか。
※※※
名前 最上 広斗 年齢 17歳
進化値 9
体力 90
魔力 36
攻撃力 66
防御力 45
耐久力 45
速動力 59
筋力 45
属性魔法 火魔法
能力魔法 情報確認、打撃、剣、斬撃
固有魔法 黒い結晶
※※※
大分増えているな。あと、火魔法か。
「野村も何か能力魔法覚えたか?」
能力魔法をいうと
「俺もだいたいそんな感じだ。ただ切断と火魔法が魔力操作と魔法術になってる。」
魔法術って何か聞いたら無属性魔法みたいなものらしい。
魔法書とか売っていないかカウンターに行って聞いてこようと思った。
「二度もすいません。俺が火魔法で野村が魔法術を覚えたんですけど魔法書はありますか?」
「魔法書ですか?販売には許可証と魔法の習得の確認が必要です。」
許可証ね、支部長の紹介状じゃあ駄目かな。
「えっと、紹介状なら有りますけど。」
「たしかに支部長のサインですね。これなら良いかと。」
よっしゃあ、これがあると苦労しないぜ。
ついでに市役所でも見たあの立方体(鑑定石と言うらしい)を出される。
手を置いて出た情報を見てもらうと納得した。
「はい、これなら販売できます。」
案内員が連れていってくれたところには金庫があった。
警備員が3人もいるので結構重要なものらしい。
「どうぞ、これが火魔法と魔法術の初級です。あと、魔術入門書も有ったほうが良いですね。」
「これは、買うんですよね。」
「はい。入門書は12000円、初級は38000円です。」
「入門書は半分づつ出し合うか」
「そうだな、そうしないと買えないか。」
「ところで、魔法ってどのくらいで覚えられるんですか?」
「だいたいの人は一月ぐらいで覚えられますよ。」
そんなもんか。まあゲームみたいに選んで決定ボタン押すだけじゃ駄目だろうし。
しかし、問題がある。入門書は1つで読む人は2人。
「広斗どっちが先に読む?」
「いつもは譲ってやっているがこれだけは渡さない。先に読ませてもらうぞ。」
「譲ってもらった思い出ないぞ。こうなったらジャンケンだ。」
「最初はグー、またまたグー」
「は?野村、ふざけんなぁ」
野村のやつ、ふざけやがって。
真面目にやれ!
「ジャンケンポイ、ってヤバイ」
「ハハハハ、正義は勝った。」
勝った。ズルするから負けるんだ。
これで火魔法使えるようになるぞ。
て言うか、こんなことで騒いでいたから回りの人の視線がいたい。
逃げろっ!
※※※
バス亭まで走ってきたら疲れた。
なんで大衆の前で恥かかせられなきゃならないんだ
「やめてくれよ、人の前でジャンケンだなんて。」
「まあ良いだろ、魔法書先に読めるんだから。」
「それは良かったがダンジョンに行きづらくなったぞ。」
笑ってやがる。まずは性格を直させるか。
いつの間にかバスが来ていたので料金を支払って乗る。
近所の駅前のバス停で降りて野村と分かれ帰路に着いた。
実は俺、本気で魔法って有ったのか!と思って浮かれているのだ。
野村と違って今まで魔力をあまり感じてこなかったから結構疑っていた。
しかし、ここに来て魔法が出てきた。
俺は滅多に見せない本気の走りで家に帰る。
「広斗お帰りー。夕飯できてるよ」
「分かった。すぐ食べる。」
速動力強化する能力魔法ほしいな。
進化値9の実力を発揮して高速で夕飯を食べる。
「ごちそうさまでした。」
皿をキッチンまで運んで魔法書を手に取り自分の部屋に戻る。
待望の1ページ目は、目次か…
次だ、次。ページをめくり魔法の使い方が有るところまで飛ばす。
魔法を使うときには術式を構築してから魔力を流すことで発動すると書いてある。
良かった、詠唱はいらないのか。
でも術式?結構複雑で電子回路のようだ。
「まずは魔力操作を覚えなければだな。」
本にもそう書いてある
明日野村に聞いてこよう。
※※※
翌日、魔法書を渡しに行くついでに魔力操作のコツを聞きに行った。
「なあ、野村魔力操作のコツってなんだ?」
「魔力操作ぁ?あれだよまずは両手を握る。」
言われたとおりに右手と左手を握る。
「次に右から左に力を入れる。それで魔力が流れるだろう。」
またそれかー。それだけじゃあできなかったんだよな。魔力は有ると思うんだけど。
「本に書いてあったからもうそれはやった。他のコツがほしいんだよ。」
「ほかに?手を少し離して間に力をためる。あとはダンジョンでやったほうが能力魔法が発現しやすい。」
そうだったよ、能力魔法のこと忘れてた。
よし、今日もダンジョンいくぞ。