宣戦布告
俺が寝ているといきなりアラームが鳴った。
「あと5分ぐらい寝かせてくれよ…」
そう思って時計を見るともう8時45分だった。
1時限目は8時35分からだからもう10分もオーバーしてやがる。
「やば、寝すぎた!遅刻する!」
そのまま走って着替えたり、学校の準備しているとカレンダーが目に入った。
「あ、今日土曜日だ。学校休みじゃないか、なんだよ。」
俺は忘れていたがついでに休校日でもあった。
4日前の6月8日に世界がモンスターに襲われた「神災」から世界は討伐のため軍や警察が出動する事態となった。
しかし、日本は無駄に対応が早く東北がモンスターに占領されただけで昨日沈静化が発表された。
世界ではまだ戦っている国もあると言うのに日本は日常と変わらず実感がわかない。
そして、モンスターが現れたところにはダンジョンがあったと言う。
そのためその後の復興や法律の改編で忙しく学校は休みとなっている。
まあ、とにかく無駄に騒いでしまった。
二度寝する気にもなれないので朝食でも食べようと思った。
下では父さんがゴルフを見ていた。
土曜の朝からゴルフなんてやってませんよね?
見るとさすがに録画だった。
キッチンに行くとメモが残されていた。
えーと、『お母さんは出かけてきます。冷蔵庫に入っているものを温めて食べてください。』
と書かれていた。
レンチンしている間に着替えを済ませておく。
米が温まったのでレンジから取り出して食べる。
温め足りなくて固く冷たいと炊きたてには程遠い。
朝食食べるだけでも早起きする価値があるな。
用事が終ったので部屋に戻ってみた。
部屋でも何もやることがないのでずっとたまっている宿題をやろうかなと思った。
そのとき携帯が鳴った。
「珍しいな、あいつから電話なんてめったにないのに」
電話を掛けてきたのは野村だった。
『広斗、今何してる?あと、ニュースみられるか?』
「どうしたんだ、テレビは朝から父さんがゴルフ見てるから使えないぞ。」
『土曜の朝からゴルフやってんのか?まあいいや、とにかく4日前の事件がニュースで解説されるんだ。今すぐつけろ!』
「まじか、見てくる!」
『いや9時半からだけど…』
「じゃあ今掛けてくるな!宿題やろうと思ったのにやる気なくした。」
「お前が宿題やろうとするなんて珍しい。」
野村のやつ、酷いな。
今が9時3分だからまだ27分もある。急かすなよ。
しかし、この前のことがニュースでやるのか。
これは見ないといけない。何があったのか知るためにも。
時間はあるからさっきの宿題をやってしまおう。
※※※
27分後…一階に降りてMHKをつける。
その時に父さんの見ていたゴルフを止めてしまったが些細なことだ。
「広斗、何をする!父さんの楽しみを奪うな!」
「録画してあるからいいだろ。それよりも大事もことだ。」
「何を見る気だ、広斗。これは…」
4日前のことについてと知って、いつもはニュースを見ない姉ちゃんがやってきた。
9時半になり中継が開始された。
ついでに情報共有のために野村との電話も繋いでおく。
『これから日本対地球庁による同時記者会見を始めます。それでは、連盟長の秋元康さんお願いします。』
研究者風のだいたい四十路の男が歩いて来てマイクの前に座り名乗った。
て言うか、日本に対地球庁なんてもの有るんだ。
初めて知ったよ。
『これより記者会見を始める。ご紹介に預かった秋元康だ。まず最初にこれは神が引き起こしたことだ。』
宗教を否定するわけでもないがうちはずっと無宗教だぞ。信じられるか、神なんて!
『それは私が昔、神と会って私は人類を滅ぼすと言われた。だから神を阻止するために私は守衛隊と冒険者連盟を作り出したのだ。』
「野村、何を言ってるんだ?」
「俺に聞かれても困る。」
だろうな、聞いてる誰も分からないと思う。
そのまま話は続く。
『神はダンジョンを作りモンスターを暴走させ人類を力付くで滅ぼそうとしている。この放送を聞くものは強くなって神に勝ってくれ!そうでないと人類は消えてしまう!』
「おいおい、ついに叫びだしたぞ……」
「でも広斗、それでもない限りモンスターとか魔法とか説明できないんだよな。」
はは、まあそうだけどな。
何だ?体が動かないぞ、どうなってるんだ?
俺は急に体から力が抜けていくのを感じて意識が闇のなかに閉ざされた。
意識が戻って俺が見たのはただ何処までも黒いところだった。
黒くて一寸先も見通せない闇が目の前に有る。
ここが何処か考えていると白い点が現れ膨らみ人の形になった。
「『始めまして、会ったことがある人は久しぶり、人類の皆さん。僕は先ほど言われた神だよ。でも、僕は本体であるこの星の名前の地球と呼んでもらった方が良いけれどね。』」
人形は神と名乗った。これが全ての元凶か。
ここで倒してしまいたいが体が動かない。
「『おいおい、皆さん殺気立たないでくれよ。今日は人類を滅ぼす理由を教えて上げようとしているだけさ。少し聞いてくれ。』」
理由を教えてやるだって?しょうがない、先に聞いてから倒そう。
「『僕が人類を滅ぼす理由は人の心が嫌になったからさ。君たちだって自分の心に、他人の心に幻滅したことだって有るだろ?』」
それを言われると言い返せなくなる。
何か分かる気もするけど、何で力業なんだよ。
もっと話し合ったりして安全に行けよ!
「『これはゲームだ、僕と人類が地球をかけて戦うゲームだよ。僕に勝ちたければ僕のもとまで繋がる迷宮を見つけ僕を倒す。それが勝利だ。』」
「おい地球!何がゲームだ、お前、散々他人の生活壊しておいてまだその態度か!すぐ行って倒してやるぞ!」
あれ、言い返してやろうとしたら拘束が解けた。
すると、さっきは黒くなった視界だったが今度は白い世界に吸い込まれた。
調子に乗って叫んだけどやめとけば良かった。
「なんだここ?どうなってるんだ」
俺は周りを見渡す。そこはさっきまでいた俺のうちのリビングだった。
しかし、いつもと違うのは目の前に地球がいることだ。
「『興味深いね、最上広斗くん。魔法で意識を固定していたが抜け出してくるとはね。』」
こいつを倒せば……全て解決する!
そう思った俺は拳を握り締め飛びかかっていた。
しかし、一瞬で壁まで弾き飛ばされた。背中が痛い。痛みが襲ってくる。
「『暴力はよくないよ?まあ、僕が言っても意味はないかもしれないけどね。とにかく、今回は君の顔を拝みにきただけだ。本当に危害を加えるつもりはない。』」
「そうかよ。今、俺は無力だって感じた。俺は俺の日常を守る!だからお前を絶対に倒す」
「『期待して待っていてやるよ、最上広斗くん。』」
少し待ってから元の黒い世界に戻った。
「『訂正しよう、人間諸君。やはりこれはゲームではなく戦争だ。僕は10年間直接手を出さない。そして東京に地球の核まで繋がる本道を出す。10年で僕を倒してみろ。期待して待っていてやる。』」
視界から世界は黒が消え去り元のリビングに戻った。
TVの中では大混乱になっている。
俺は繋がったままの電話に呼びかける。
「野村、俺は進化値を上げて最強になる!さっさとダンジョン行くぞ。」
野村は少し呆れたようにして、
「お前もうちょっと落ち着いてからにしろよ。せめて装備ぐらい考えろ。」
あー、それはそうだな。
そこらへんはもうちょっと考えてからダンジョンいくか。